09月≪ 2017年10月 ≫11月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告  |  EDIT  |  Top↑

2015.04.21 (Tue)

私は蝶になりたい

私は蝶になりたい


狼陛下の花嫁12巻を読んで、書いてみました。
夕鈴目線でちょっと長め…甘さはないので御了承のうえ、続きからどうぞ。

ではどうぞ。

スポンサーサイト
23:30  |  離宮・王宮の外編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2014.06.15 (Sun)

君がくれた愛しい時間Ⅱ

君がくれた愛しい時間Ⅱ


Ⅰの続きです。
17:48  |  離宮・王宮の外編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2014.06.15 (Sun)

君がくれた愛しい時間Ⅰ

君がくれた愛しい時間


約2年ぶりの更新小説です!
長文ですので、休憩を挟みつつお読みくださいね。
つたない言葉遣いの駄文ですが、読んでいただけると幸いです。

ではどうぞ。
17:40  |  離宮・王宮の外編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2010.10.21 (Thu)

愛するふたりⅡ

Ⅰのつづきです。












「この場所で合ってるわよね…?」

日もすっかり落ちた彩翠殿の回廊。

周囲を見渡しながらおそるおそる歩む夕鈴の前に、突然現れた階段。危うく足を滑らせそうになったが、なんとか足を踏ん張り転げないように耐えた。


「あ…危なかった」

ほっと息をつく夕鈴。夕鈴の声は、静かな宮殿に思った以上に響いた。

夕鈴はほの暗い辺りを見渡す。夕鈴を纏う景色は、夕鈴の危険などそ知らぬ顔で、静かに佇んでいた。

さっきのような事、おっちょこちょいの夕鈴には多々あることだが、転げそうになったのはこの暗闇のせいだ。


『今夜、夜半過ぎ、宮殿裏の中庭に来て欲しいんだ。もちろんひとりで』

夕鈴は、陛下からのお願い事を思い出す。

人の少ない宮殿では、足下を照らす灯籠の数も少ないようだ。一寸先さえもはっきり見えない闇の中、夕鈴は慎重に歩みを進めていた。そんな矢先に起こったひやりとする出来事に、夕鈴は渋い顔を浮かべた。

とにかく進まないと。
夕鈴は大きく溜め息を吐くと、気を取り直して足を踏み出した。







ようやく辿り着いた中庭には、すでに先客が夕鈴を待っていた。


「夕鈴!」

現れた夕鈴の元へ陛下が駆け寄って来た。その姿を見て、やっと目的地に着いた…と、ほっと胸を撫で下ろした。


「ひとりで来れたんだね」

にこにこ…陛下が笑顔で呟く。のっけから最上級の笑顔を浮かべる陛下に、夕鈴は訝し気な視線を送る。


「ひとりで来てって言いましたよね?」

「うん、言った」

「思った以上に夜道が暗くて…遅れました」

たとえ一方的なお願い事であったにしろ、約束したからには時間は守るべき。

夕鈴は夜空を見上げる。丸い月は中天に昇っていた。
約束の刻よりも少し傾いた月を見ながら、夕鈴は陛下にぺこりと頭を下げた。


「来てくれただけで十分だよ」

陛下は笑顔を崩さずに夕鈴の手を取った。
誘われるままに、夕鈴は広い中庭の中央へと進み出る。


「この離宮でここが一番綺麗なんだ」

陛下の言葉を受けて、夕鈴は改めて周囲を見渡した。

確かに美しい。
まばゆいばかりにきらめく宮殿。その傍らに佇む庭園は、庭師により丹念に手入れされているのが窺える。小さな庭池に架けられた橋には見事な彫刻が施され、その彫刻と競うかのように水面に横たわる大輪の美しい花たち。頭上を覆うのは無数に輝く星空。

ひとつひとつ、目で追う夕鈴の顔がほころぶ。


「気に入った?」

「はい、とても…。昼間に見るよりも綺麗ですね」

「そうだね。休暇を過ごすならこの離宮がいいと思ったんだよ、だって…」

ふいに言葉を止めた陛下に、夕鈴は視線を向けた。陛下は、無数の光点が散りばめられた星空に釘付けになっていた。


「?」

空に何が…?


「夕鈴。おいで」

伸ばされた陛下の手を取る。


「目をつぶって。夕鈴」

「はい?」

陛下の要望に夕鈴は眉をしかめた。なぜ…言いかけた夕鈴の前には、すでに目を閉じた陛下が居た。


「あの…」

「早く」

一体何なの?
夕鈴は不可解な行為に疑問の気持ちいっぱいであったが、陛下に従い目を閉じた。視界が遮られても、夜空に輝く星たちの瞬きはいつまでも目の中に残っていた。

握られた手にゆっくりと力が込められる。


「夕鈴…」

名前を呼ばれたので、夕鈴はそっと目を開けた。


「まだだよ。まだ…流れていない」

「何です?」

「いいから…」

目を閉じて…耳元で囁かれる声に、夕鈴の頬が高揚するのを感じた。


しばらく黙したままずっと手を握り締めた陛下。
耳を澄ますと、星が瞬く声が聞こえるような気がした。


「もういいよ」

陛下の言葉で、夕鈴はそっと目を開けた。


「?一体…何ですか?」

見つめた陛下の顔は、夜空に浮かぶ星たちよりも輝く満面の笑みで夕鈴を見返していた。


「流れ星、流れたよ」

「え?そうなんですか?」

しまった、見逃した。目をつぶっていたから仕方ないけど。

願い事を言いたかったなぁ…と呟く夕鈴の横顔をにこにこと子犬の陛下が見つめる。

なんでそんなに嬉しそうなの?


「素晴らしい夜だね」

「はぁ…」

どこまでも満足気な様子の陛下に、夕鈴はそれ以上この不可解な行為の意味を尋ねることは出来なかった。




















楽しい時間はあっという間に過ぎる。

夕鈴に与えられた休暇はすぐに終わってしまい、また元通り平常な生活が始まっていた。久方ぶりの休暇に、身も心もすっかりリフレッシュした陛下もまた、元通り王様仕事に追われていた。



「美味しい…久しぶりに後宮のお茶を飲むわ」

昼食後に出された香茶を飲みながら、夕鈴は呟く。言われた侍女は優雅な笑顔を浮かべて微笑んでいた。

「離宮はいかがでございましたか?」

「とても楽しかったわ。それに…とても美しい宮殿でした。あなたたちが行きたいと言っていた気持ちも分かるわ」

「離宮の中で最も美しいと言われておりますもの。彩翠殿の庭園は王宮に負けず劣らずとか…」

「えぇ、とても綺麗だったわ」

夕鈴の脳裏に、ほんの先日まで過ごしていた離宮の風景が浮かぶ。楽しかった思い出に心を馳せる。


「ときにお妃さま。流れ星はご覧になられましたか?」

急に真剣顔で夕鈴を覗き込む侍女。夕鈴の返答を今か今かと待つ侍女に、夕鈴はまばたきを繰り返す。


「…見たけど…それが何か?」

「やっぱり!」

ぽんと手を叩いて飛び上がる侍女の様子に、夕鈴は驚いた。この喜びようは…一体何か。

ふふふ…嬉しそうにお茶を注ぎ足す侍女の横顔を食い入るように見つめたが、夕鈴には全く意味が理解出来なかった。
そういえば離宮へ行く前も、侍女たちはそわそわといつもと違う様子であった。


「離宮の星空はさぞ美しかったでございましょうね」

「そうね。何度も訪れたいと思うほど」

「まぁ…何度も訪れたいだなんて。お妃さまたちのご様子でしたら必要ないようですわ」

「え?どうして?」

実際もう一度訪れたいと考えていた。二度も行ってはいけない理由でもあるのか。


「どうしてって…」

急に頬を赤く染める侍女に、夕鈴は訝し気な視線を送る。夕鈴の視線を受けて、しどろもどろに侍女が言葉を紡いだ。


「お妃さま…庭園の中央で、陛下と流れ星を眺められたのです…よね?」

「!?」

な…なぜ?夕鈴の心臓がどきりと跳ねる。

流れ星を見たと言ったが、誰も陛下と見たとは言っていない。ましてや庭園の中央で見たなんて、なぜ知っているのか。心の動揺を隠し切れずに、夕鈴は質問した。


「どうしてそれを…」

知っているの?夕鈴は立ち上がって、侍女の顔を見つめた。

まさか…見られていたわけでもあるまい。この侍女はずっと後宮に居たはずだ。


「だって、あそこの庭園は伝説の場所ですから」

「伝説?」

なにそれ?予想しなかった単語に、夕鈴の表情が曇る。


「愛し合うふたりが夜空の下、永遠の愛を誓うと星が流れる…」

侍女の語りが響く。まるで子守唄のように。

夕鈴は黙したまま大きく瞳を見開く。突然立ち上がり呆然と立ちすくむ妃の姿に、侍女も同じく言葉を失っていた。


「お妃さま。わたくし…何か…」






「夕鈴」

ふいに室内に響く低い声に、侍女は慌てて振り返った。その姿を確認した侍女は、さっと拝礼すると後方へ一歩下がる。

妃の部屋の扉に寄りかかる形で、陛下が立っていた。

夕鈴はまだ整理のつかない頭を抱えながら、条件反射でとりあえず礼をとった。しばらくして頭を上げると、陛下が目の前に立ち、夕鈴の顔をじっと見下ろしていた。


「どうした?そのような顔をして…」

夕鈴の長い髪に指先を絡ませながら、陛下が甘い表情を浮かべる。


「……いえ」

愛し合う?永遠の愛?伝説?
先ほどの侍女との会話に飛び出した単語が、次々と夕鈴の頭の中に流れる。


「まだ旅の疲れは取れないか。離宮で少しはしゃぎ過ぎてしまったようだ」

「……」

陛下の言葉が、右から左へ流れる。


「夕鈴」

陛下は目にも止まらぬ速さで夕鈴の腰に腕をまわすと、そっと細い体を引き寄せた。


「私がそばに居るのに…何をぼんやりと考えているんだ?」

「!?」

息もかかりそうなほど近くにある陛下の端整な顔に、夕鈴ははっと意識を取り戻す。途端に、夕鈴の顔に赤が刺した。

いつの間に!?
がっちり捕らえられた陛下の腕の中、夕鈴はじたばたと手足を動かす。


「初々しいことだ」

陛下は満足気に答えると、さっと左手を上げた。頭を上げずに控えていた侍女は、合図を受けて音もなく扉へと向かう。

その後姿に向かって、陛下が大きく口を開けて言い放った。


「侍女よ、もちろん星は流れた」

「それは…よろしゅうございました」

侍女はほっと息を吐くと、軽く会釈して部屋を後にした。


後に残ったのは、すっかり狼の仮面を脱ぎ捨てた陛下と、真っ赤に染まった兎が一匹。




「陛下、説明してください!」

「ははは…」

「笑い事じゃありません!伝説なんて…聞いてませんよ」

どうりで、侍女の様子がおかしかったわけだ。
今になって思えば、離宮へ一緒に連れて行って欲しいとせがまれた理由も分かる。伝説なんて…世の一般女子には堪らなく興味をそそる話題の場所に、行きたくないわけがない。


「だって…知ったら、夕鈴来てくれないと思ったから」

「騙すなんてひどいですよ!」

「だけど…星は流れた」

陛下が口端に笑顔を浮かべて呟く。

意地悪そうでいてどこか甘い表情の陛下に、夕鈴の心臓が大きく跳ねる。
どきどきと波打つ鼓動に、夕鈴はいたたまれず視線を反らした。



『愛し合うふたりが夜空の下、永遠の愛を誓うと星が流れる…』


あの夜の記憶を思い出すと、恥ずかしすぎて心が締め付けられる。
軽く痛みさえ伴うこの気持ち、どう表現したらいいのか分からない。

星が流れたのはきっと…。


「夕鈴」

柔らかく名前を呼ぶ声が耳に届く。

見上げた陛下の表情は、あの夜と同じくらい輝いて見えて、胸が熱くなった。












二次小説第27弾完

今回は王宮の外でのお話です。
伝説の離宮をテーマにおもしろ楽しく書かせていただきました。

伝説の場所で永遠の愛を誓って、一体陛下はどうするつもりなんでしょうね

最後はあま~く終われて満足です。長文にお付き合い、ありがとうございました



00:59  |  離宮・王宮の外編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2010.10.21 (Thu)

愛するふたりⅠ

「愛するふたり」

妄想大好きミケが、得意な話題で書かせていただきました。
夕鈴目線で少し長め。ⅠとⅡに分けています。

ではどうぞ。















「着いたよ、夕鈴」

頭上から掛けられた声に、夕鈴ははっと頭を上げた。
うとうとしていたせいで最初状況が掴めなかったが、揺れている感覚ですぐに馬車の上にいることを思い出す。

降り注ぐ丸い夏の日差しに、微睡んだ瞳が大きく見開かれると、夕鈴は目をこすった。

馬のひずめの音と、芝の匂いが夕鈴の周囲を覆っていた。


「着きました…か?」

「見てごらん」

陛下の指差す方を覗いたら、まだ少し遠い一角にちらっと建物が見えた。

もっとよく見ようと立ち上がった夕鈴。
大きな溝に足を取られたのか…急に傾く馬車に夕鈴は平行感覚を失い、膝をつく。そのまま尻餅をつきそうになった夕鈴の体を陛下が支えた。


「すみません」

陛下の腕に支えられて立ち上がった夕鈴は、もう一度周囲を見渡す。
目前に続くのはどこまでも広い草原、そしてその草原の中に浮かぶように、確かに白光りする建物が見えた。


「あれが…」

「そう。離宮、彩翠殿だ」

陛下が答えた。

夕鈴たちが進む前方にそびえるようにして建つのは、白陽国離宮彩翠殿。

狼陛下の花嫁バイトを始めてから久しぶりの休暇に、夕鈴はもちろん同行する陛下の表情も明るい。
今日より数日間、離宮で過ごすことになっていた。

草原が運ぶ風に、夕鈴の長い髪がなびく。軽快なリズムを奏でるかのように揺れる馬のたてがみ。そしてまぶしい日差しの下、嬉しそうに笑う陛下の顔。

夕鈴は自然と笑顔を浮かべた。まだ辿り着かぬ離宮を前に、わくわくと心が弾む。


「夕鈴、嬉しそうだね」

「陛下こそ…」

夕鈴は答えて、クスリと笑った。子どものように目を輝かせて話す陛下の顔、久しぶりに見た気がする。

王としてのがんじがらめの生活からほんの少しの解放。
夕鈴の休暇獲得のために、あの鬼上司を説得してくれた陛下に恩返しするためにも、私以上に楽しんでもらわないと…。


「休暇、楽しみましょうね」

つかの間の休暇。がんばって働いた分以上にがんばって楽しまないとね。


「うん!じゃあ急ごうか」

「え?」

尋ねる暇もなく、ガタンと音が響く。響いた途端にぐらりと車体が揺れたので、夕鈴は慌てて陛下の着物の袂を掴んだ。

え…ちょっと。嫌な予感。


「飛ばすよ!」

陛下の掛け声で、風を受けて猛烈なスピードで馬が走り出した。
ひずめが草原を駆ける音に混じって、陛下の持つたずながしなる音が聞こえた。

急に走り出す馬車に夕鈴は叫び声をあげる。と同時に、臣下たちも慌てふためき叫ぶが、雑音にかき消されて陛下の耳には届かない。
夕鈴はなすすべもなく、振り落とされないようにただ陛下の袂を力いっぱい握ることしか出来なかった。


嫌な予感が的中してしまった。
やっぱり…陛下に振り回されてばかり。臣下たちも苦労するわね。

ふたりを乗せた馬車を慌てて追う臣下たちの姿を後方に捉えて、夕鈴はなんだか申し訳ない気持ちいっぱいで溜め息を吐いた。

















「あぁ…いい天気だね。夕鈴、どうしたの?そんな渋い顔して…」

「何しれっと質問してるんですか?陛下、いい加減にしてください」

夕鈴は深く息を吐くと、陛下の顔を真正面から見つめた。
夕鈴の大きな瞳に映る陛下の姿は、すこぶるご機嫌で、鼻歌でも聞こえてきそうだ。


「ごめんね。久しぶりに夕鈴と一緒に過ごす休暇だから、早く行きたくて…」

なんて甘い表情で答える子犬陛下。途端に夕鈴の怒りの心がしぼみそうになるが、ここはぐっと我慢。流されてしまってはいつもと同じ。


「後ろを付いてくる臣下の身にもなってください。急に走り出したら危ないでしょう」

夕鈴は馬車の上での体験を思い出し、少し寒くなった。あんなにスピードを上げられたらさすがに恐い。ただでさえ庶民には、馬車なんて乗り慣れていないというのに。


「だって…誰にも邪魔されたくなかったから」

はっと気づくと陛下の腕が腰に回されていて、夕鈴は慌てて陛下を見上げた。
子犬の瞳が意地悪そうに輝いている。

夕鈴は腕を解こうと奮闘するが、がっちり回された逞しい腕は、てこでも動きそうにない。

広い離宮の中央に設けられた庭園。その庭園の一角にある四阿の中にふたりは居た。
もちろん人払いは済まされている。


「は、離してください」

「そんな赤い顔して…私を誘っているのか?」

なんだか以前にも聞いたことあるようなセリフだ。耳元で囁かれた声に、夕鈴の身がぞくりと震えた。

なんで狼陛下なの?


「そんなわけないじゃないですか!」

「ひどいな…夕鈴」

ひどいのはどっちだ。


「誰も見てないのに…夫婦演技しないでください!」

それでなくても私は休暇中なのに…ぶつぶつと夕鈴が文句を呟く。


「誰かが見ていたらいいのか?」

「違います!」

もーこれじゃあきりがない。いつも以上にパワーアップして迫る狼に夕鈴はたじろぐ。王宮の外の方が、より狼の気配が濃くなるような気がするのは気のせいではないかもしれない。


真っ赤な顔で鼻息も荒く憤慨する夕鈴に、陛下の口元が緩んだかと思うと、突然笑い声をあげた。


「何笑ってるんですか!」

肩を小刻みに震わせて、必死にこみ上がる笑いを抑えようとしている陛下の様子に、かっと夕鈴の頭に血が登る。

もー怒った。今回ばかりは堪忍袋の尾も切れまくりよ。

怒りにまかせて立ち去ろうとする夕鈴を制するかのように、力強く手首を掴まれた。
夕鈴の行動をすぐに予想して阻もうとする狼の姿に、夕鈴の心に悔しさが込み上がる。

舌打ちでもして腕を振りほどきたいけれど、さすがにそれは出来ない。休暇中とはいえ仮にも妃、そんな野蛮なまねは許されていない。

いつまで経っても白星をつけられない相手との対戦も、そろそろ潮時なのかもしれないが、負けず嫌いの夕鈴には大人しく引き下がるなんてことは最初から選択肢にはなかった。

夕鈴は悔し涙を溜めた瞳で陛下を睨み付けた。


「ごめん、夕鈴。僕が悪かったよ」

夕鈴の鋭い視線とは対照的に、肩を下げてしょんぼり反省顔の陛下が呟く。
急に子犬に変貌した陛下に、夕鈴は肩透かしを食う。

そ…そんな顔したって無駄ですからね。
夕鈴は賢明に睨みを緩めることなく、陛下を見ていた。


「君と過ごす休暇が本当に嬉しくて。少し気が大きくなってしまったよ」

陛下の頭に子犬の耳が見えてきた。突如現れた幻覚に、夕鈴は動揺を隠せない。

いけない。これじゃあいつもと同じ。


「本当にごめんね、夕鈴。許してくれる?」

そっと手を伸ばして、陛下が夕鈴の涙をぬぐった。
ぬぐわれて消えていった涙と一緒に、夕鈴の中の怒りも収まってしまった。

やっぱり…私はどこまでも子犬陛下に弱い。

あぁ、情けない。それでも仕方ないと思ってしまうのは、陛下が見せるこの柔らかな笑顔のせいだ。


「ずるいですね」

「ごめんね」

ぺろりと舌を出して謝る陛下に、夕鈴は溜め息を吐いて笑い掛けた。

今日は休暇。休暇は楽しまないと。
開き直った夕鈴の脳裏にひとつの提案が浮かぶ。


「陛下、せっかくの休暇です。喧嘩はしたくないですよね」

「うん」

「だから、演技を禁止します」

「えーー」

「えーーじゃありませんよ。ここでは侍女はほとんど居ませんし、演技なしでも大丈夫ですよ」

これぞ良案。夕鈴は得意顔で拳を握り締める。対する陛下は、渋い顔で夕鈴の顔を見つめていた。


「演技なしの方がいろいろと肩の荷が下りますよ」

主に私が。夕鈴は最後の言葉は発言せずに、心の内に留めた。


「仕方ないな…」

しばらく駄々をこねていた陛下だったが、ようやく諦めたようだ。

深く嘆息すると、夕鈴から視線を外して離宮の景色を眺めた。

王所有の離宮の中で、最も古くもっとも美しいとされる彩翠殿。
噂どおり、なんと美しいこと。陛下と同じように景色を眺める夕鈴の瞳に、太陽の光を受けて輝く華奢な宮殿が映る。


「綺麗な離宮ですよね。ここに来るって言ったら侍女たちにとても羨ましがられました」

「侍女に?」

「はい。一緒に連れて行って欲しいとせがまれましたよ」

夕鈴は侍女たちとの会話を思い出して笑った。
いつもとは違う場所で、違う景色の中、のんびりと過ごしたいと願うのは、侍女たちも同じかもしれない。


「侍女がね…なるほど」

四阿を取り囲むようにして植えられた草木が、暖かい風を受けて揺れている。

ふたりの間、しばらく沈黙が流れた。

受け答えそっちのけで何かを一生懸命に考え込む陛下に、夕鈴は疑問を浮かべ覗き込む。


「陛下、どうかなさいましたか?」

「夕鈴。僕からもひとつお願い事があるんだけど」

「?」








Ⅱへつづく。


00:20  |  離宮・王宮の外編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
 | HOME | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。