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2014.06.15 (Sun)

君がくれた愛しい時間Ⅱ

君がくれた愛しい時間Ⅱ


Ⅰの続きです。

【More・・・】

妃が姿を見せなくなって早二日。すでに不仲説が飛び交うこの王宮で、当の噂の的である狼陛下本人は、すこぶる機嫌が良かった。

人払いした部屋で、何かの準備にいそしむ陛下を観察する側近の表情は晴れない。

臨時花嫁効果は絶大、彼女の採用に踏み切ったのは大成功だったとようやく落ち着いた矢先、不仲説とは…。
根拠の無い噂にこれほど意識を取られる側近ではなかったが、急に妃を遠ざけた陛下の気持ちが読めないため、わだかまりが消えることは無かった。
前はあれほどベッタリだったというのに、これでは噂が誠になりかねない。

「陛下、明日の催しですが、本当に妃を伴わない予定でしょうか」

「そうだ、狸共の前に愛らしい妃をわざわざ見せることもあるまい」

「………」

「なんだ?」

「いえ、ただ普段必要以上にお披露目されておいでですので」

そうだったか、などと素知らぬ顔して、陛下は目を伏せた。

何を企んでいるのか…。しきりに目を配る手元の書簡が気になるところではあるが、聞いたら不機嫌になるに違いない。
政務そっちのけで何かの準備に追われているのは明白だが、嫌な香りがぷんぷんするので触れたくない。

また面倒ごとの起きる気配に、静かに思案顔を浮かべる李順であった。










なんなのよ、これは。
どこに行くのよ、私は。

自らの立ち位置を呪い、誰からも説明のない状況にたじろぐ狼陛下の臨時花嫁。

夕刻から身を清め、新しい衣装に身を包み、この辺りからたいへん怪しいと感じていたが、どうすることもできず。

馬車に揺られ半刻。

そろそろ誰か説明があっても良いものを。夕鈴を取り囲む面々はいつも以上に多くを語らなかった。

「どこへ行くのか聞いているの!」

「知らないよー陛下に聞きなよ」

「居たら聞いてる」

隠密に向かって叫んでも何も解決せず、諦め今度は隣の宰相に迫る。

「この先に陛下がお待ちなんですか?何があるのかいい加減教えてください」

「もう間も無く到着します。ご不便を掛けてすみません、私もこれほど遠いとは、腰に響きます」

「答えになっておりません」

「お妃さま、時に馬車移動の危険性をご存知でしょうか?閉鎖的空間は常に危機を生じ…」

「快適かつ安全を感じておりますわ、宰相さま。遠回しに聞くなとおっしゃっているなら、はっきり言ってくださって結構」

宰相が話し終えないうちに口を挟む。怒りが抑えきれなくなっている。

「的を得ない質問や答えは謎を生み出し、無限のループに陥ります。この状況はお妃さまにとって良くない兆しの表れかと存じます」

まったく腹立たしさしか感じない。
別の意味で危険な馬車だ。おそらく馬車の上に居て姿の見えない隠密はきっと笑っているだろう。

会話が盛り下がる中、やっと目的地に到着したようだ。音もなく静止する馬車から宰相と共に降りたった夕鈴。周囲は真っ暗で、人の気配が無い。

「ここは…?」

なんとなく見覚えがあると感じたのは夜空を見上げた時。記憶と同じ星の配列にまさか、と思うが、ありえないと頭を振った。

「こっちだよーお妃ちゃん」

促されて暗闇を歩き出す。
暗さに目が慣れず何度も躓きそうになる。一歩一歩進む間も、宰相の不吉発言は続いていたが、無視を決め込んだ。

「ここで待機ね、そばにいるから」

ぼんやり明るい四阿に着くと、浩大が言う。にかっと笑って、またたくまに姿を消した。

「残念ながら私の宴会芸もこれまでです」

名残惜し気に呟く宰相は軽く会釈する。

「えっ宰相さま。行かれるのですか?」

「はい、お妃さま。最後にひとつだけ」

怖い顔が真剣になるとさらに怖くなる。暗闇に浮かぶ宰相の恐怖の笑顔に夕鈴は生唾を飲み込んだ。

「逢瀬の代償は大きく深く、どこまでも無限に。お妃さまがなぎ倒されないことを祈り申し上げます」

「……おうせ?」

ぽかんと首を傾げる夕鈴。

「では……」

「えっちょっと!」

ひとり残されそうになり、慌てて手を伸ばすが空振り。
体勢を立て直し再度手を伸ばしかけて大きくバランスを崩した。

「きゃっっ」

覆いかぶさるようにして宰相にぶつかってしまった。

「すっすみませ…」

くすり…耳近く届いた笑い声に、夕鈴は目を見開いた。

「え…」

今の声って。

「大事ありませぬか?お妃さま」

離れたところから宰相の声が響く。
私を支える人からではなく。

「……もう良い、下がれ」

「御意」

「!?」

えっ嘘。

慌てて顔を上げた夕鈴を、ぎゅーっと抱き締める人。その力強さにびっくりして声が出せない。

「待ちかねたよ、夕鈴」

頬に優しく触れる手。その暖かさをじんわり感じる。
その人はにこにこ笑いながらゆっくり顔を近付けて来た。コツン…とおでこ同士がぶつかり、夕鈴ははっと意識を取り戻す。

硬直した表情を解き、ゆっくり顔を上げた。

「陛下…」

「うん」

子犬陛下が笑う。

肩越しに宰相が下がって行くのが見えた。













満天の星が降り注ぐ。互いの顔を照らす星の輝きに魅入られながら、夕鈴はまばたきを繰り返す。

まだ状況が読めていない。
ただ、ずっと顔を見たかった人に逢えて気持ちが高揚していた、問いかけを忘れるほどに。

「陛下…」

「うん、逢いたかったよ夕鈴」

「私も…」

「え?ホント!?」

「え?」

やだ、何言ってるのか。星に目が眩んだみたい。思わず本音を言ってしまい頬が熱くなる。

「僕、嬉しいよー」

赤面顔を伏せることを許されず、夕鈴はにこにこ顔の陛下と目線を合わせることになった。

あまりに嬉しそうに笑うから落ち着かない。

「あの、ここは…?」

気持ちを誤魔化すかのように話を反らす。

「びっくりした?」

こくりと頷くと、満足気に笑う陛下がさらに顔を寄せて来た。

端正な顔立ちが近く、心音が激しさを増す。

「ち、近いです、へいか…」

「離れてた分近付かないとね。すぐにでも君で満たしたい」

「⁉︎」

「ここ数日、逢えなかったんだ。これほど悲しいことはないよ」

陛下の言葉に、むむむ…と眉を寄せる夕鈴。

「逢えなかったのではなく、逢いに来なかったのでは?」

「何を言うの、僕は逢いたかったのに」

嘘ばっかり。狼演技ではなく素のまま話す陛下に心が掻き立つ。

「お仕事、それほど忙しいわけでは無かったのでしょう?後宮に渡ろうと思えばいつでも渡れたのでは?」

「んーそうだったかな」

「周宰相にも浩大にも確認しましたから」

ぷいっと顔をそむけた途端、笑い声が響く。

「拗ねるな、我が妃よ。そんなに愛らしい顔でそっぽを向かれたら、ますます構いたくなる」

「なっ、」

なぜ狼陛下。

妃を溺愛する狼陛下の降臨に、夕鈴はたじろぐ。囲いから抜けようと身じろぎするが、堅く組まれた両腕が夕鈴の背中の上で外れることはなかった。

「私が来ないのがそれほど悲しかったのか、思わず他人に問いかけなければならぬほどに」

「ち、ちが…」

「違う?そんな切ないことを言うてくれるな」

そう呟くと陛下は額に口付けを落とす。

「っつ…」

鼓動が跳ねた。
久しぶりの抱擁に、心音が早まる。

「明けても暮れても君のことばかり考えてたというのに」

真っ直ぐ注がれる視線が熱くて、背中がこそばゆい。ぞわぞわと鳥肌が立ってきた。

「でっでは、なぜ…」

逢いに来なかったのか。逢いたいなら時間を作ってでも逢いに来る人だ。そう聞きたかったが聞けない。聞いたら負けな気がする。

熱い視線と混ざる狼の不敵な顔に危険を感じていた。

「なぜ、どうした?」

耳たぶを噛まれて、夕鈴は小さく悲鳴を上げた。狼は口角をにいっと緩めて、兎に襲いかかる。

「私に逢えない時間、どう感じた?」

「どうって…」

「私は寂しかった。夕鈴は?」

「…わっ私!?」

「君の気持ちが聞きたい。教えて欲しい、夕鈴」

「っつ…」

そんなこと聞かないで。こんな近距離で告げたら、血迷って告白しそう。

「夕鈴。どうなんだ?」

額に、目頭に落とされる熱が、注がれる甘い視線が…。
熱すぎてこのまま溶けてしまいそう。

もう耐えられそうにない。
早く、ここから逃げなければ。

「陛下!もうはっ離してください。

訴えに反して、腕が緩むことはない。さらにキツく抱き締められて、甘い眼差しに捕らえられてしまった。

「ダメだ。君の気持ちを聞くまで離さない」

そんなの、言えるわけない。言ってしまったら、もうそばには居られない。

そばに居られないなら、口を閉ざす方を選ぶ。

「苦しいですよ、離ーしてー」

「ダメだと言ったろう。私にばかり言わせておいて、ひどい兎だ」

「ひどいのはどっちですか!」

勝手に言っておいて、私の気持ちなど置いてけぼりで、いつも先走るのはあなたでしょう。

声高に言ったところで、陛下は許してくれない。

何かを言うまで、頑丈な囲いが解かれることはない。

「夕鈴」

低い声音に寒気を感じる。狼の口調で私を追い詰める。
決して命じているのではない、これは彼の本性ではないから。

「………」

また腹立たしくなってきた。
これは演技だ、妃を寵愛する狼陛下の演技。
どうあっても彼は本気で接してはいない。

……だったら私の気持ちも、本性ではないと信じてくれる?

あなたが演じるのなら、私も答えるだけ。狼陛下の花嫁として。

「とても寂しかったです。あなたに逢えなくて…」

夕鈴は真っ直ぐ陛下を見据える。

「あなたが逢いに来ないのは、私を避けてるからだって思ってしまって、そう思うと苦しくて胸が張り裂けそうでした。」

「夕鈴…?」

しゅん、と肩を落とす、瞳を潤ませながら。

「私をこれほど寂しい気持ちにさせた理由をお聞かせください」

狼陛下が驚いている。
さすがに言い過ぎたか、寵姫を演じるのも楽ではない。
でも途中ではやめられない。

「なぜ、逢いに来てくださらなかったの?」

「それは…」

「私を避けてたのでしょうか?」

「ち、違うよ、夕鈴。そんな顔しないで」

子犬に戻った彼が慌てて声を上げる。陛下は、瞳に溜めた涙を指で拭ってくれた。

「じゃあどうして後宮に来られなかったのです?」

「だって君が…」

「私のせいですか?」

「そうじゃない、夕鈴は悪くないよ」

「じゃあどうして?」

陛下の着物をぎゅっと掴む。はぐらかされないように、陛下の苦手な泣き顔で迫った。

「…それは…きっと寂しがってくれるって、夕鈴から逢いに来てくれるって思ったから」

「私から…?」

陛下が頷く。
それで逢いに来なかったの…?まさか。

「試してたんですか?」

「⁉︎違うよ!駆け引きだよ!」

「駆け引き…?」

しまった、と陛下が目を逸らしたのを見逃さない。着物を掴み直す。

「どういうことでしょう?」

にっこり…冷えた笑顔を向けると、ばつが悪いように控えめに笑う陛下が居た。










「もう怒っておりませんよ」

「………」

嘘だ、目が笑っていない。僕はすっかり涙が止まった夕鈴を見つめた。さきほどから笑顔を貼り付けたまま、謝っても謝っても許してくれそうにない。

夕鈴の妃演技、うっすら気付いていたが、泣き顔は計算外だ。思わず動揺して本心を漏らしてしまった。

もっとぐいぐい押すべきだったな。後悔先に立たず。

四阿の天井に広がる星空。彼女に喜んで欲しくて連れて来た場所であったが、すべて台無しか…。

本当なら満天の星空の下夕鈴と二人、いつものように語り合っていたというのに。

ため息を漏らすと、夕鈴が手に触れて来た。

「陛下」

「な、何?」

慎重に尋ねる。泣かれて怒られてまた家出されては堪らない。

「この場所って、もしかして…」

「う、うん」

頷くと、夕鈴がかすかに笑う。

「やっぱりそうでしたか、星の配列に見覚えがあります」

「うん良かった、気付いてくれて」

ほっと安堵する。星離宮を離れた後も、きちんと復習していてくれたみたいだ。

「君を驚かせたくて。浩大と宰相に力を借りた」

「驚きました、でもなぜここに?」

「その、駆け引き…あーごめんね。君の喜ぶ顔を見たかったし、君の気持ちも聞きたかったし」

「失敗しちゃったけど…」

ははは、渇いた笑い声が小さく響く。
君を焦らして不安にさせて、逢いたい気持ちを高めきったところで、お気に入りの場所に連れ出して、君といい雰囲気になりたかったんだけど。

僕が考えたサプライズ、途中までは上手くいっていたのに。
いつもと違う場所だと、人は素直になれるから。

ここは僕のお気に入りの場所であると同時に夕鈴のお気に入りの場所でもあるはずだ。

星離宮からの帰り道、偶然見つけた場所。離宮と同じように星がとても綺麗で、思わず立ち止まらずにはいられなかった。

「でも君が気付いてくれて良かった」

僕は夕鈴の手を握り返した。ほっと息を吐いて肩を落とす。

「覚えてないって言われたらどうしようかと…せっかく李順にさえも知らせずお忍びで君に来てもらったのに」

「え⁉︎お忍び、ですか?」

「そうそう、本当は君を伴いたかったけど煩わしい宮殿の仕事なんてさせたくなかったし。でもせっかくこの近くでの仕事だったから、君に来て欲しかったし…」

「なにより逢いたかった。もうとっくに限界だったから」

自分で始めたことだが、いざ逢えなくなるとすぐに苦しくなる。

まだまだ、僕には夕鈴が足りない。

ちらりと見やると、赤くなった兎が小さく固まっていた。

もう怒ってない…かな。

せっかく二人きりなのに、妃演技をされるのは嫌だ、さっきはまんまと騙されたし。

「その、ありがとうございます」

「え?」

「こんな素敵な場所。また来られて嬉しいですよ」

夕鈴はそっとはにかむと頭上を見上げた。一番光る星を指して嬉しそに語り出す。

「あれは北極星」

「あちらは、星座が綺麗ですよ」

「うん」

僕も見上げる。星と僕たちを遮るものは何もなくて、輝きに吸い込まれそうになる。

夕鈴を盗み見ると、星々よりひときわ綺麗に輝いていた。

「君とまた見ることができて良かった」

「はい」

右肩に心地良い重み。夕鈴が身を寄せて来た。

「………」

気を許すと、時々こうして大胆な行為に及ぶから驚かされる。

僕はつくづく、夕鈴から信用深い男だと思う。

「綺麗ですね、陛下」

「うん」

本当は信頼と欲を天秤にかけて、いつもギリギリのところで踏みとどまっていること、知られてはいけないな。

僕は反則級の笑顔を浮かべる夕鈴を見つめながら、小さく笑った。











あとがき


その後、お忍びで妃を連れ出したことが側近にバレて、たっぷりお説教を受ける陛下。

夕鈴も連帯責任とかなんとかで、李順から小言を受けた。

大人しくお叱りを受ける夫婦。

側近はよっぽどお怒りのようだ、終わる兆しはなかなか見えない。

無限に続くお説教。無限に……ん?

夕鈴ははたと思い出す。


『逢瀬の代償は大きく深く、どこまでも無限に。お妃さまがなぎ倒されないことを祈っております。』


……不吉発言、当たってるわね。






二次小説第、第・・・何弾だっけ??忘れるほど久しぶりの更新です。(第66弾でした)
コミック最新刊の10巻に影響され、居てもたってもいられず書いてしまいました!
いや~陛下と夕鈴ラブラブでしたね!小説も負けずにラブっぷりを披露したつもりです。

今回の見どころは、宰相と隠密のタッグ。原作では絶対ありえないでしょう・・・(笑)
陛下の気の許せる相手として、ぜひ不吉宰相も加えて欲しいところですね。

さて、原作ではもう物語の終焉?に向かいつつあり、悲しいような早く展開が気になるような、目の離せない今日この頃ですね。ぜひハッピーエンドをお願いします~☆☆☆
17:48  |  離宮・王宮の外編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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