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2014.08.29 (Fri)

あなたがいて あなたといて

あなたがいて あなたといて

陛下目線で、甘めに頑張りました。

ではどうぞ。


【More・・・】





これは一体…どうしたことか。



政務室にほど近い四阿の中。

目の前で無心に眠り続ける夕鈴を見て、僕は疑問だらけの頭で固まっていた。








お妃さまの姿が見えません。



慌てて僕に告げに来た侍女たちの言葉で、妃の捜索に加わったのは半刻ほど前だ。


「我が愛しい妃は…なぜこんなところで眠っているのか」

軽く揺り起こしてみるが、ビクともしなかったので、僕は夕鈴をそっと抱き上げた。

一旦政務室まで戻り、まだ心配して探し回っているだろう侍女たちに無事を知らせる。もう遅い時間であったため、そのまま後宮に戻ることにした。


夕鈴は、僕に抱きかかえられている間も、全く起きなかった。

さすがに心配になり顔を覗き込む。

まさか薬でも盛られたのではないかと不安になったが、確認した寝顔はすややかで、僕はほっと胸を撫で下ろす。


後宮の妃の自室に着いたところで、やっと夕鈴がもぞもぞ動く気配があった。


「起きた?夕鈴…部屋に着いたよ」

「…んー……」

「なんで、あんなところで眠ってたの?」

声を掛けて、寝台の上横たえようと腕を離すが……。
ぎゅーっと、首に掴まる力で、引き戻される。見ると、夕鈴が必死にしがみついていた。


「夕鈴、君の部屋だよ」

夢を見ているのか…背中を撫で優しく声を掛けた。
離れるには、まこと惜しい展開であったが、寝ぼけている彼女にどうこうするつもりは無かったので、腕を剥がしにかかる。夕鈴はイヤイヤと小さな抵抗を繰り返し、ついには腕を絡めて体重を掛けてきた。勢いは止まらなかったため、ふたりして寝台に横たわる。

べしゃ…夕鈴の上に身体を預けてしまい、慌てて身を起こす。

危うく潰してしまうところだった。


「夕鈴…手を離してくれないと、のけないよ」

夕鈴は、相変わらず僕の腕を掴んで離さない。

「……へい、か」

夕鈴は、起きているのか寝ぼけているのかよく分からない赤い顔して、上目遣いで覗き込んできた。

「………」

反則級の可愛い仕草に、ドキリとする。だが、早々に邪心を追い出し、冷静を起こした。


「熱があるの?夕鈴…」

顔が赤いし、なんだか目も虚ろだ。視点の定まらない夕鈴の額に手を置く。


「熱くはないが…念のため薬、持ってくるよ」

とりあえず離れて落ち着きたい。

僕は大人しくなった夕鈴の隙をついて、寝台から降りようと背を向けるが……。

「やっ…」

夕鈴が背後から飛びついてきた。また重力に負けて、寝台に逆戻りしてしまった。


「陛下…陛下……」

背中ごしに、夕鈴の呼び声がごだまする。


「………」

どうしたらいいんだ、これ。

皿の上、どでんと乗っかる兎の絵が思い浮かぶ。突然始まった夕鈴の捨て身攻撃に、動揺が止まらない。


きっかけが分からないんだけど…。

今は、プロ妃演技向上も終わったはずだし、僕から難題をふっかけてもいない。

熟考したところで何も分からなかったので、僕は夕鈴に直接聞くことにした。


「夕鈴。ねぇ、夕鈴…顔見せて」

擦り寄る彼女の髪を梳き、柔らかく囁く。
なぜか涙をいっぱい溜めた夕鈴と目が合った。
彼女の泣き顔を最も不得手とする僕は、そこで焦ってしまう。


な、泣かせてしまった!?


問いかけすることも忘れ、夕鈴を抱きしめ、まぶたに唇を押し当てる。


「……っ。離れない…で」

ベソべそ泣く夕鈴。


「離れないよ」

僕は自分から覆いかぶさるように身を沈めると、夕鈴に優しく答えた。

涙でぐちゃぐちゃになる夕鈴は壮絶に可愛いかった。
そんな可愛い生き物を前に、伸ばす手が止まらない。

香油かな。
夕鈴から漂う甘い香りにクラクラした僕は、余計平静では居られなくなった。


きっと罠なんだろうな…。
分かってはいるが、なかなか離れられない。


これ以上は…マズイ。


「大丈夫、大丈夫…」

僕は泣きじゃくる夕鈴の涙をぬぐって、頭をポンポンと撫でる。僕の行為に安心せたのか、夕鈴はやっと落ち着いたようだった。

とろん…と微睡んだかと思えば、目を閉じて浅い寝息を立て始めた。


やはり、寝ぼけてたか……。


「だよネ…」

淡い期待を抱いては痛い目を見て、また懲りずに期待するんだから…本当に愚か者だな。

誰にも聞こえないほど小さくため息をついて、僕は今度こそ寝台から降りよう…と身を起こす、

……が。


「!?」

つんっと引っ張られるような感覚と共に身体が止まる。


「夕鈴…」

僕は肩を落とす。僕の上衣をひっしと掴んで離さない夕鈴の手を見て…。


あーもー可愛い過ぎるよ、夕鈴。

僕を試しているとしか思えない。


起こさないように、上着だけ脱いで…とにもかくにも、この危険地帯から脱出しないと。

慌てて上衣の紐を解き脱ぎ始めたところで、ふと視線を感じた。


「…ゆっ、夕鈴」

起きてたの!?

薄目を開けてぼんやり眺める彼女と目が合う。やましい気持ちは毛頭ないが、なんとなく上着を脱ぐ手がピタリと止まる。


「起こしちゃってごめんね、僕、もう行くから」

子犬の笑顔を見せると、夕鈴の大きな瞳から、うるるっと大粒の涙が流れた。

えぇ!?


「ど、どうしたの?」

どこか痛いところでもあるのか。
心配になり涙で曇る彼女の顔を覗き込む。

途端、ぐらり…また身体が傾いた。


「あーーー」

本日三度目、寝台に倒れ込む。
首にはしっかりと夕鈴の腕が絡んでいて、泣きながら離そうとしない。

一体…なんの罠だ、これは。


「………」

「…ひっく。そばに…っ、居てください」

「うんうん、大丈夫だよ、夕鈴…」

小刻みに震える華奢な肩を抱く。


「へい…か…っ」

「うんうん、大丈夫」

大丈夫なのか、僕。

これはもう、美味しくいただいても良いのかも。
待て、これは罠だった。いや、たとえ罠であってもこの際掛かってみるか。

お嫁さんがこんなに可愛くなって近付いて来るときって、たいがい夢か…、幻か…。

どうせ覚める幻想ならば、傷ついても構わない。

いや、僕は良いが、夕鈴が傷つくのはダメだ。


落ち着け、落ち着け。

ぐるぐる……と、頭の中で思考が回る。


その間もしゃくり上げて泣く夕鈴を、無意識によしよし…とあやす。


「っへいか……離れ…っ、な…で……」

「夕鈴…泣かないで。僕、離れて行かないよ」

「……っ、ほ、ほんとう…っです…か?」

「うん」

「は、離れ…ない?」

「うん」

「…っ。良かっ……たぁ…」

「………っ」

ふんわり笑う顔が超絶可愛くて、言葉を失う。


泣き顔で引き止めて、
そんな凶悪な笑顔で迫って、

僕を駆り立てて、余裕を無くして、焦らせて、一体僕にどうしろと!?


「罠だよね!?」

「?」

きょとん…と首を傾げて、兎が見つめてくる。

堪らずぎゅーっと力を込めて抱き締める、夕鈴の呼吸が苦しくないように、若干の余裕だけ残して。


「もーー知らないよ……」

果たして聞こえたのかどうか定かではないが、夕鈴はふわふわ微笑む。

さっきまで泣きはらしてたのに、今はすこぶる機嫌が良さそうだ。

僕は夕鈴の首筋に顔を埋めて、白磁の肌に唇を寄せた。長い髪をかきあげ、露わになった耳たぶを甘噛みする。
涙で潤んだ瞳にキスして……そこで、やっと自制心が働いた。


これ以上は…いけない。

勝手に動く手の甲を、自らつねる。鈍痛が頭の働きを促してくれることを信じて。


「っ……くすぐったい…です、よー」

クスクス笑う夕鈴。
夕鈴はなんとも妖艶な仕草で、僕の頬に触れた。しばらく指先で撫でていたかと思うと、今度は手を広げて、くしゃくしゃと髪に触れてくる。


「陛下の髪の毛…って……さらさらー」

愛らしい笑顔で再度、さらさらーっと口ずさんだ。

そして、大きな瞳でゆっくりまばたきすると、上目遣いで覗き込んでくる。

「……もっと。触って…良い、ですか…?」

「………」


これは、試練だ。

彼女の信頼を勝ち取るための試練。


「陛下…」

「…君って…どこで覚えてくるの、そんな純粋無垢な顔して……」

そんな…そんな可愛いこと言って、それこそ僕じゃなきゃ…押し倒されてもおかしくない。

なんて無自覚な天然兎。


「…っ…いや、です…か?」

じっと見つめられ、顔が熱くなる。
また泣きそうな顔してるので、慌てて否定する。


「いやなわけ、ないよ」

ずっとこうして遠慮なく抱き締めたいと思っていた。恐れなく手を伸ばす君に触れたいと…心から願っていた。

王様である僕にも意見を負けず、自らの信念を突き通す頑固で素直じゃない君。毅然と反論して、感情豊かに泣きじゃくり…辛いときも悲しいときも、自分で解決しようと僕に頼ってはくれない君。理不尽なことに怒っていたかと思えば、次にはふわりと太陽のように眩しい笑顔を見せる君。この疑心暗鬼な王宮で、自分の保身など一切せず、身ひとつで僕のことばかり心配する君。


面白くて、可愛くて、優しくて、愛らしい…。


なんて愛しい君。



「僕も…」

君に触れたい。

手を伸ばす。
なんの抵抗もなく、夕鈴の頬に到達する手。

柔らかい感触と、心休まる温度。


「君こそ、僕から離れて行かないで」

夕鈴は僕の言葉に微笑み、ほっと安心したように胸に顔を埋めた。


「あったかい……」

「うん…」


無言で、抱き合っていた。

まるで、初めから境界など無かったかのように、ふたつの身体が重なる。

規則的に刻むお互いの心音が耳に心地良く響く。


格子窓から覗く月明かりが、夕鈴の長い髪を照らし、美しく瞬く。


いつの間にか…腕の中の夕鈴は泣き疲れて眠ってしまったようだ。


こうやって…誰かを何かを、夢中で求める自身など、想像できなかった。今の自分は、あの頃の自分と結びつくのか果たして分からないが……。


彼女がそばに居てくれる、今が一番最高だ。


僕は夕鈴の頬に、そっと口付けを落とした。
















目覚めたときの、夕鈴の反応が予想通りで、僕は笑った。

朝っぱらから笑い転げる僕を不審そうに見る夕鈴。


「あの…理由を…」

「自分の胸に聞くといいよ。言い訳するわけじゃないけど、僕は何度も部屋に帰ろうとした。引き止めたのは君だ」

「………」

赤くなったり青くなったり…傍らで百面相を披露する夕鈴を目端に、僕はうんと大きく伸びをする。

清純な朝の香りを取り込んで、深呼吸した。


また、新しい一日の始まりだ。


君と迎える朝が、これほど心地良いなんて、昔の僕では気付けなかった。


「さて…」

悩み続ける夕鈴に、笑いかける。


「昨夜の君はやはり幻想だったが、気分が良いから許してあげるよ」

「!?…許すって……わ、私…まさか陛下によからぬことを……」

肩を震わせ怯える夕鈴に、また笑いが込み上がる。

よからぬことを、しそうになったのは僕だ。さっさと君が眠ってくれて良かった。


君の寝顔を堪能しながら、思ったこと。


「夕鈴…昨日の夕餉のとき、何か飲んだでしょう?」

「え?何かって……」

「いつもと違うもの、出てきたはずだ」

首を傾げて昨夜を振り返る夕鈴。


「飲み物?……えっと確か、外国からのお土産の…甘い飲み物、とか」

美味しかったですけど、と夕鈴は微笑む。

「ふうん、やっぱりね…」

「陛下からの差し入れだと、お聞きしました」

「………」

予想通り、酒に酔っ払ってたか。

顔は赤く高揚し、身体は発熱したように熱かった。ところどころ呂律も回ってなかったし…。

落ち着いて観察するとすぐに分かるが、昨日の僕は冷静さを欠いていた。騙されてもおかしくない。


「やはり罠か…」

しかもまったく身に覚えがないが、僕から仕掛けたらしい。

「はい?…わな?」

「今回は…構わないけどね」

「??」

訳も分からずまばたきを繰り返す夕鈴を、そっと抱き抱えた。


「きゃっ!」

突然の浮遊感に小さな叫び声が上がる。


「さて…今朝も、仲良し夫婦のお披露目、しよっか」

僕はにこにこ笑顔で、夕鈴を見上げる。子犬の態度にすぐに警戒心を解いた夕鈴が、顔を赤らめながらも頷いた。


「なんだか…ご機嫌、ですか?」

「あぁ。君は反して不機嫌だね」

「理由を教えてくだされば、治ります」

「うーん、それはダメ」

「なぜ?」

「さぁ…夫婦だからいいんじゃない」

「良くありません、李順さんから怒られるのは私です」

「ふふ、僕も一緒に怒られてあげるよ」


できれば、自分で思い出して欲しい。


あれは夢でも幻でもなく、真の気持ちだと。


恥ずかしいのか、いたたまれないのか、着物の袂で顔を半分以上隠して俯く夕鈴に、僕は笑顔で答えた。







二次小説第75弾完了
可愛い夕鈴を、ミケが最大限堪能できた作品でしたー。酔っ払いネタは2回目ですが、回を追うごとに大胆になる嫁。ステキです
常に適切であることを求め、がちがちお堅い夕鈴に陛下が萎えないように、ミケからのプレゼントです。
王様なのに、特別大切にしているのに、他の女になど目もくれないのに……これだけ拒絶されたらさすがに男も引くかと…引かないのは陛下が謎生物だからです(笑)と最近気付きました。

15:01  |  陛下片思い編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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