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2014.07.13 (Sun)

共に過ごした日々を胸に抱いて

共に過ごした日々を胸に抱いて


今回も登場人物盛り沢山です☆

ではどうぞ。


【More・・・】

初夏の花が咲き誇る庭園。

芳しい花の香りが周囲を満たし、夕鈴はほっと息をついた。共に居る人物は咲く花よりも花らしく、大輪の花のごとく美しさを纏っている。

ちょうど見頃の花を手折り、夕鈴は花籠にそっと入れた。

「まぁ、お妃さま。まるで花の精のようですわね…」

投げられた言葉を肯定も否定もすることなく、夕鈴は振り返った。

「素晴らしいですわ!わたくし、また創作意欲が…」

「紅珠…」

夕鈴は曖昧な笑顔を浮かべて、可愛らしい少女に向き直る。


ここは、後宮の庭園。
管理人によって見事に手入れされていたここは、初夏の花々が咲き乱れていた。夕鈴と共に花摘みを楽しむのは氾紅珠。現王の治世で最も権力を持つ大臣のひとりと噂されている氾家の一人娘だ。


「紅珠…創作も良いですが、本日は庭園の散歩を満喫いたしましょう」

「そうですね、お妃さま。わたくしったらつい、新作の妄想を…」

「………」

うっとり…妖艶に微笑む美少女を複雑に見つめ返す。
彼女は、夕鈴のお茶飲み友達。堅苦しい後宮生活で気軽に話せる数少ない相手。
とても可愛くて気に入っているが、このあたりはさっぱり分からない。


「まぁ紫陽花がとっても綺麗…」

紅珠の視線を追うと見事な紫陽花が咲いていた。美しさの象徴である花弁をたわわに実らせ、その重みに揺れている。

「ステキ。こちらも飾りましょう」

いっぱいになった花籠を手に、四阿へと移動する。ふたりが到着するとすでに茶席は用意されていた。夕鈴は満足気に頷くと疲れた体をそっと休める。

今日の散歩は本格的であった。それというのも魅惑的な花々が行く手を塞いで、寄り道しすぎたせいだ。
しかも紅珠と一緒であったため、話す話題は尽きない。ついつい話に夢中になりすぎた結果、高かった日も落ち、染める世界を夕刻に変えていた。

「今日はお付き合いいただいて、ありがとう」

「とっても楽しかったですわ…良い花摘みになりましたわね」

傍らの花籠には色とりどりの花々。それを見て、紅珠は美しく笑った。

「後宮に飾られるのでしょうか?」

「えぇ、陛下のお部屋や政務室にも。心が癒されるわ」

「まぁ、お妃さまは本当にお優しいですわー。優しいだけではなく強く勇気があります。行く手を阻む草木に躊躇せず進むご様子、尊敬いたしました!」

興奮気味に目を輝かせて紅珠は言う。

「あ、ありがとう。嬉しいわ…」

どこから見ても完璧な美顔が輝き、夕鈴は眩しさに目を細めた。

談笑するふたりの声に混ざるように、遠くから鳥の鳴き声が聞こえたような気がした。

軽やかな歌声にそっと耳を澄ます。

お茶を手に心癒すメロディを聞きしれていたとき、ふいに紅珠が、あっ…と声を上げた。

「?」

「わたくし、すっかり忘れておりました」

聞き返す間を与えず、こそこそと侍女と話す紅珠。侍女は音も無く立ち去ったかと思えば、しばらくの後大きな荷物と共に帰って来た。

「…?それはなんです?」

「ふふふふ…」

魅惑的に笑う紅珠。侍女が荷物を横たえたのを確認して、包みをほどいた。

中から出てきた大きな鳥を見て、言葉を飲んだ。

「!?これは…」

何…?
大きなクチバシに、色鮮やかな体毛。つぶらな瞳に似合わず大きな羽を悠々広げる様子に、目を奪われる。

「オウムと申します」

「オウム…?」

「南の国原産の鳥です、可愛らしいでしょう」

「初めて見たわ…とても綺麗ね」

稀有な姿を凝視する。オウムは鳥カゴの中で静かにくつろいでいた。夕鈴が覗き込み目が合うと、オウムは鳴き声を上げた。

「この声…さっきの…」

耳に流れた音色を思い出し、笑みが零れた。さきほどの鳴き声の主は、どうやらこの子だったようだ。

「今日はぜひお妃さまにご覧いただきたくて…叔母の家から連れて参りました。実はこの鳥、言葉を話します」

「え!!」

夕鈴の驚く顔を満足気に眺めてから、紅珠はオウムに話しかける。

するとカゴの鳥は、紅珠の言葉を繰り返した。

「まぁスゴイ!」

なんて賢い子…感嘆のため息を漏らす。

「他にも話せるの?」

「もちろん!」

得意気に頷いて、紅珠はどんどん話しかけた。オウムは時折休憩を挟みながらも、言葉を話し、歌を披露してくれた。素晴らしい芸に、ただただ感心するばかりの夕鈴。こんな珍しい動物を鑑賞できるのも王宮ならでは。臨時花嫁であることを感謝しながら、紅珠にお礼を述べる。


「素晴らしい鳥ね。陛下にも、見せてあげたいくらい…」

「まぁ!両案です。ぜひご覧いただきたいですわ。しばらく預けて参ります」

「え?でも…」

確か叔母さんの家から借り受けた鳥ではなかったか…会話を思い出し尋ねると、紅珠はほがらかに頭を振った。

「叔母にはわたくしから申します。叔母の家には同じ鳥があと十羽ほどおりますので、気にいたしませんでしょう」

飼育数を聞いて驚く。
これほど珍しい異国の鳥を何羽も飼っているなんて…よほどの資産家か権力者か。

あらためて氾家の繁栄ぶりを見て、夕鈴はため息を漏らした。












「夕鈴…それ何?」

厚くしっかりとした布で覆われたカゴを見て、陛下が尋ねる。

「これはですねー、なんだと思います?」

魅惑的に微笑んで、夕鈴は大げさにカゴに近付いた。

紅珠から預かったオウムは妃の部屋に運ばれていた。異国の珍しい鳥、目も覚める鮮やかなオウムを侍女たちも気に入ってくれた。陛下もきっと…期待を込めて微笑む。


「なんだろうね。そんな可愛い顔して、どうしたの?」

髪に触れ、口付けを落とす陛下。
期待に反して、陛下はカゴには興味を持たず夕鈴ばかり構ってくるので、慌てて布を解いた。

現れた艶やかな姿を見て、陛下は目を見開いた。そんな彼の様子を満足気に眺める夕鈴。





「ふうん。南の鳥ね…。どうりで羽が鮮やかで綺麗だ。あちらの動植物は皆一様に美しい…」

「でしょう?」

嬉しそうに答える夕鈴。

オウムについて説明を終えたのち、美しいオウムと陛下の反応を見比べて、何度も頷いていた。

「驚くのはまだ早いですよ、陛下。実はこの鳥…話せます」

「なるほどね、想像通りだ…」

陛下はたいして驚きもせずひとり納得すると、立ち上がりオウムの真正面に向かった。

「?」

思いっきり息を吸い込む姿に、疑問を浮かべた矢先…。

「夕鈴、可愛い!」

陛下がオウムに向かって大声を上げた。

「!?」

「夕鈴、可愛い!夕鈴、可愛い!」

「ちょっと!」

突然何言い出すんだ、何を。
慌てて陛下とオウムの間に割って入る。

「陛下!!!冗談はやめてください!」

「邪魔しないで、夕鈴…」

「邪魔しますよ、一体何を…」

鳥相手まで、仲良し夫婦演技をする必要はないはずである。夕鈴が嫌がるのも構わず、陛下は叫び続けた。

「夕鈴ー可愛い可愛い!!」

「わーわーわーわーやめてくださいって!!」

陛下以上に大声を出す。

「なんなんですか!」

「これで…僕が居ない間も、君に愛を囁ける」

「はい?」

意味分からん。恥ずかしい行為を咎めようとしたその時。


「夕鈴、カワイイ!」

軽やかに美声を披露するオウム。

平手で喜ぶ陛下を見て、夕鈴はただ呆然と立ちつくすしかなかった。















妃の部屋。
風通しが良く木漏れ日差し込む一画は、オウムの定位置になっていた。

朝摘みしたばかりの花をエサとして与えながら、夕鈴はオウムに話しかけていた。

オウムは、色とりどりの花の色全て体内に取り込んだかのように、日に日に美しく鮮やかになって行くようだった。

紅珠から預かった日から、言葉を覚えさせたくて毎日毎回話かけているが、なかなか上手くいかない。
不覚にも、陛下が一回で覚えさせたあの時の記憶を辿りながら、同じように話かけているが、やはり難しいようだ。


「初めまして、私はオウムです」

「今日はお天気が良いですね」

飽きずに話しかける。

ちょっと高度な単語は、難しいのかな。




「随分可愛がってるじゃん」

突如降ってきた明るい声音にぎょっとする。オウムが話したのかと驚いたが、浩大であった。
ここは警備厳重な後宮。しかも狼陛下の寵妃の部屋はより厳重に警護されている。どこからともなく颯爽と現れる隠密に、訝し気な視線を送る。

気配、感じなかったわよ。

夕鈴の睨みなど気にも止めず、浩大はカゴのオウムを興味深く眺めた。

オウムは微動だにせず、どっしり構えている。

「おもしれー」

ひょい…浩大は妃にと用意された砂糖菓子を器から取ると、オウムのクチバシ近くに掲げて見せる。

「なっ!!ダメよ」

夕鈴が制するより前にオウムは食べてしまい、むっと口を尖らせた。

「お妃ちゃん、似てるー」

「似てないわよ!」

と怒る夕鈴。すっかり砂糖菓子を食べ終えたオウムが言葉を上げた。

「オイシイ!オイシイ!」

「しゃべるんだ!もっとしゃべって」

再度砂糖菓子を与えようとする浩大の手を叩く。

「体に悪いから」

「ちぇー母親かよ」

抗議する浩大を軽く睨むと、肩をすくめて、オウムに向き直る。

浩大は異国の鳥が珍しいようで、何か一生懸命話しかけている。少し前の自分を見ているようだ…夕鈴は気恥ずかしくなって、エサを調達しに行くのを口実に、庭へと降り立った。

適当に花を摘み戻って来ると、そこにはもう浩大の姿はなく。

ぽつん…ひとり残されるオウムを見て、ため息が漏れる。

神出鬼没な隠密。
つくづく、身勝手で自由奔放な性格だわ。

隠密という謎の存在に彼は適任だと、改めて感じる夕鈴だった。














午後の日差しに微睡んでいた頃。鳥の美しい鳴き声が耳に届き、夕鈴ははっと目を覚ました。卓に腰掛け書物を読んでいたのだが、少しうとうとして眠っていたようだ。

オウムが軽やかに唄っている。傍らに写る黒い陰。


「陛下…?」

「ごめん、起こしちゃった?」

来訪に気づかなかった非礼を詫びると、気にしないで…と優しく笑う陛下。

「君の代わりにオウムに相手してもらってたから大丈夫だよ」

そういえば唄声が響いていた。目覚める前の記憶が蘇る。寝起きではっきりしない意識の中でも、素晴らしい唄声だと感じたように思う。

「夢の中にも、届いていました…」

眠い目をこすりながら夕鈴は言う。

陛下は微笑むと、夕鈴が座る隣に腰掛けた。この位置なら、ふたりでオウムを眺めることができる。


「何、話してたんですか?」

「うん。新しい言葉」

「なんでしょうか?」

「……たいしたことじゃないよ」

わざと顔を背けた気がして、夕鈴は疑問を浮かべる。

陛下には前科がある。
ここで見過ごすわけにはいかない。

なんだか嫌な予感がした夕鈴は、追求の手を緩めることなく、再度質問した。

「何を覚えさせていたのでしょう?」

「それほど聞きたいの…?僕の言葉…」

しつこい夕鈴に対し、陛下は目を細めて顔をぐっと寄せてきた。息もかかりそうな距離に、自然と身を引く夕鈴。

「へ、陛下のお言葉じゃなくて…」

表情は、はっきりと狼の顔が現れていた。
それでも心だけは負けじと、繰り返し尋ねる。

「また変なこと、教えられてはいないでしょうね…。は、恥ずかしいのでやめてください」

思い出し赤面する。
このままじゃ、恥ずかし過ぎて氾家にお返しできない。
紅珠のかっこうのネタになるのは間違いない。


「変なこと?例えばどんな?」

逆に尋ねられ、夕鈴は閉口する。
それを私に言わせようとしているのだから、本当にたちが悪いと思う。


ふんっとそっぽを向いて、夕鈴は立ち上がる。
お茶淹れて参ります…と、陛下の問いかけを無視した。

鳥カゴの横を通り過ぎようとしたその時…。

「夕鈴、ダイスキ!夕鈴、ダイスキ!」

「なっ!!?」

羽をバタつかせ鳴くオウム。

振り返って確認すると、うっすら笑う陛下が伺えた。
夕鈴の怒り顔を見て慌てて硬い表情に戻していたが、今更遅い。


「ど、どういうことですか!?」

真っ赤な顔で迫る夕鈴に、陛下はごめんね…と舌を出した。














「夕鈴…そんな怒らないでよ」

「………」

絶対許してやるものか、夕鈴は頑なに口を閉ざす間も、オウムはダイスキ!!と鳴いていた。

もー信じられない。

体ごと陛下から背けて、拒絶の態度を取る。

「せっかく話す鳥なんだから、いろいろ教えたくて…」

私だって覚えさせようとしたが、ことごとく失敗した。接している時間が短いのに、成功させている事実が余計に気持ちを苛立たせ、素直に聞き入れられない。

「それに、君と逢えない時間が辛くて…ついついオウムに気持ちを託してしまった」

大げさな言い訳に、頭が痛くなってきた。陛下の言葉はなぜにこうも、芝居かかっているのだろうか。

「抑えきれず、僕の気持ちを代弁させただけだよ、夕鈴。許して欲しい…」

「もう!分かりましたから!」

自然に繋ごうとしていた手を、振りほどく。

言い訳にかこつけて、甘く愛を囁き演技を混ぜる。陛下お得意の展開に流されてはいけない。

陛下はしゅんと耳をたたんで、夕鈴を見つめている。

「………」

悔しいが…仕方ない。
どこまでも子犬陛下に甘い自らを反省しつつ、今日も先に夕鈴から折れた。


「許してくれるの?」

ため息と共に頷く。パタパタ…と、大型犬が尻尾を振っていた。

「ただし、教えてください」

「?」

「オウムに言葉を覚えさせる方法…」

恥を忍んで、成功するコツを尋ねた。
夕鈴の問いかけに、陛下は手をぽんと叩いて、袂をごそごそと探り出した。

「これ」

見せられた手のひらには砂糖菓子がひとつ。


「………砂糖菓子?」

これって。

「大好物みたいだよ」

にっこり微笑む陛下。
まったく悪気のない笑顔に一瞬忘れかけたが、砂糖菓子に再び視線を戻した夕鈴の脳裏には、神出鬼没な隠密の姿が映る。

え、まさか…。

あいつもグル…なの?

いつの間にかふたりで結託していた事実を知った夕鈴。はっと何かに気付き、キョロキョロと辺りを見渡す。

この様子を見てほくそ笑んでいるのではないかと疑心暗鬼になる。


「案ずるな…今は近くに居ない」

夕鈴の心の内を見通す陛下は、夕鈴の頬に手を添えて小さく囁いた。

「君と二人きりの時間を邪魔だてするほど、奴も愚かではない…」

すっと目を細めて、陛下は自嘲的な微笑で囁く。

「私がどれほど君に溺れているか…分かっていたら、とても盗み見など出来るわけないな…」

冷酷非情な狼陛下の顔を垣間見たようで…夕鈴は喉の奥をひくりと鳴らした。

吸い込まれそうな瞳と恐ろしく端正な美顔。決して怒っているわけではないのに、引け腰になるのは夕鈴だけではないはずである。

「夕鈴…」

「は、はい!」

「邪魔だてする者は居ない…と言ったが…」

「はい…」

言ったような…そうでないような。

「なぜ離れる?」

「え?」

無意識に離れようてしていた。

「せっかく二人きりの時間なのに、君は離れるばかりだ」

「そ、そのような…」

じりじり迫る狼陛下。夕鈴は今にも逃げ出したい気持ちを抑え、真っ赤な顔で耐える。

「夕鈴…私は君と一秒でも離れたくないというのに」

「……っ」

も、もう限界…。



「夕鈴!ダイスキダイスキ!!」

突然の鳴き声にびくりと固まる。

空気を読めないオウムちゃん…夕鈴は引きつった笑いを浮かべる。

陛下は乱暴に砂糖菓子を投げ入れ、黙れ…と呟いた。


「陛下が覚えさせのでしょーが!」

思わず突っ込みを入れた夕鈴に、陛下は声を出して笑った。







二次小説第70弾完了
たくさん書かせていただきました、ここまで読んでくださった皆様に感謝です☆

今回は紅珠に浩大に、普段あまり登場させないキャラでかためてみました。原作の夕鈴と紅珠のやり取り、陛下と浩大のやり取りが面白くて大好きです!

夕鈴!ダイスキダイスキ!(笑)


18:16  |  日常編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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