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2014.08.20 (Wed)

夢水晶 後編

夢水晶~夢恋抄より 後編

前編のつづきです。
後編も長いですが、休憩取りつつ読んでください☆



【More・・・】


激しい雨音が増し、冷たさが身を凍えさせる。

雨と涙でよく見えないけれど、彼は困ったように少し微笑んでいた。

「―――――もう限界だったんだ。好きで、愛しすぎて…」

その言葉は心の奥底、じんわり広がっていく。

「これ以上一緒に居たら、壊してしまうくらいに。だから…私は君を解放した。諦める決意をし、君から離れた……なのに」

彼が切なく眉根を寄せる。

「……君はそれを、無にするのか?」

涙が溢れる。

射抜くような視線は情愛の激しさだけを纏っている。

だけど私も微笑み、言葉を紡ぐ。

「はい。私はあなたになら傷つけられてもいい。深く、傷跡が残るような愛でも、それが私に対する愛ならば怖くはありません…」

「馬鹿な兎だ…。狼に喰われることを望むか……」

「望みます」

「優しくはできない。ここまで押し殺してきた気持ちが今にも私を狼に変えるだろう…」

「………」

「君を壊してしまうかもしれないが、いいのか?」

「はい」

「私の愛を君に刻みつけて、狂うほど流し込んでやる。私にどれだけ愛されているか、知るといい」

彼の熱い吐息がかかり、雨で冷たくなった身体を熱くする。

「嫌だと泣き叫んでも絶対にもう君を離さない。愛することを止めないからな。覚悟しろ…」

そして彼は私の首筋に口付けた。

「黎翔さま…あ、待って…ください。ここでは…」

「待てない。もう待つのは嫌だ」

「嫌……せめて、部屋に…」

雨が激しくなり声がかき消される。

黎翔さまは止まらず、私を愛し―――そして…。

「イ、イヤ……待…って、ここじゃあ……嫌なんです……だから」

「待ってってばァァーーーー!」



ここで目覚める。


夕鈴が蹴り上げた布団が、頭上に降り落ちて来て、さっきの夢が現実でないことを知る。



これが……夢水晶が見せた、夢の全貌であった。














寵妃が国王から解放されてから、数刻後、王宮は、周囲が茜色に染まる夕刻を迎えていた。

夕鈴は自室でひとり、赤い顔をして水晶と睨めっこ。
その状態のまましばらく固まっていた。

時折何か思い出し悶絶、その後何かを思い出し赤面、そして今度は真っ青になり…最後にまた悶絶。

延々、一人芝居が続く。

夕鈴は再度水晶を眺めて、複雑かつ困惑顔を浮かべて卓に突っ伏した。

「………」

夢水晶が見せた壮絶な夢、確認する意味でもひとつひとつ思い出してはみたが……やはりダメだ。

紅珠の創作小説にも負けず劣らずの大ストーリー。


あれは……絶対ダメ。


不純すぎて、陛下に顔向け出来ないし、火がついたかのように心がぎゅっと熱く鷲掴みされたかのようで――。

はぁ…また見るかもしれないなんて、耐え切れる自信がないわ。

ため息をすべて吐き終わったとき、突然頭上から降る声に、夕鈴は身を起こした。


「なーんか、落ち込んでない?」

「浩大!!!」

夕鈴は大声で叫ぶと、椅子が転げるほど激しい仕草で立ち上がった。そのまま目を三角にして、つかつかと靴底を鳴らして近付く。

まずい雰囲気を察したのか、浩大は顔を窓枠から引っ込めた。
だが、間一髪、すんでのところで隠密の長い着物の紐を掴んで、引きずり降ろした。


「なんだよ、お妃ちゃん…」

「なんだよじゃないわよー!今までどこに……。そんなことよりあんたに聞きたいことあるのよ」

「水晶のこと?」

「!!そう!やっぱり知ってたのね、どういうつもり?」

話が分かる奴だ…などと感心してやるつもりはない。夕鈴は怒り顏で迫る。

「お妃ちゃん、なんで怒ってるのかな?」

「怒るわよ!あんなもの用意して…しかも、全然現れないから陛下に見つかっちゃったじゃない、どうしてくれるのよ…」

ぶつぶつぶつ…文句が止まらない。

「オレじゃないよー」

「は?」

「だから、水晶用意したのオレじゃないよー」

「浩大じゃないの!?」

じゃあ一体誰が…。

「顔の怖いおやっさんからの差し入れかな」

浩大はケラケラ笑った。


「顔の怖い…?」

王宮で、夕鈴の思いつく顔の怖い人といえば三人居る。
ひとりは怖い怖いバイト上司、李順。もうひとりは不吉な予言連発の、周宰相。最後は妃を目の敵にしている、柳大臣。
おやっさんと言うには、李順は除外されるだろう。残りの二人の内、妃に差し入れをくれそうなのは……。


「周宰相?」

夕鈴の問いかけに、浩大はピンポーン!と声を上げた。

「意外と考えが乙女なのね…あのオッサン」

面白そうに笑う浩大に反して、夕鈴は複雑な表情で首を捻る。

「なんで周宰相が水晶を私に?」

「さぁー自分で聞いてみなよ」

「教えてよ。知ってるんでしょ、どうせ」

「知ってても教えないよーん」

「なっ…」

浩大の台詞に、かちんとなる夕鈴。

浩大は慌てて軽業を披露し夕鈴から離れると、そのまま颯爽と立ち去ってしまった。


「教えなさいよーーー!!!」

夕鈴の叫び声は、広い広い後宮の一画で誰にも気付かれずに響いていた。
















「ね、夕鈴…今夜こそ、いいよね?」

間近で聞こえる甘い囁きに、夕鈴はきゅっと身を堅くした。

「ダダダ、ダメです…まだ、心の準備が……」

かぁーっと朱色に頬を染め、夕鈴は小さく頭を振った。

「夕鈴、もう待てない。君はただ…僕の言うことを聞いていればいいんだ」

「で、でも…」

イヤイヤと首を振って拒絶する夕鈴を、陛下はそっと抱き締める。

「愛しい我が妃よ…恐れるな」

トクントクン…伝わる心音に、徐々に落ち着きを取り戻す夕鈴。

「共に……」

陛下が一層強く抱き締める。


そして――――。



夕鈴は、はっと顔を上げた。


じとり…陛下を見つめる。



「………」

「………」

「……なんでしょうか…これ」

「なにが?」

夕鈴の問いかけに、陛下は首をかしげる。

「この演技です。必要ですか?」

「うーん。雰囲気作りには必要だね」

陛下は無邪気な笑顔で答える。

「………」

後宮に帰ってきて早々、突然スイッチが入ったかのように始まった演技に対処できず、途中まで流されかけた夕鈴。

よくよく考えると……なんの演技かさっぱり分からない。

夕鈴の困惑する嘆きに、すぐに陛下は声を上げる。


「夕鈴も…分かってるかと思った。ちなみに僕は、いつでも大丈夫だよ」

その言葉に確信する。

やはり夕鈴の読みは外れていなかったようだ。
だが…それだとますます分からない。


「水晶ですよね?」

「うん、そうだ。今夜こそ、共に使って、共に夢を見よう。ね、夕鈴」

子犬陛下が尻尾をパタパタ。
まるでご褒美を与えられたかのように、心底嬉しそうに夕鈴を見つめている。

いつの間にか、寝台傍には夢水晶がセットされていて…寝る準備は万端のようだ。


「君の夢にいっぱい登場できるといいなぁー」

陛下はそんな風に呟くと、夕鈴の呆れた視線などお構いなしに、ずんずんと寝台に近付いて行った。
肩を強く抱かれ誘導されていたため、もちろん夕鈴も一緒に。

「ちょっとちょっと、待って待ってーー陛下」

「ん?心の準備…まだし足りない?」

そ、そうじゃない!

陛下はジタバタ暴れる夕鈴の腰をかかえ、ひょいと持ち上げた。突然浮き上がる感覚に驚いてしがみつく。


「照れ屋だね…君は。別に一緒に眠るだけだよ。なーんにもしないからね」

一緒に眠るだけ…その単語が妙に夕鈴の心を捕らえた。

「あの…別々で、良いのでは……?」

「僕は一緒で構わない。その方が効率的だし」

陛下がゆっくり見上げてくる。
その目や態度は、本性である子犬陛下のようであっだが、なんとなく落ち着かない。

もしや、また流されかけてる!?

そう思うが、なかなか陛下の視線を反らせない。

夕鈴がもじもじ戸惑う様子を、まるで観察するかのようにじっと眺める陛下。


―――わ、分かんない。

何か言うわけではなく、ただひたすらに見つめてくる陛下。

その仕草には意味があるのか、無いのか。
つくづく難解な人だと思ってたけど、今日ほど理解不能なことはない。


沈黙が気になり始めた夕鈴は口を開いた。

「あの…水晶ですね。周宰相の差し入れだそうですよ」

「みたいだね」

「不吉だと思いません?」

「奴の不吉予言は、ただの面白みのない宴会芸だ。気にすることはないよ。それで…準備できた?」

「え!?……い、いいえ…」

「夕鈴…僕、いつまで君を抱えていれば良いの?」

「降ろしていただいて結構です!」

「却下」

陛下はため息混じりに即答した。
またじっくり観察されそうな展開に、慌てて会話を続ける。


「な、なぜ差し入れなどされたのでしょうか?」

夕鈴は質問をぶつけた。
疑問に思っていたことは間違いないが、逢う機会に恵まれず、理由を問えなかった。

「さぁ…明日にでも聞くといいよ」

「今!い、今…気になりませんか?」

「気にならない」

また即答。

「で、でも…」

「今は夕鈴、腕の中の君が気になって堪らない。準備はできたの…?」

「!!!?」

一緒に眠る準備なんて、一生かかっても無理。

「やっぱり…別々は、いけませんか?」

「ダメ」

期待を込めて放った一言は、無情にも一蹴され…夕鈴はとうとう寝台に寝かされる。

最後の抵抗むなしく、沈むように身体が横たわる。

陛下は目にも留まらぬ早さで灯火を落とし、おやすみ…と囁いた。



「君が、良い夢を見れるように…」

額に陛下の唇が落とされたところで、夕鈴は諦め強張った身体から力を抜いた。

「陛下…」

「ん?」

「おやすみなさい……」

演技はいいので、とにかく寝てください。

「うん」

陛下はイタズラが見つかった童子のように笑うと、ゆっくり離れていった。
















夢を見た。

陛下と並んで歩く夢。

夢の中の夕鈴は、綺麗な妃衣装を纏ってなくて…陛下も王様の格好をしていない。

触れ合う距離は近すぎて、伝わる温度は熱すぎて、湧き上がる喜びは激しすぎて…。

まるで本物の夫婦のように―――。


夢の中の私は本当に幸せそう。
夢の中の陛下は本当に楽しそう。


「夕鈴…君とこうしていると、すれ違ってばかりいたあの頃が、夢のようだね」

陛下がきゅっと手を握り、夕鈴もそれに答える。

あの頃はただ、素直になれなくて…。好きを認識するたび、自分が嫌いになっていた。

夕鈴は涙を浮かべ、陛下を見上げる。

「どうした?愛しい妻の泣き顔に、僕はめっぽう弱い………君にはいつも、笑って欲しい」

陛下はまぶたに溜まる夕鈴の涙を指でそっとぬぐった。

「あなたとこうなる前を思うと…苦しくて悲しくて、、、あの頃の私は、ただ…あなたが遠くて眩しくて」

「君こそ、遠くて眩しくて堪らなかった。君に触れてしまうと、僕とは違う輝きを曇らしてしまいそうで、ずっと心に嘘をつき続いていた、だが……」

今はこんなにも近い…陛下は耐え切れずに夕鈴を抱き寄せる。力強い腕の中、彼に愛される喜びが全身を包む。

「あなたが私を…曇らすなんてことありません」

腕の中囁く。あなたの孤独、あなたの苦しみ…すべて私に植え付けて欲しい、共に歩んでいきたい。

「君はいつも僕に優しさをくれる。愛しい夕鈴…いつまでもそばに居て欲しい」

「そばに居ます。たとえこの先、あなたに嫌われたとしても…あなたを愛しているから」


目が合って…何も言えなくなって…。
ふたりは、口づけを交わした。


「もう離さないよ…夕鈴――――」











「……りん…夕鈴」

「――――――へい、か?」

目を開けると、覗き込む陛下の顔。周囲を見渡すと見慣れた寝室。もう一度、陛下を見て―――――ぼんっ!!と顔から火が出た。慌てて布団をかき寄せ、顔を隠す。

ゆ、夢!??ななな、なんてすごい夢。恥ずかしすぎる。

前回よりもパワーアップしているんじゃないの!?
夢水晶の力に驚き声が出ない夕鈴。


「夕鈴…どうしたの?顔が赤いし、泣いているようだったけど…」

心配そうな声が降ってくる。夕鈴はそろりと目だけ布団から出して、ちょっと夢見てただけです…と答えた。

「泣くような夢だったの?見たい夢を見せてくれるんじゃないのか…」

陛下は眉根を寄せると、静かな輝きを放つ水晶を手の平に乗せた。透き通る水晶に、陛下の険しい顔が写っている。

「僕には…良い夢だったが。君に涙を見せるとは……これは早く処分が必要か」

「か、悲しい夢ではありませんよ」

陛下の誤解を訂正する。
今にも握り潰してしまいそうな雰囲気があったため、夕鈴は慌てて水晶に手を伸ばした。その手をひょいとかわす陛下。バランスを崩した夕鈴は、陛下の胸の中に取り込まれた。

「きゃ!?…へ、陛下、すみません」

離れようとじたばた身をよじるが上手くいかない。

「は、離してくださいー」

「ははは。夕鈴、君に涙は似合わない。君にはいつも笑っていて欲しいな」

「………」

いつも笑っていて欲しい…。まるで夢の続きを見ているようで…夕鈴は胸が熱くなった。

腕の中から陛下を見上げる。

「陛下はどんな夢を?」

気になって尋ねてみる。陛下はふっと優しく目を細めて、笑みを浮かべた。

「もちろん君がたくさん登場したね」

「…私?」

「君は楽しそうに笑ってた。そんな姿を見てると…僕も嬉しくて」

陛下は笑う、柔らかな微笑みをたたえて。

「夕鈴。夢の中でも君はパワフルだったよ。可愛くて面白くて愛らしい、僕の奥さん……」

見つめる陛下の視線が熱くて。
思わず、夢の続きを思い出してしまう。

「これからも、そばに居て欲しいな…」

「……そばに…」


見つめ合って…、何も言えなくなって…。
そしてふたりは―――――。


固まる夕鈴。

今、何考えてた…私。


「……っつ」

慌てて陛下から身を離す。

「夕鈴?」

脳内汚染がぁぁぁーーー。
頭を抱える夕鈴。脳裏には夢で登場した陛下の顔、言葉、仕草。


いやぁー出てこないでー。


陛下のそばでひとり悶絶する夕鈴。そんな夕鈴の様子を観察するかのようにじっくり見ている陛下。


「やっぱり夕鈴…って、面白いね」

「面白くないです!」

にこにこ顔の子犬と、真っ赤な顔の兎。

ふたりのそばには、今回の悪因である夢水晶がひとつ。


―――――やっぱり処分が必要かも。

改めてそう思う夕鈴であった。














後日

「あの…周宰相殿。ひとつお聞きしても?」

「お妃さま。この後天気は曇りのち雨、夕刻にはさらに荒れる模様です」

「天気予報ではなくて…」

夕鈴は夢水晶の話を始めた。浩大の話によると宰相からの差し入れとのこと、その理由が知りたい。

「最近、夫婦仲がマンネリ気味と聞き及びまして…」

「マンネリ!?陛下がそう言ったのですか?」

「いえ、天の声です」

「…は?」

「良い刺激を与えられたとお見受けします、よろしゅうございました」

「………」

なんか、すべてお見通し?
夕鈴は苦笑いで答える。

「ちなみに私の夢は、私の予言が幸せを運ぶと大流行しまして…若い乙女たちから引く手数多。実に幸せな時間にございました」

「はぁ…」

宰相は怖い顔で幸せな夢の続きを語る。ちっとも伝わってこなかったが…さぞ良い夢だったのだと、夕鈴は笑った。

「そういえば…陛下は処分なされたようでしたが、まだまだ夢水晶はありますので、使いたいときにおっしゃってください」

「いえ…確かに良い夢を見させてくれるかもしれませんが…」

夕鈴は言葉を止めて考える。
頭の中で夢水晶が映した映像が鮮明に蘇っていた。


夢が見せる幸せよりも、やっぱり私は…。


「夢よりも真が作り出す幸せの方が何倍も良いですね」

「さすがお妃さま」


ふたり笑う。

吹き付ける風はどこまでも暖かく、宰相の怖い顔も心なしか柔らかく見えた。








二次小説第74弾完
あー疲れました。皆さまもさぞお疲れでしょう、長文に最後までお付き合いありがとうございました😄
気に入っていただけましたら拍手お願いします^ ^
今回は星宮えりなさん著「夢恋抄」からネタを拝借。
見たい夢を見せてくれる水晶なんて、素敵ですよね〜欲しい!そして夕鈴と陛下の胸焼けするぐらいラブラブ話を見せて欲しい!(笑)
「夢恋抄」には夢水晶以外にも楽しい短編が収録されています☆まだ読んでないよーという方は、ぜひ読んでみてくださいね

20:28  |  祝☆「夢恋抄」発売記念  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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