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2011.12.20 (Tue)

聖なる日をともに

聖なる日をともに

聖なる日(クリスマス)が近いとゆーことで、クリスマス話をひとつ作ってみました。
未来(夫婦)設定で、陛下目線です。

例によって未来話がお嫌いな方は、トップページへお戻りください。→トップへ戻る。

ではどうぞ。













「陛下、三日後は何の日か知ってます?」

背後から突然降ってきた声に、僕は書簡を見る手を止めた。
振り返ると、手に急須を抱えて近寄る夕鈴の姿。可愛らしい笑顔とともに近付く夕鈴に、僕も笑顔で答えた。


「三日後?」

「はい」

近付いて来た夕鈴は僕の手元に目をやると、あっと気付いたように声を出した。


「ごめんなさい…お仕事中でしたか。私、気付かずに」

しゅんと謝罪する夕鈴に、僕は柔らかく微笑んだ。書簡を軽く纏めてくくると、そばの机に置く。


「今終わったところだよ」

「ごめんなさい」

「別に謝ることはない。夕鈴…おいで」

僕は手を差し出すと、ぽんぽんと自らの膝を叩いて手招きした。少し照れたように俯きながらも、夕鈴は素直に手を伸ばして来た。白い手を取り膝の上に誘導すると、ふわりと横から抱き締める。


「花の香りがする」

夕鈴の肌から漂う良い香り。僕は深呼吸するように吸い込むと、ため息を漏らした。
愛しい人を抱き締めるこの瞬間を与えてくれるのならば、どんな激務も乗り越えられるものだな…体を覆う疲労を追い出して、僕は夕鈴のぬくもりを確かめた。


「侍女が香油を塗ってくれたので…」

「どうりで、まるで花の精だな」

僕は呟きながら、うなじに唇を寄せた。湯上がりの彼女の肌は朱が刺していた。なんとも妖艶な姿に、思わず破顔してしまう。


「陛下…?」

急に黙りこくった僕を呼ぶ夕鈴の声。僕は我に返ると、やっと唇を離した。


「そういえば…何か話してなかった?」

僕の問いかけに、夕鈴はそうだった…と短く囁くと顔を向けた。


「三日後は何の日か知ってますか?」

「…三日後ね、もちろん」

三日後といえばあれしかない。
分かりやすい答に少しの不思議を感じて、僕は答えた。


「聖なる日。つまりはクリスマスだよね?」

「はい!」

目を細めて微笑む夕鈴。心底嬉しそうな姿を僕はじっくり眺めた。
夫婦になって初めて僕と迎えるクリスマスに、こんなにも喜びを表してくれるなんて…僕は嬉しさと気恥ずかしさを感じた。こういうイベント事を、大切な人と迎えるのは初めてだ。今まで興味が無かった分、今年は盛大に祝おう…などと考えていた矢先、腕の中の夕鈴が変な質問をした。


「許可いただけますか?」

大きな瞳が僕を見つめる。懇願するような可愛らしい上目遣いに、僕は思わずドキッとなった。跳ねる鼓動を気取られないように、冷静に尋ねる。


「許可?」

「はい。三日後のことです」

「三日後のことって……何の許可?」

不可解な質問に目を丸くする僕。見つめた夕鈴の顔は、真面目そのものだった。


「ですからお祝いをする許可を…いただきたいと」

「あぁ…」

僕は納得した。二人で祝うことを許可して欲しいのか…。急に畏まる彼女に、僕は心の中で笑う。


「いいよ」

もちろん。そんなこと、いちいち許可を取る必要もないだろうに…相変わらず真面目な彼女に感心する。


「ありがとうございます!」

夕鈴はほっと安堵の息を漏らすと、白く細い手を絡めて来た。可愛い仕草にすっかりやられた僕は、抱き締める腕に力を込める。


「久しぶりに父と弟に逢えます…」

ぴたり。夕鈴の長くて手触りの良い髪へと伸ばしかけた、僕の手が止まる。


「クリスマスを家族で祝えて嬉しい…」

「……」

思考が停止した。
え?聞き間違いか。いや、幻聴か。よほど疲れているらしい。目を閉じて、今の声を頭から追い出そうと頭を振った。

現実とは離れた場所に意識を飛ばし、腕の中のぬくもりだけを感じ続ける僕。

だけど。


「……陛下?」

夕鈴の心配そうな声に引っ張られて、無理やり意識を手繰り寄せた。浅く息を吐くと、夕鈴を真正面から見つめる。


「家族って…僕だよね?」

「え?」

「え?」

僕たちはお互い顔を合わせた。夕鈴の瞳に映る僕の顔はひどく渋かった。こんな顔じゃ嫌われる…なんだか嫌な展開を感じ取っていたが、僕は再度頭を振ると、さきほどまでの満面の笑顔を戻した。


「今、家族と祝える…って言ったけど…」

「はい」

こくりと頷く。


「その家族は、僕だよね?」

恐る恐る確認する。遅い返答に確信めいた勘違いが露呈して、一気に悲しくなったがめげずに夕鈴に問い掛けた。


「君と初めて迎えるクリスマスだ。盛大に祝いたい」

情けないと感じつつも、夕鈴を引き止める言葉が止まらない。そんな僕の内情など一向に気付かない鈍感な彼女は、慌てて頭を下げた。


「あっ…あの。ごめんなさい。実は実家で…過ごせたらって思ってたんです」

「……」

そうだと気付いてた。気づいてながらも再確認したんだ。
嫌な予感が本当になり、僕の気分は落ち込んだ。がっくり肩を落とし、先ほどの夕鈴の言葉を回想する。


「陛下…」

夕鈴は不思議そうに僕を見つめていた。丸くて大きな瞳が揺れている。


「ダメ」

「え」

「クリスマスはダメ」

「!?ですが…」

「ダメったらダメ」

「でも…」

「クリスマスはダメ」

僕と過ごして欲しい…とまでは言えなかった。
有無を言わさぬ大否定に大人げなさを感じたが、自分の意志では止まれない。僕は頑なに許可を与えなかった。


「……」

夕鈴の切ない視線を受けることに耐え切れなくなった僕は、目線を避ける。横目で落ち込む夕鈴の姿を確認し、彼女以上に心が曇っていった。


「別の日はいいけど…」

どうしても耐えきれなくなって、ぼそりと呟く。呟いた矢先大後悔したが、今さら訂正出来なかった。


「では!次の日にお願いします」

夕鈴の顔がみるみる晴れる。
僕としては次の日なんてとんでもなかったが、せっかく咲いた満開の笑顔をまた曇らす不粋な真似は出来ない。内心の思いはどうであれ、僕は懇願を聞き入れるしかなかった。どこまでも…夕鈴には弱いのである。

当初の希望を叶えられなかったとはいえ、許可を得られた夕鈴は満足気にしていた。彼女の喜びが肌を通して伝わり、僕の気持ちは複雑極まりなかった。
本当は…実家などに帰さず、片時も離さずにそばに置いておきたいものを…。


「もう少し後でもいいんじゃない?」

「年末を迎える前じゃないとダメなんですよ」

笑顔で軽くあしらわれ、僕は口をつぐんだ。どうせ夕鈴大好きの弟がらみなんだろうけど…夕鈴の弟へと愛情の深さに面白くないと思うのは常だ。分かっていながらも、僕はあえて質問した。


「弟君に何かあげるの?」

「はい!ケーキを作ってあげます。美味しそうに食べてくれるんですよー。あと、プレゼントも!毎年楽しみにしてます。あと、……陛下?」

「ん?」

「眉間にしわが寄ってますが…」

夕鈴は人差し指で僕の眉間を軽くつついた。


「どうされました?」

「どうもしていない」

「もしかして、重い…ですか?私、のきます」

赤く顔を染めて立ち上がろうとする夕鈴を、慌てて制する。


「違う。大丈夫だ」

「でも…」

悲しげに顔を寄せる夕鈴。そんな顔が見たいんじゃないのに…僕はため息を吐くと、夕鈴の頬に口付けた。


「ごめん」

浅ましい嫉妬心を追い出し、夕鈴に微笑みかける。

「僕にもケーキ作ってくれる?」

「もちろん!プレゼントは何がいいですか?」

「……」

「あ!あの、あまり高価な物はご用意出来ませんが…」

「いらないよ」

僕の一言に、夕鈴の顔が強張る。


「……そう、ですよね。陛下でしたら何でも…」

「……夕鈴?」

「あっ、つい癖で言ってしまって…」

「夕鈴」

「…はい」

潤んだ瞳の彼女。相変わらず先走る性格は治っていないようだ。
今にも泣きそうな頬に手を添えて、僕は柔らかく微笑んだ。


「僕には君が最高のプレゼントだ。他には何もいらないよ」

かぁーっとみるみる朱色に染まる顔。夕鈴は大きな瞳を開け、固まったように僕を見つめていた。
可愛い兎の出現に、嬉しくなって甘く微笑む。


「だから夕鈴、長居は許さない。一日いや、一刻も早く僕の元へ帰っておいで」

願うことなら、実家には帰らないで…これもやっぱり言えなかった。
耳元に唇寄せて囁く僕に、夕鈴は無言で何度も頷いた。
弟にとられるのも、一日が限界かな。僕はまだ赤い頬に口付けながら、腕の中のぬくもりを抱き締めた。















後日。

「どーして陛下がここにいらっしゃるんですか!!!」

玄関先で奇声を上げる夕鈴を、挨拶代わりに抱き締めた。大声ごと彼女を胸の中に収める。


「夕鈴、逢いたかった…」

「……」

「はるばる迎えに来た夫に、愛の言葉はないの?」

「……っ。苦しいです!」

「あぁ…ごめん」

呼吸を整える彼女を抱き上げて、にっこり微笑む。


「い、今迎えにって…」

「夕鈴、なぜ戻らない?」

拗ねたように口を尖らせ問い掛ける。三日経っても一向に里帰りから戻らない妻にしびれを切らして迎えに来た僕を、夕鈴は驚愕の様子で眺めていた。


「な、何迎えに来てるんですか!」

「何って…。何なの、その態度?」

悲しくなって耳をたたんで落ち込む僕。急に現れた子犬の僕に、夕鈴の激しい焦りが伝わった。


「そんなに僕の迎えは…嫌?」

彼女の最も苦手とする表情でで問い掛ける。


「ちがっ…そうじゃなくて」

みるみる焦って戸惑う夕鈴。腕の中で固まる彼女の姿に、僕は面白くて笑った。


「もう!からかわないでくださいよ。急に来たからびっくりしたんです」

「驚かせるつもりで来たんだ」

大成功だ…と微笑む僕に対して、夕鈴は渋顔を作っていた。


「ま、まだ帰りませんから」

「……何?」

「まだしばらくこっちに居ます」

「じゃあ僕はひとりで帰るの?」

「か、勝手に迎えに来たんじゃ…」

「悲しいよ…夕鈴」

僕は目線を落とし、切なさと悲しさと痛み、すべて詰まった表情で細い声で訴えた。


「う…」

「君の居ない毎日が辛くて…僕は心の折れそうな日々を過ごしていたんだよ」

「たった三日じゃないですか…」

「夜、君が横に居ないのは悲し過ぎる」

「ななな何を…」

「君を抱き締めて眠るのが好きなんだ。君が居ないと安眠出来ない」

「……な」

「それに…君の笑顔を見て一日を締めくくるのに、このままじゃいつまで経っても新しい一日が迎えられない」

「……」

「君が居ない後宮は、殊更花を失ったかのようにひっそりとしている。君とともに色までも奪っていった…あれはすでに僕の後宮ではないよ」

「……」

「それに…」

無言で手を前に出し、ストップをかける夕鈴。もう片方の手は、大きく広げ顔を覆い隠している。その手の下はきっと鮮やかな赤に違いない。


「…夕鈴?」

「……分かりました」

「じゃあ!」

「……帰りますよ」

がっくり…完封負けに肩を落とす彼女を、得意顔で抱き寄せる。


「帰ろう」

君の居場所へ。
僕の腕の中へ。

悔しそうに俯く夕鈴の様子に、僕は心から笑った。














二次小説第65弾完
今回はクリスマス話。もう間近ですね。クリスマス休暇を兼ねて実家の里帰りを願う夕鈴と陛下の絡み。そして里帰り中の夕鈴を迎えに行く陛下。ベタですね…でも面白かった~
陛下どんだけ拘束激しいの!と思われた方いらっしゃると思いますが、ミケの中ではこれが普通ですので。夫婦になったからといって、さらに新婚だろうが年季の入ったカップルになろうが、陛下の夕鈴への執着心は容赦ないです(笑)こんな陛下でごめんなさい。原作に近いもっとクールな陛下も、たまには小説に登場させないと…とは思っている今日この頃です。
ここでお詫びを。次回話は重くて暗い長編と予告しておりましたが、あまりに暗くミケの心が折れてしまい…なのでアップはまだ先です。不甲斐ない自分ですみません。

65弾の続きで、ふたりで過ごすクリスマス話が書けたらなぁって思ってます


22:44  |  未来(夫婦)編  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●なあに

なあに、何、何、
この甘甘の陛下。すごいですね。こんな陛下が妄想できるのは
尊敬に値します。すごおっく好きです。
甘すぎて、逆に胃もたれしそうです。
いや~、実家にまで迎えに行っちゃうのがいいわ。
素直に行けちゃうんだ。
甘いわ、素直だわ。すごいです~~~~。
ニヤつく自分が可笑しいわ。
gaa2 |  2011.12.21(水) 22:22 | URL | 【編集】

●Re: なあに

はじめまして!gaa2さま。
コメント嬉しいです☆しかもすっごくお褒めいただいて…光栄です~。
> 甘すぎて、逆に胃もたれしそうです。
→胃もたれを通り越して消化不良を起こしそうなほど甘い小説目指してます(笑)
実家に迎えに行きますよ。お約束ですね。夕鈴のことになると恥も外聞もかき捨てる陛下が可愛らしくて仕方ありません。
ミケ |  2011.12.23(金) 13:42 | URL | 【編集】

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