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2011.10.30 (Sun)

彼方の心をあなたへ(前編)

彼方の心をあなたへ

久しぶりにアップします!
テンポ良い短文を…を目指して書いたつもりだったのに、やたら長いシリアスになってしまいました。しかも暗い暗い。

夕鈴目線の長文でふたつに分けています。シリアスどんとこい!という人のみ、休憩しながら読んでください。

ではどうぞ。













「お妃さま、少しよろしいでしょうか?」

顔を上げると目の前には顔見知りの女官が立っていた。


「え?何かしら…?」

少しウトウトしていた。
すっかり意識を戻した夕鈴は妃笑顔を貼り付けて、しんと佇む女官に柔らかく声を掛けた。小卓に伏せたままの半身を起こし、顔にかかる髪を後ろへやる。


「お休み中のところ申し訳ありません」

「構いませんよ」

にっこり微笑み掛ける。女官が少し動くと、背後から見え隠れする眩しい日差しが目についた。夕鈴は眉根を寄せると目を閉じてすぐ薄目を開けた。


「少し眩しいみたい。窓、閉めてくださる?」

片手で日差しを遮りながら、夕鈴は言う。夕鈴の言葉に女官は明るい日差しが差し込む格子窓を閉じた。外からの穏やかな日で照らされた室内が途端に暗くなる。


「あまりに暖かいので眠ってしまいました…」

照れ笑いを浮かべると女官は優しく答えてくれた。


「仕方ありませんわ。昨晩も、陛下のお渡りは遅く、お妃さまもあまりお休みになっておいでではないでしょう」

何気なく呟いた女官であったが、夕鈴の心はひどく跳ねた。

女官としては、夜伽を命じられた妃を労って投げた言葉であったが、実際そんな事実はなく。明け方近くまで休憩を取っていた陛下に付き合っていただけだ。

激務続きであまり休息を取っていないにもかかわらず、妃への溺愛ぶりを披露するため、心労をおして後宮の奥深くまで足繁く通うことを課せられた彼。心配より以上に、不安になる。彼が身を削った分だけ、命を削ってはいないかと…。お支えしたいけれど、ちっぽけな自分には何も出来ず。昨夜も安堵の表情で眠り続ける彼のそばで、彼の寝顔を見つめていただけだった。
もどかしさを感じるのは初めてではない。だけど…心を刺すちりちりとした痛みは色濃さを増していた。明らかに、あなたへの気持ちに気付く前よりも。


「お妃さま…?」

呼び掛けにはっとする。夕鈴は慌てて返事をすると、女官の話を促した。
夕鈴の顔を覗き込んでいた女官は、背筋を正すとごほん…と咳払いした。


「…お妃さま、実は今王宮に異国のまじない師が来ております」

「まじない師?」

何それ?口には出さず、女官の次の言葉を待った。


「はい。一年に一度王宮に来られるお客様で、昨夜遅い時間に王宮入りされたようです」

女官の説明によるとこうだ。

一年に一度王宮から招待をされている異国のまじない師は、今後の展望を占う重要な役目を仰せつかっている。王を始め、国を司る重鎮も一緒に占ってもらうそうである。


「今年はお妃さまも陛下とご一緒にということなんですが…」

女官の視線がふいに落ちた。


「どうしたのですか?」

急に抑揚の無くなった声音を心配して、夕鈴は尋ねた。


「まじない師様は公式の場では女性を占うことは出来ないそうで…」

あぁ、そういうことか。今や狼陛下の絶対の寵愛を独り占めする妃であるのに、公の行事に参列出来ない私を不憫に思っての発言だったのね。夕鈴はひとりでに納得すると、俯く女官を見つめた。いかにも良家出身のお嬢様らしい心配だわ…
そのような待遇、慣れているのにね。夕鈴はくすりと笑うと女官の手を取った。

女官の手はしっとりとしていて、いい匂いがした。


「占いなど…当たったためしはありませんから。それに国の展望を占う儀式に妃が参列しても意味がありませんわ」

女官は困ったように笑うと、夕鈴の手を握り返した。


「占いは当たるものではなく、信じるものですよ。異国のまじない師様はそれは評判の方でございます」

「ふうん?」

夕鈴は半分興味なさ気に答えると、たった今運ばれたばかりの淹れたてのお茶を口に運ぶ。
芳しい香りが口内を満たし、ほっと息をつく。運んで来た侍女を下がらせると、話の続きに戻る。


「ですからお妃さま。わたくし考えましたの。この方法でしたら問題なくまじない師様にお逢い出来ます」

「………え?」

今逢うって言ったの?困惑顔で覗き見ると、女官が力強く頷いた。


「まじない儀式は本日昼より開かれるとか。まじない師様は急務のため1日しか滞在されません。チャンスは夕方のわずかな時間ということになります」

「え?ちょっ……何を言っているのか」

分かりませんわ…内心の動揺をひた隠しにして、夕鈴は妃笑顔で答えた。動揺する夕鈴とは対照的に見やった女官の顔は、どこまでも真顔だった。

え?本気…なの?

驚きより不安が胸をついた。占いなどで満たされることのない気持ち。隠し続けた想いをまじない師に暴かれるような失態だけは避けて通りたい。

夕鈴の胸の内の片鱗を読み取ったのか…女官は安心させるかのように軽く呟く。


「占いは当たる保証など無いものですわ。そのように深刻にとらわれることなどありません」

「いいえ、そういうわけでは…」

「ご安心召されませ。きっと幸多き未来をお示しくださいますわ」

「……」

夕鈴の心は晴れない。


「近隣でも評判のまじない師様にございます。ぜひお受けくださいませ」

「でも…」

「国の大事なお客様、お妃さまとしてお逢いくださいませ」

















結局女官に説得され、夕鈴は占いを受けることになった。

案内された部屋は王宮の北端近く、日当たりの悪いその場所はお客様を迎えるには不向きな場所であった。


「まじない師様はこちらに?」

本当に?
冗談っぽく尋ねてみたが、女官の返答は真面目そのものだった。


「占いによりますと、王宮でここが一番清純な場所であるとか」

女官は厳かに答えると、扉を厚く覆っていた暗幕を持ち上げた。


「中にいらっしゃいます」

「中…」

とてもそんな風には思えない。女官が指さした中は、どこまでも暗闇に覆われていたから。
一寸先でさえはっきりとしない闇の中を夕鈴は手探りで進んでいった。途中何度も女官の姿を確認しながら…。


「王宮の北側は何度か来たことがあるけど…このような所を歩くのは初めてよ」

「わたくしにとってはお馴染みの光景であります」

「お馴染み?」

「まじない師様は、いつも深夜にお越しになられて、太陽が出るまでの間にこのような暗幕に覆われた部屋をお作りになります」

「太陽が出る?」

「太陽が死ぬほど苦手なのでございます」

くすり…と小さな笑い声が背後から聞こえた。


「なるほどね…」

この世には変わった方がたくさんいるのね…非日常的なお妃生活を長く続けて来た夕鈴は、多少のことでは驚かなくなっていた。


そうこう話しているうちに、少しほの暗い開けた場所に出た。ろうそくの灯りがぼんやり揺れている。背後に控えていた女官は夕鈴に軽く拝礼すると、一歩前に出て背筋を正した。

どうやら目的地に着いたようだ。想像以上に長い道のりに少し足が疲れていた。
暗闇に女官の緊張気味の声が響く。


「まじない師様。お妃さまのお越しにございます」

ややあって、奥からごそごそと物音がした。動く人影にろうそくの灯りが揺らめいている。

ドキドキしながら待つ夕鈴の心にはまだ見ぬまじない師への興味が沸く。


奥から出て来たのは、ベールを被った長身のまじない師。いかにも占い業を営んでいる風体だ。


「あなたがまじない師様ですか?」

夕鈴の声にろうそくが怪しく揺らめいた。
まじない師は深々と拝礼すると、夕鈴を席へと導く。


「このたびの国の展望を占う儀式、お疲れさまでした。昨夜遅く王宮入りしたにもかかわらず、今夜にもお立ちになるとか。それで、あのう…」

夕鈴はちらっと女官を見た。なかなか占って欲しいとは言いにくい。しかも…望んで来たわけではないし。

視線を察して女官が口を開く前に、まじない師が大きく息を吐いた。
ドキリと見やると、まじない師は口元に笑みを浮かべていた。少し気恥ずかしさを感じつつ、夕鈴は咳払いした。


「まじない師にお逢いするのは初めてなので、少しお話したかったのです」

「……」

「旅支度もございましょうから、すぐいおいとまさせていただき…」

「占って差し上げます」

「!?」

覇気のある高い声が響く。夕鈴はその声の大きさに驚き、さらには音色に驚いた。

この甲高い声はまさか…。


「お察しの通りにございます」

ベールからすっかり現れた二つの目が夕鈴を見つめていた。その顔を確認した夕鈴はあっ…と小さく声を上げる。


「あなた…」

まじない師は女性であった。


「拝顔かないまして恐悦至極にございます。初めまして、お妃さま」

「……女性の方とは存じませんでしたわ」

狼狽する夕鈴への返事はとても落ち着いたものだった。まじない師は軽く笑みを浮かべると、良く言われます…とベールを目深にかぶり直した。


「さて、占って欲しいのは全体運でしょうか?それとも、この先の未来のこと…?」

薄く紅が引かれた唇が縦に動く。夕鈴はまだ興味深く見つめていたが、女官に声をかけられてはっと意識を戻すした。暗闇でもくっきりと映る端正な顔立ち。予想外の風貌に、思わず見とれてしまったのである。


「あっいいえ…では、健康運などを…」

「かしこまりました」

まじない師は静かに呟くと、手を前に出した。細く白い指に目がいってしまう。

この人…とても綺麗。


「この先も特に問題なしです。大きな病気の兆候もなし、健やかな体かと思われます」

「そ、そうですか…」

「続いて、金銭運」

興味を惹く単語に、夕鈴の心臓がどきりと跳ねた。夕鈴にとって借金は天敵。だが、日を追うごとになぜか増えていた。それでも、あの人と私を繋ぐ糸は、その借金であるのだが。
皮肉なものね…夕鈴は目を伏せた。


「大きなお金を手にすることはありませんが、地道にコツコツと進めば運気は上がります」

まじない師の言葉に、夕鈴は安堵の息を漏らした。どうやら…これ以上負債が増えることはないようである。


「続いて…」

「あ…ええっと、もう結構ですわ」

夕鈴ははにかんだように笑うと、椅子から立ち上がりかけた。ふいに手首を掴まれ、体が静止する。


「!?」

「お待ちください」

夕鈴は自分の手首を掴む手と、まじない師の顔を交互に見比べた。細い指が、ろうそくの灯りに揺れている。


「まだ恋愛運が残っておりまする…」

恋愛運!?
驚き過ぎてしばらく声が出せなかった。


「わ、私には、もう成就させたい恋愛などございません」

嘘ばっかり…ちくりと痛む心に気付かないふりをして、まじない師の手を振り払おうと力を込めて引っ張ったが、びくりともしない。


「お離しください。もう十分占っていただきました」

乾いた笑い声を浮かべる夕鈴を、まじない師は黙したまま見つめていた。ふたつの瞳が真っ直ぐ注がれて、夕鈴はふいに視線を反らした。
すべて見透かされそうな瞳。心の奥底に深く閉じ込めた思いまでも、簡単に解かれてしまいそうで、夕鈴は身震いした。戸惑う夕鈴に、まじない師は着席を促す。


「この先も、国王陛下の寵愛がいく久しく続くかどうか占ってさしあげます」

生唾を飲み込む夕鈴。
背中を冷や汗が伝っていた。

何も動揺することなどない…誰に気付かれようと、私自信が気づかなければ、きっと大丈夫。

覚悟を決めた夕鈴は、改めて席に座り直す。夕鈴の浅い息遣いだけが、異質な空間を満たしていた。


「女官の方は、どうぞ外でお待ちください」

「え?」

夕鈴は振り返る。見上げた女官の顔は、夕鈴同様に困惑顔であった。


「これは、お妃さまだけが聞く権利があります。どうぞ外でお待ちください」

「……」

互いに頷き合う。女官が音もなく退出するのを確認したまじない師は、静かに語りだした。


「あなたを初めて見てとき、すぐに思ったのです」

柔らかく落ち着いた声音だったが、何かを掻き立てるような気持ちにさせる。夕鈴は、恐怖を感じながらも一言も聞き漏らすまいと耳を澄ませた。


「何を…ですか?」

「あなたは……心に何か大きな隠し事を抱えていると」

「!?」

隠し事…それは。夕鈴は目を反らしたが、目端には先刻と変わらず強烈な視線が注がれていた。雰囲気にだけ飲まれぬよう、夕鈴は固く心を閉ざす。


「おっしゃっている意味が分かりません」

「ここには…私以外、誰も居ませんよ」

「それが何か…?」

そんなことは分かり切っている…さも当たり前のように夕鈴が尋ねると、まじない師は笑った。その笑みがあまりにも悲しそうだったので、夕鈴の心は不安になる。


「国王陛下もあなたも、隠し事がお上手だ。しかも…その隠し事を身の内に秘め、誰に頼ることもない」

「国王陛下が?」

まじない師はひとつ頷くと、遠い目で夕鈴を見つめた。


「陛下がご即位されてより占っておりますが…あの方の冷たさはいつも変わらない」

「……それは、国を守るためです」

夕鈴の静かな呟きの中には、強さが感じられた。


「はい。ですが…今日占って初めて感じたことがあります。以前にはなかった意志がそこにはありました」

「…?」

「きっとあれは、“お妃さま”なんでしょうね…」

ふふふ…急に笑いだしたまじない師。夕鈴は複雑に見つめ返す。


「あの…?」

「実を申し上げますと、お妃さまのことを占いたかったのです」

「――私を?」

目元にしわを刻んだまじない師が、愉快気に笑う。くすくすと笑う姿を、夕鈴は穴が開くほど見つめた。
突然笑い出した彼女が理解出来ない。


「はい。陛下を占ってのち、興味が尽きませんでした」

「はぁ…」

よく分からない。シリアスな展開より一変、様変わりした雰囲気に、夕鈴は困惑するばかりであった。


「まだお互いに上手くかみ合ってはおりませんね。ですが、きっかけとは意外な場所に潜んでいるものです」

「…?」

きょとんと目を丸くする夕鈴。まじない師は目元を一瞬だけ細めた。からかうようなその仕草に、夕鈴の頬が朱色に染まる。まじない師はしばらく口元に笑みを浮かべていたが、すぐに口を真一文字に締め直した。

ふいに風が流れたような気がした。
室内に窓はないはずなのに、風が肌の熱を奪い、寒い。

まじない師はひどくゆっくりとした動作で、袂を引き寄せる。さらりと衣擦れの音が耳につく。そうしている間も強烈な視線は変わらず注がれていて、夕鈴は落ち着かなかった。

そのように、見透かすような瞳でじっと見つめないで欲しい。
心臓をわしづかみされたように……胸が激しく打ち鳴っていた。


「―――お話がよく分かりません。それに…」

その視線をやめろと言いたいけれど、それを言っては認めたことにならないか。やましい気持ちなどないのだから、ここは堂々としておくべきではないか。

私に隠したい気持ちなどないのだから。
夕鈴はしばし躊躇して、黙した。


「申し訳ありません。あなたの返答に、いささか私の胸が痛んだだけです」

「痛む?」

眉根を寄せる夕鈴。
まじない師はこくりと頷いた。


「私はもうずいぶんと長いこと、この業を営んでおります。何人、何千人の人々を占い、その方をあるべき生き方へ、進むべき方向へお示しいたして参りました」

「……」

「私の元へ来る方はみな、思いのすべてを受け知って欲しい。その気持ちの行き場を見つけたいとの深い思いを胸に抱えていらっしゃいます。その思いはとても強く、きっと並みのお方であれば耐えきれぬほどでしょう。私は常に覚悟を持って、その人の秘密や悩みを共有し、切なる胸のうちを聞いています」

「……はい」

「私は占いに“生き筋”をかけています。だから、胸が痛むのです。お妃さま」

「どういう意味?」

私が……本気でないと…?そう言いたいの。夕鈴の問いかけには答えず、まじない師は静かに頭を垂れた。


「痛むのです。お妃さま」

「……」

痛むのは私の心。
もうずっと前から、ひたむきに……あの人へと不可抗力で向かう気持ちが痛い。

夕鈴は眉根を寄せる。

自分で決めた。隠し続けることを。でもそれは…今は痛い。そう、覚悟が足りなかった。隠し通せると思っていた浅はかな私。


「痛い―――」

ふいに口から漏れた呟きに答えるように、まじない師は首を振った。


「ですが、ご安心召されませ。この先もきっと、お妃さまへの寵愛は続きます。そして、このままの関係も久しく続くことでしょう」

「……このままの関係」

ずっとこのままの関係が続く。私の気持ちも隠されたまま、誰にも伝えることもせず。
何も見ず、何も知らず、何も考えず、与えられた職務をただ全うするだけ、それが臨時花嫁の仕事。でも…。

夕鈴は顔を上げた。まじない師はずっと夕鈴を見ていたようで、すぐに目が合う。吸い込まれそうな双眸に見つめられ、夕鈴は言葉を失う。

きっと見抜いてる…?だけどそれを言おうとしないのは、私に言わせたい…から?


「……」

やっぱり来るんじゃなかった。肩を落とした夕鈴は、大きくため息を吐いた。


「それは良かった。陛下との未来がこのまま変わらず続くよう、あなたもお祈りしてください」

ため息とともに言い放つ。胸の不穏な気持ちすべてを外へ押しやる。邪推など感じなかったあの無垢な頃のまま、心に蓋をするように。


「お妃さま」

「……はい」

一体何。心を押し殺して決断したことを誰にも、何にも邪魔されたくない。夕鈴はきっと睨む。


「そのように敵対心を出されないでください」

「そんなつもりは…」

「私は今夜、ここを立ちます。来年、お逢いするとき、お妃さまの心の憂いが晴れていることを祈るばかりです」

「……」

「あなた自身が変わろうとなさらなければ、未来は変わらない。だけど…それを望む気持ちもどこかであるのでしょう。私には進言することは出来ますが、心に強制することは出来ません」

「……」

「心に嘘をつき続けることをやめれば、きっとこのままの関係では居られない」

そんなこと…言われなくても分かってる。


「ですがお妃さま。変わることを恐れては前には進めない。」

「だけど…怖い」

そう、私は怖い。あの人にどう思われているのか…。私の気持ちを知ったとき、あの人はどうするのか…。

怖くて堪らない。


「ですから、祈りを。お妃さまの心が晴れるよう、お祈り申し上げております」

私にはもう申し上げることはございません…そう呟くと、まじない師は頭を深く下げた。漆黒のベールをぼんやり見つめる夕鈴。

どこまでが演技で、どこまでが本当?
どこまでが偽りで、どこまでが事実なの?

抱える矛盾を口にしたとき、このガラスのような繊細な関係はきっと壊れてしまうだろう。
気づかぬふりなど、どこまでもつのか分からない。


でも今は―――。


「…ありがとう、存じます」

ゆっくりと夕鈴は頭を下げた。







後編につづく

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