FC2ブログ

07月≪ 2018年08月 ≫09月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告  |  EDIT  |  Top↑

2014.08.20 (Wed)

夢水晶 前編

夢水晶~夢恋抄より 前編

狼陛下の花嫁小説版「夢恋抄」より、ネタを拝借。
漫画よりも甘~い陛下がたっぷり堪能できて、満足でした。
まだ読んでいらっしゃらない方はネタバレですので、トップへ戻ってください。

ではどうぞ。


【More・・・】

ここは狼陛下の王宮。

彼唯一の寵妃は、本日も優美な足取りで回廊を進んでいた。

どこから見ても完璧なお妃さまを絶賛演技中。
このまま気を抜かず後宮の自室に戻れば、今日の仕事は終了だ。

今日は愛弟の青慎に手紙でも書こうか…などと気を抜いていた矢先、視界にふと何かが入り、夕鈴は足を止めた。

「………」

「いかがなさいました?お妃さま」

不審に思った侍女が、後ろから覗き込んで来る。

「なんでしょうか?あれは…」

「なんでしょうね…」

侍女と一緒になって、回廊の真ん中に転がる物体に目を向ける。

「…ん?」

見覚えのある形状。
遠目にも分かる澄んだ色。

日差しを反射しキラキラ輝くそれが、回廊の真ん中で、はっきりと存在感を出していた。

「………」

まさか…と思い目をこする夕鈴。

だが再度見つめた景色は、変わっているはずもなく、また元通り物体に目を止めることになった。

あれって、、、まさかね。


一歩近づき確認する夕鈴。
だがその姿は…間違いがなかった。


「異物ですね…兵を呼んで参りましょう」

駆け出そうとする侍女を慌てて制す。

「大丈夫…危険物ではありませんよ」

盛大にため息をつきたいのをぐっと堪え、夕鈴は肩を落とした。
















夢水晶。
また…手にしてしまった。

偶然か必然か、回廊で見つけたこれが何であるか説明する夕鈴は、軽いデジャヴを感じていた。

記憶が正しければ…ってゆーか間違いなく、これを拾うのは二回目だ。


「下町で流行っているとおっしゃる水晶が、なぜ回廊に落ちていたのでしょう」

「さぁ…」

心当たりはあったが、侍女たちには伏せておいた。

「使ってみる?」

水晶を手に軽く笑いかける。
侍女が持って行ってくれたら、それはそれで助かる。

「まぁ、お妃さまを差し置いて、滅相もございません」

――差し置いてない。
などとは言えず、笑みを振りまき続けたが、侍女たちは各々断りを並べ、仕事に戻ってしまった。

正直、こんな怪しげなもの、使いたくないんだろうな…心の声は漏らさず、退席する彼女たちを笑顔で見送る夕鈴。

後に残ったのは、透き通ったガラス玉がひとつ。


夢水晶。

なんでも枕元に置いて眠れば、見たい夢が見られるのだとか。

効果は、身をもって実証済みだ。

使用直後はあまりの夢にトラウマになっていた。ようやく忘れかけていたのに…。


夕鈴は頭を抱える。

あんな大それた夢、私が見たい夢でもなんでもないわよー!!っと、声を大にして言えたら、少しはもやもやが晴れるだろうか。
水晶が見せた夢に翻弄され、悩ましく過ごした日々がまた訪れる気配に身震いする夕鈴。


「いや、使わなければいいのよ、夕鈴」

ぶんぶん、頭を振る。

「そう、そうよ…使う前に返してしまえばいいの」

夕鈴は拳を堅く握り締め、決意を固める。

そうと決まれば犯人探し。おおかた目星はついている。

「善は急げ、よ」

夕鈴は意気込みが薄れぬうちに、水晶を手に自室を後にした。


















「浩大ーーーー。ねぇー浩大。居ないの?」

やっぱり、返事はなかった。
夕鈴は回廊の端で、深いため息をついた。

後宮、立ち入り禁止区域。
隠密を呼ぶ夕鈴の声は、半刻前に比べ覇気がなくなっていた。

「もーどこ行っちゃったのかしら…」

いつも必要のないときもしょっちゅう現れるくせに、肝心なときには居ないなんて…詐欺だわ。
彼が狼陛下の隠密であることは隅に置いておいて、夕鈴は不満を漏らす。

困った…このまま収穫なしに帰るのは釈だし。かといって老師に相談したら、厄介なことになるのは目に見えている。

なにより、この水晶を持って帰りたくはなかった。

広い立ち入り禁止区域で、呆然と立ちすくむ夕鈴。


「浩大、どこにいるのよ…」

ガサガサ。
突然の背後からの物音に、ビクッと肩を竦める夕鈴。だが、すぐに期待を込めて振り返った。

「浩大!」

「………」

「………」

……え?

風に翻る漆黒の姿。

嘘……。

そう、今一番逢いたくない彼が立っていた。
鋭い視線と不敵な笑みをたたえて。













「で、何してるのかな?君は」

「………ちょっと所用です」

狼の視線に恐々しながら、夕鈴は答えた。
こんな答じゃ納得しないのは明らかであったが、言い訳を許さない雰囲気があった。


怒っている。

夕鈴が直感で悟ったこと。

顔はにこにこ笑顔で、口調も穏やか。だけど纏う空気が間違いなく狼だ。

外気まで凍らせてしまいそうな気配に、夕鈴は困惑する。


「何の所用?ここ、立ち入り禁止区域だよね」

「それは…」

老師を使おうかと思ったが、一段と怒りが増しそうなので黙っておく。早くもネタ切れ状態に、夕鈴は口どもる。


「しかも、君、さっきまで誰かを呼んでなかった?」

「!?」

い、いつから居たのか。
夕鈴しか知らない事実を知る彼に、恐怖が増す。

あれを…知られるのはマズい。

陛下が来た際に慌てて着物の袂に隠した水晶玉を、気付かれぬようにそっと奥へやる。


「夕鈴…沈黙は良くないな…」

ひやりと冷気が通った気がした。
返答に困るわずかな間に、狼がじりじりと距離を詰めて来た。

手を伸ばされ、避けるように後退する夕鈴。壁際まで追い詰められ行き場を失った夕鈴は、今度は横から逃げようと試みる。だが、陛下に手をつかれ、退路はすべて塞がれてしまった。

「………」

仕方なく、陛下を見上げる。


「君の夫は…君が思う以上に嫉妬深い。その小鳥のような声音で、呼んで良いのは私の名前だけだ」

「…っ」

出た、狼陛下。

耳近く届く悪魔のような美声に、夕鈴から小さな悲鳴が漏れる。

顔が近い近い近いーーーー!

陛下の声が、香りが鼻腔をくすぐり、夕鈴の心拍数が上がっていく。

このまま渾身の力で押しのけ逃げ出したいが、そんなことしたらきっと倍返しされる。
追っかけまわされ、腕の中に取り込まれ、甘い言葉漬けされて……もう社会復帰できないかも。

想像するだけで全身が震えた。


「愛しい我が妃…その澄んだ心に思って良いのは、この私だけだ」

「………」

赤い瞳が、夕鈴を捕らえる。

その視線で…溶かされてしまいそう。


「夕鈴…」

「はい…」

「良いな?」

こくり…クラクラする頭で、夕鈴はどうにか頷く。


あっさり、陥落してしまった。


やっぱり、狼陛下には一生勝てそうにない…。















「ふうん。君がその忌々しいものを持ってる理由は、分からないんだね」

「忌々しいって…陛下も、被害を受けられたのでしょうか?」

夕鈴は腕の中の水晶を覗きながら、尋ねた。

陛下がこれを見たとき、微妙な表情を浮かべていた。嫌そうなのかそうじゃないのか、正直よく分からない。

「も、ってことは…君はこれで被害を受けたの?確か…見たい夢を見させてくれるんじゃなかった?」

「!?」

しまった、失言した…と感じたが、今更取り消しできない。夕鈴は慎重に言葉を選ぶ。

「見たい夢のはずなんですけど、その、私にはとても大それた夢でして……しばらく衝撃を受けていたというか…」

嘘は言っていない。
だが、こんなにも鼓動が激しくなるのは陛下が近くにいるせいだ。夢の張本人が居ては、動揺が止められない。

陛下はしばらく疑わしそうに眺めていたが、そっか…、と納得した。

ほっと安堵したのもつかの間、新たな質問が飛んでくる。


「君の夢、僕は出てきた?」

「え!??」

思わず大声を上げてしまう。

「その反応…出てきたんだね」

にやり…陛下が口角を上げて笑う。

「君の夢の僕、実に興味深いね」

「………」

薄い唇が楽しそうに歪む様子に、夕鈴は嫌な予感がした。

こういう顔をするときは、危険だ。

陛下はいつの間にか間合いを詰めていて、自然に頬に触れている。
触れられたところから、電流が走ったかのように反応する身体。なんとなく恥ずかしくなって、赤面する夕鈴。


「夕鈴。君の夢の僕は、何て言っていたの?」

「いえ…あの…出てきたのには出てきたけど、一瞬で居なくなったので…何も」

「一瞬だけ?」

不満気に声を漏らす陛下。

夕鈴は激しい動作で頷いた。


「君の夫が、一瞬だけとは…面白くない」

陛下はむっと眉間にしわを刻む。

「君を前にして、何も言わずに去るとは…さらに面白くない」

はぁ…と間近で深いため息が聞こえる。息が首筋にかかり、夕鈴はぞくり…鳥肌を立てた。

いちいち顔が近いのよ、不必要に。
跳ねる鼓動に気付かれないように、夕鈴は平静を保つ。


「君の夫は、妃に首ったけなのにね…」

妖艶に微笑み、同意を求める陛下に無言を貫く。

無駄に誘惑しようとするから…こういうとき、返答に困ってしまう。

絶対楽しんでいるに違いないわ…。

夕鈴は堅く真一文字に口を閉ざしたまま、きっと睨みつける。


「夕鈴…ここは照れるべきでしょ」

陛下はクスクス笑うと、夕鈴の髪を一房指で掬って、唇に当てた。

いつもの妃を寵愛する仕草だ。

「我が妃は、初々しくて愛らしいな…」

腰を抱き寄せて一言。

「だが……」

「?」

「やはり、君の夢の僕は…気に入らないね」

「またその話ですか…夢ですので、気にしないでください」

夕鈴は首を振った。

「たかが夢か…されど夢」

陛下は何か考え込むと、おもむろに夕鈴の抱える水晶を取り上げた。
持ち上げ日差しにかざし、くるくると回している。


「試してみるか…」

「?」

「リベンジ」

「―――リ、リベンジ?」

ってどういう意味!?

「そう、もう一度…使ってくれるよね?夢水晶」

「い……」

「僕のために。ね、夕鈴?」


絶対いやぁぁ~~~~!!!!


夕鈴は心の内、絶叫した。






後編につづく。

20:17  |  祝☆「夢恋抄」発売記念  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://mike3aoi.blog134.fc2.com/tb.php/124-5a8f421f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | HOME | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。