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2014.07.21 (Mon)

空に憧れて

空に憧れて


久しぶりの陛下単独目線。
夕鈴大暴れです(笑)

ではどうぞ。


【More・・・】

「護身術を習いたい?」

僕は夕鈴の突然の申し出に驚く。
意外というか、想像の範囲を越えたお願いに、しばらく空いた口が塞がらなかった。

「君に必要とは…」

「必要です!」

僕の言葉をかき消すかのように声を上げる夕鈴。実に真剣な表情で訴え続けている。

特に冗談ではないことを確認した僕は、ため息と共に理由を尋ねてみた。















後宮の裏庭。
今日も誰よりも早く妃の姿を見つけた僕は、気配を殺して夕鈴に近付いた。
爽やかな風を切って歩く僕。向かう相手が夕鈴であるから、歩きはとても軽快だ。
だんだんと距離が近付くにつれ、夕鈴がひとりではないことを知る。

「………」

警戒色を濃くし、相手を確認する。

侍女も女官も下げてしまって、夕鈴が逢う人物は、僕の隠密浩大であった。


「なぜあいつと一緒に居るんだ…」

僕は不機嫌顔を固める。

奴の気配察知はずば抜けている。気を抜かぬように、忍び足でふたりに近付いた。




「だからー、茶化さないでよ!」

「だってお妃ちゃん、健気だと思って」

「そんなことない」

夕鈴は何故か赤い顔で答える。

「健気だよー。でも、陛下の許可なしではダメだよね…」

「許可がいるの??」

「オレも命が惜しいからねーははっ」

命が惜しい者の発言とは思えぬ明るい口調で浩大は答える。

話の内容が読めず、僕は顔をしかめた。
僕に許可を取らなければならないことを浩大にお願いしているのか…ふと寂しい気持ちがよぎり、気を抜いてしまった。途端、浩大がピクリと反応し、目線を周囲に向けた。

しまった、バレたか…。

相変わらず察しのいい奴だ。

僕は再度隠すことなく、草木をかき分けふたりの前に出た。

「陛下!」

慌てて礼をとる可愛い夕鈴に近付くと、いつものように手触りの良い髪を一筋手に取った。

「このようなところで逢えるとは幸運だな…」

妃限定の柔らかい笑顔を浮かべる。

「幸運だねーお妃ちゃん」

夕鈴に代わり答える浩大。
軽く睨むと、ごめーんと、およそ反省していない態度で謝った。

一体何を話していたのか…追求しようと向き直ったところで、浩大は声を上げた。


「あとは直接陛下に言いなよ、お妃ちゃん」

言い捨てながら、一瞬のうちに姿を消す。

逃げたか。

僕の不機嫌さを感じ取って早々に退散したのは明白。理知的な姿にため息が漏れるが、今は夕鈴との会話が気になる。

後に残った夕鈴の弱り切った表情を見て、ますます疑問を浮かべる僕であった。


ここで冒頭に戻る。




護身術が必要な理由を聞くと、夕鈴は途端しどろもどろになった。赤い顔して目を泳がせ、所在なげに両手を組んだり離したりしている。

「??理由を言ってくれないと分からないよ。君には護衛兵が居るし、護身術なんて必要ないと思うけど…」

怪我でもしたら大変だ。見かけに寄らず無理をする性格だし…、夕鈴が心配な僕にはどうしても前向きになれない。

「私じゃなくて…」

夕鈴はやっと顔を上げたかと思うと、僕と目が合いあからさまに顔を背けた。

……さすがにショックを感じるのは、今に始まったことではない。

深くため息をついた僕は、夕鈴を優しく抱き締めた。互いの鼓動が耳に届くことを確認した僕は、ゆっくり耳元で語りかける。

「君には出来るだけ危険が及ばないように守るよ、不安に感じることなんてないんだ」

君に危害を及ぼそうとする者には、死ぬほど後悔させてあげる。

「………」

「君がどうしても不安なら、護衛を増やすことも出来る、だから…」

顎に手を添え、無理やり目線を合わせる。

「いつも通り花の笑顔を見せて欲しい…」

夕鈴に最上級の笑顔で微笑むと、かぁーっと赤面兎が現れた。

「わ、私のっ、私の護衛じゃないんです!」

「君の護衛ではない?では、一体誰の護衛か…」

君が気にかける者に浅ましい嫉妬心が芽生え、僕は表情を曇らせた。固めた笑顔はもはや、見る影もない。

不穏な空気を感じ取った夕鈴は慌てて頭を振る。

「ち、違います!私は、陛下を…陛下を守りたい…」

「え!?僕…?」

叫んだ途端、夕鈴はますます顔を赤くして目を伏せた。
小さな体を寄せて胸に顔を埋めて、私だって役に立ちたい…と呟いた。


「夕鈴…」

あぁ、君はなんて…。


僕は手のひらで熱くなる顔を覆った。

不意打ち兎は、凶悪だ。

恥ずかしいのかいたたまれないのか…相変わらず顔を伏せて固まる夕鈴を、僕は柔らかく抱き締め直した。

奴が健気と言っていたのはこのことか…ふたりの会話の断片を思い出しながら、僕はほっと息を吐いた。














夕鈴の要望を伝えた僕は、すんなり受け入れる側近に渋顔を向けた。

「いいのか…」

「けっこうです。護衛を増やすより効率的です。士官の先生に、時間の合間にお相手してもらえれば、お金の節約にもなります」

気持ち悪い笑顔で承諾する側近。やはり金か…金の亡者のごとし微笑を浮かべ、次々仕事を振ってくる側近。

僕は無言で差し出された書簡を手に取る。
政務室には紙を繰る音だけが、こだまのように響き渡り、気が滅入りそうだった。

唯一の癒しの元である夕鈴と逢う時間が調整出来れば、僕の都合だけで逢いに行けるものを…。
これからは護身術の練習やら何やらでその時間も削られそうだな。

ただでさえ僕はまだ認めていないが、掃除婦バイトなどに勤しんでいるというのに。

今にも増して活発に動き回る妃の姿が安易に想像できる。

李順が反対することが最後の望みであったが、仕方ない。

僕は指南役を派遣することに決めた。













いつもは静寂満ちるこの部屋に、似つかわしい怒声が響く。

広間の一画に特設的に設けられた練習場所には、息を切らす夕鈴の姿があった。

「たぁーー!!」

「お妃さま!お見事!」

なぎ倒された練習相手が苦悶の表情で腰をさすっている。

「えい!」

すかさず急所に打ち込むふりをして、夕鈴は身を翻した。相手が参った!と手を上げたところで練習は終了した。


「いい調子だ…」

躍動する夕鈴を鑑賞でき、大満足な僕は笑顔で声を掛けた。

想像以上に俊敏。練習相手も最初こそ手加減していたが、後半は息も切れ切れ、夕鈴の一打を避けるのに必死さが見てとれた。

「さすがは我が妃」

甘く微笑み、肩を引き寄せる。

「君は可愛いだけでなく、強いとは…ますます惚れ直してしまうな」

耳元で囁くと、夕鈴の身が震える。
遠慮がちに、ありがとうございます…と小さく答えていた。

軽く左手を上げると、拝礼する指南役と練習相手の若い武官を下げた。

ふたりの気配が消えた途端にため息が漏れる。

「?」

「はぁ…、指南役は許したとして、あの練習相手はダメだ」

「ダメ?良い相手でした、しっかり基礎が学べたと思います」

「君に触れすぎでしょ」

憮然と答えると、ぽかんと口を開ける夕鈴の気の抜けた顔が覗けた。
思わず噴き出す僕に、憤慨する夕鈴。

「護身術を習っているので触れて当然でしょう」

「………」

君の言うことは何ひとつ間違っていないが、腹立たしさは拭えない。いまいち納得できない僕は、練習中止を訴えた。

「い・や・ですよ。せっかくなんで、続けます」

「だが…」

「陛下をお守りするためです」

「う…」

ぐっと息を飲む。これ以上は反論できそうにない。

計算高い兎を見つめると、どこまでも純粋無垢な瞳で僕を見返していた。
その無邪気な態度が時にカチンとくることがある。まさに今がその時であった。


「では…僕が練習相手になるよ」

「え!陛下が…ですか?」

「練習相手に不足はあるまい」

「あ、ありませんが……むしろ、ありあまるぐらいです」

一瞬夕鈴の顔が引きつるが、僕は気づかないふりをする。

「いい案だよね」

「はぁ…」

自らの良案を大げさに褒めると、気が変わらないうちに夕鈴の手を取る。

「遠慮なくかかっておいで」

「で、でも…」

「ほらほら」

なかなか攻撃してこない夕鈴に、我慢できずこちらから襲ってみる。

夕鈴の背後に回り、両腕で抱き締めた。

「きゃっ」

「背後から襲われたらどうするの?」

「あっ……」

夕鈴は僕の手を素早く掴んで、くるりと手を返そうとするが、僕は簡単に決め手を解いた。

「そんなんじゃダメだよ、夕鈴」

僕はすかさず、今度は前方から抱き締めた。ぎゅーっと力を込めて。

「っ……!」

「どうするの?夕鈴…」

あぁ、なんて楽しい。
僕は込み上がる笑いを抑えるのに苦労した。


「こ、攻撃してください!陛下」

「してるよ?」

「攻撃じゃないです!」

赤い顔で怒る夕鈴。
バタバタ暴れる夕鈴を素知らぬ顔して抑え込んだ。

「ふうん、まだ足りないの?もっと攻撃しろとは、案外大胆だな」

「は?」

頬に手を寄せ間近で目線を合わせる。夕鈴は真っ赤に膨れた顔で、きいっと睨みつけていた。可愛すぎる兎の姿に、顔が緩む。

「そんな顔されたら…ひとたまりもないな」

「嫌味ですか!?」

「ははは」

夕鈴の可愛い突っ込みに、僕は声を上げて笑った。













遅くに妃の部屋を訪れた僕。

「ただいま、夕鈴」

僕は拝礼する彼女に声を掛けつつ、いつもの定位置である長椅子に腰掛けた。
いつもならパタパタ駆け寄ってきて、花の笑顔で出迎える夕鈴であったが、この夜は違っていた。昼間はあれほどご機嫌だったのに…逢ってすぐに落ち込み具合が見てとれるほど、夕鈴は意気消沈していた。

「どうかした?」

心配になり身を乗り出して尋ねる僕。

まさか昼間の一件、怒っているのか…と案じたが、憂いる元は僕ではなかった。

夕鈴の話によると、護身術の練習相手が居ないらしい。

「昼間の彼は?腰をさすってた…」

夕鈴は頭を振って、断られました…と答えた。

「………」

納得だ、彼の判断は正しい。
若い武官に我が妃の相手は荷が重いだろう。しかもそこらへんの妃とは一味も二味も違う。取扱注意だ。

だが、僕の口からそれは絶対に言えない。

「誰も相手してくれなくて…指南役の先生もなぜか嫌がるんです」

「あーー、そっか…」

指南役には、夕鈴の相手をさせる前に、いろいろ小言を言ったので仕方ない。
夕鈴を嫌がるどうこうではなく、僕自身に恐怖を感じているだけに違いない。

愛しい妃に、くれぐれも怪我を負わすことがないように…と、念押しした記憶が蘇る。


「このままじゃ、練習になりません」

グスン…赤い目の兎が切なく僕を見る。ふいに心が痛むのは、僕が夕鈴にまだまだ甘い証拠だ。

護身術などやめてしまえ、と言えればどんなに楽か。

「夕鈴…そんな顔しないで」

悲しむ夕鈴をなんとかしたくて、僕は手を伸ばす。柔らかい頬を両手で挟んだ。

「君には笑顔が似合うよ」

「………」

「僕の前では笑って欲しいな…」

「………」

一向に晴れない夕鈴を見て、僕は咄嗟に口を出した。


「そうだ!いい相手がいるよ!」

そんな相手居ないし、思い当たりもしないが、仕方ない。

「え!?本当ですか?」

顔を上げた夕鈴。僕は懸命に笑顔で頷く。

「あぁ、君にピッタリな相手だよ…明日、練習場所に遣わそう。だから…」

もう落ち込むな…夕鈴を見つめる。

これ以上は見ていられない。


「は、はい!ありがとうございます」

やっと笑顔を浮かべた夕鈴。

僕はほっと安堵すると、内心の思いとは裏腹に微笑み返した。















迎えた次の日。

広い部屋では、指南役が困惑顔で息を飲んでいた。
それにも増して困惑する夕鈴に対峙しながら、僕は懸命に言い訳を考えていた。


「ピッタリの方、いらっしゃるって…言いましたよね?」

「言ったね…」

あれ以上、君の落ち込む姿なんて見たくなかったから。

どこにいらっしゃるのでしょう…とキョロキョロ見渡す夕鈴に、居ないことを告げる。

途端、落胆する夕鈴。

「………」

だって、しょうがないじゃないか…。君の練習相手、命じて探せば簡単に見つかるが、やっぱり嫌だから。他の男と仲良く組み合う様子など、とても冷静に見てられない。

なんて言うと、鬼のように怒って家出しそうだから黙っていることにした。

「君があまりに落ち込むから咄嗟についた嘘だ…すまない」

僕は夕鈴のそばに近づくと、落ち込む夕鈴を慰めた。

僕の正直な謝罪を、疑うことなく受け入れる夕鈴の様子にほっと息を吐く。

とりあえず良かった。

路傍の石のごとく微動だにせず佇んでいた指南役が、ここでやっと口を開いた。

「陛下のお優しさゆえの嘘ですよ…」

「………」

…居たのか、指南役。

これ以上夫婦のいざこざに付き合わすのは酷だと判断した僕は、指南役を場から外させた。



ふたりきりになった部屋。
なぜか流れる沈黙がいたたまれない。


夕鈴はいまだ落ち込んでいるようだった。よほど練習相手を渇望しているらしい。

「夕鈴…」

「あっごめんなさい。別に陛下が悪いわけではないので、気にしないでください」

空元気に答えるさまが痛々しい。

気にしないわけにはいかないだろう。

夕鈴にはいつも元気で笑って欲しい。でも、僕以下の男と触れさせたくはない。

僕の脳裏に浮かぶこと、それは。


「そうか…!」

手を叩く僕に、不思議そうに目を向ける夕鈴。


「僕だよ、夕鈴」

「??」

「僕が居るよ」

「あの…?」

「君の練習相手だよ、これからは僕が勤めよう」

「……冗談ですよね?」

「本気だよー」

夕鈴の乾いた笑いをすかさず跳ね返す僕。

なぜ気づかなかったのか。今まで気づかなかったことに激しく後悔しつつ、動揺する夕鈴に近づく。

「ダ、ダメです…練習は一回きりではないんですよ?多忙な陛下のお手を煩わすわけには…」

「気にするな」


僕は間髪入れず夕鈴の手を取り、妃限定の極甘の笑顔を向ける。





「これからは、いつでも襲ってあげるね」







二次小説第71弾
やはり夕鈴は活発なお妃さまですねー元気すぎて、陛下も周囲もひやひやが絶えませんね。でもそんなところが好き過ぎて堪らないポイントではないかなぁ…と陛下の気持ちを妄想しながら書いた作品です☆
お気に入りのセリフはもちろん、「いつでも襲ってあげるね」です

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!


11:42  |  イベント編(王宮)  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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