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2014.09.12 (Fri)

初恋空

「初恋空」

またまた陛下目線。
ぶっちぎり片思い陛下(笑)ちょっと夕鈴の方が大人な対応してて面白いです。

ではどうぞ。


【More・・・】






「陛下は…好きな人と喧嘩したときって、どうなさいますか?」


「………好きな…人?」

こくり…真っ赤に染まる顔で、夕鈴は小さく頷いた。


「…………どういう意味?」

静かに尋ねる僕。


「えっあの……す、好きな人と喧嘩してしまったとき…どうすれば良いか…」

教えていただきたくて…恥ずかしそうにめいいっぱい肩を縮めて、夕鈴は再度、同じことを尋ねた。


「…………だから、どういう意味なの」

「……え?」

一歩近づく。


「僕は、喧嘩していないよ」

「……あの?…」

「………」

もう一歩近づく。


「一体…何のことを言ってるの?」

「………へいか?」

「………」

壁際まで追い詰めたところで、とん…と夕鈴の肩を押した。

抵抗を忘れた身体が、簡単に壁に当たる。

僕は、乱暴に壁に手をつく。


「!?」


あまりにも冷たい表情だったのか…夕鈴は僕を見上げたまま固まってしまった。真っ赤に染まった顔は見る影もなく、青ざめ震えている。

僕は硬直した夕鈴の髪を一筋指に絡め、ゆっくり唇に当てた。
髪の香りを堪能する余裕もなく、恐怖に染まる兎の目を覗き込む。

その行為を、まばたきをすることも忘れ見ていた夕鈴に、凍えるような笑顔を向けた。


「………好きな人…ね」

「………」



夕鈴はもう…頷くことはなかった。

















振り返ること半刻前。
狼陛下の王宮。


「夕鈴は…帰ったのか?」

筆を動かす手をふと止め、僕は顔を上げた。

ここ数刻、夕鈴の顔を見ていない。

僕は閑散とした政務室を見渡したが、仏頂面の側近がひとり、神経質に書類と睨めっこしているだけであった。


「本日は午後よりお見えになってませんよ」

李順は書類から目を離すことなく答える。

「なぜ…」

むっと眉根を寄せて、僕は傍らの側近を睨んだ。最近毎日のように顔を出していた夕鈴が急に来なくなるなんて…誰かの横槍としか思えない。

誰かとは、もちろんいつも邪魔だてしてくる側近のことだ。


「夕鈴が居ないと、やる気が出ないって言ったよね」

「あんな小娘ひとりが陛下の原動力かと思うと、甚だ嘆かわしいですが。私を睨むのは筋違いですよ」

「?」

「本日は定期便の日です」

「あぁ…」

僕は納得すると、椅子に深く腰掛け直した。書き終わった書面を手に取り、裁決箱に放り込む。


「どうりで、つまらないはずだ」

「政務につまる、つまらないはありませんよ」

李順は眼鏡のふちに手を掛けて、僕に諌めるような視線を送る。それを軽く無視し、開いたままの書巻を片付け始めた。


「終わったぞ」

やっと半分。
飽きもせずうず高く積まれた書巻の山を見て、ため息を漏らす。


「とりあえずは、ひと段落です」

「残りは軽いものか…」

さして重要じゃない案件が未決済として残っていた。


「今日は早めに後宮に帰れそうですね」

「奴が、追加を持って来なければ良いが…」

噂をした途端、不吉な顔したあの男が山ほど案件を持ってきそうだったので、早々に話を切り替えた。

ちょうど昼の刻を知らせる鐘の音が遠くで響いていたため、僕は立ち上がる。

長時間同じ体勢でいたせいで、若干しびれの残る身体を、うんと伸ばした。


「昼餉は妃ととる」

僕はそう言い残して、政務室を後にした。
















昼食を一緒にとるため、後宮に現れた僕を夕鈴は笑顔で出迎えてくれた。


「忙しいよね…ごめんね」

机の上に広がる手紙の束をちらりと覗きながら、僕は夕鈴に近付いた。

今日は、下町からの定期便が届く日だ。後宮で暮らしている夕鈴にとって実家を知る唯一の連絡手段。
配達人は王宮や後宮の各部屋を回るため、あまり長居はしない。そのためこの時間帯は慌ただしいのだ。


「いいえ…今書き終わったところです。ちょっと預けて参りますので、お待ちいただけますか?」

「うん」

夕鈴は了承を取ると、パタパタと駆けていった。
残された僕は、卓の上にふと目を止める。分厚い手紙が折りたたんであった。数は5つほど、今回は多いようだ。


「夕鈴に、伝えたいことだらけか…」

僕も同じだ。
夕鈴と過ごす時間はとても心地良く、いつまでも話したくなる。下町での彼女の様子をなかなか窺い知ることはできないが、人のいい彼女は皆から好かれていることだろう…。

ふと、寂しい気持ちになったが、無相応を感じたため、さっさと追い出した。

どうなるかも分からぬうちに、先走ってはいけない。


そうこうするうちに、用事を済ませて戻って来た夕鈴と、昼食の席についた。







「実家は、変わりない?」

「はい、皆元気にしています」

夕鈴の笑顔で問題ないことを安堵する僕。


「今回は…たくさん君宛に来ていたね」

「はい、久しぶりに友人から手紙が、あ……」

ーーーと、そこで言葉を止める夕鈴。
歯切れの悪い会話に、僕は首を傾げた。


「どうかした?」

「いえ…」

真っ赤に俯く夕鈴を凝視する。
可愛い顔を披露してくれるのは嬉しいが、理解不能なのは苦しい。できれば、何でも包み隠さず話して欲しいんだ。君に少しでも近づけるように…。


「何か悩み事?」

椅子を引いて立ち上がると、ズルズル引きずって夕鈴の横にピタッと止めた。そのまま腰掛け、口をぽかんと開けて傍観している彼女に間近に笑いかける。

肩が触れ合うほど近い距離に、夕鈴は照れたようにさらに顔を染めた。


「たいしたことでは…」

「なになに?なんでも話して」

「………」

僕のしつこい追求に、とうとう折れた夕鈴が、ぽつり…と話し始めた。


「こんなご相談、恥ずかしいんですけど…」

「大丈夫だよ」

努めて明るく答える。


「し、下町の…」

「うん」

「その、下町の…ですね」

「うんうん」

「……す、好きな人が、喧嘩して……」

「…………え?」

夕鈴は、やっぱり恥ずかしい!っと勢いよく席を立つ。


「おおお、お茶のおかわりを入れて参ります!」

水屋に引っ込っこもうと背を向けるが…。

僕は無意識に去ろうとする夕鈴の手首を掴んだ。


「!?」

「夕鈴…聞き取れなかった」

夕鈴はしばらく目を泳がせていたが、僕の視線に負けたのか、懸命に声を絞り出す。



「その…陛下は…好きな人と喧嘩したときって、どうなさいますか?」

「………」

「………」

「………好きな…人?」





思考が停止した。

















夕鈴が怯えている。

壁際に追い詰められ、まるで天敵を前にしたかのような表情だ。

だが、僕は逃げ出さないように、凍てつく視線で捕縛した。

いつもならば僕に怯える彼女など見たくはないと配慮するが、そんな余裕など無かった。


「陛下…な、なにか、怒ってますか?」

怒っているか怒っていないかといえば、怒っている。

理不尽にも、怒っているのだ。


僕は無言のまま、夕鈴の頬に触れた。そのまま視線が合うように、こちらを向かせる。彼女の瞳に写る僕は、鏡で見ているいつもの狼陛下の姿で……やはり変わりはしないのかと胸がちくりと痛んだ。

夕鈴と出逢う前であれば気付けなかった痛みだ。

人並の人間らしく近付けた証拠であったが…今は受け入れを全身で拒否していた。


「陛下…わ、私……」

夕鈴の瞳にみるみる涙が溜まる。留め切れられずに、ついには大粒の涙が頬を伝う様子に、はっと意識を取り戻した。


「………」

また、泣かせてしまった。

本当に…笑えるくらい余裕がなくて、情けない。


僕は夕鈴をそっと抱き締めた。


「………」

分かっている。

彼女が誰を好きで、誰に心を奪われようが…僕に口出しすることはかなわないのだ。

僕は深いため息と共に身体を離し夕鈴を覗き込んだ。まぶたに残る涙をそっと指でぬぐって、懸命に笑顔を作る。


「あーー…なんの話だっけ?」

狼の鎧を脱ぎ捨て、夕鈴が好きな子犬のフリして尋ねる。


「……え」

「ごめん、夕鈴。誰も居ないのに演技しちゃった…泣くほど怖かった?」

「……演技」

そう…と僕は謝罪した。
多少無理はあったが、必死の弁解に彼女の心が動いたようだ。

夕鈴はほっと安堵して、柔らかく微笑み返してくれた。


「陛下…なぜか、怒ってらっしゃるのかと…」

「うん?」

「あ……いいえ」

夕鈴はふるふると頭を振ると、再度笑い掛けてくれる。

彼女のこういう素直さに、いつも救われていた。


「実は下町の、久しぶりに里帰りした友人から手紙が来まして…」

「あぁ…そうだね」

手紙の束は見ていた。
そんな話題より、君の好きな人を知りたい。


「夕鈴、さっきの続きを…」

「え、はい。その友人の手紙に…」

「夕鈴の話をして」

「え???」

「君の話の続きが聞きたい」

「??続きを話して…います。下町の友人が旦那さまと喧嘩したんですよ」

「………ん?」

今、何て言った?


「下町の友人?」

「はい。それで私に…アドバイスをくれないかって…、でも、私…そういった経験が無くて…」

頬が朱色に染まる。

「………」

「なので、陛下のご意見を伺いたいと」

「………えぇ!?」

「!?」

僕の驚く声に、僕以上に驚く夕鈴。


まさか。

ありえない勘違いの予感に、身が震える。

夕鈴が疑問を込めてまじまじ見つめてくるので、思わず顔を手の平で覆った。


「あの…陛下、やっぱりご様子が…」

「あぁ!気にしないで、続き話して」

空元気に答える様子は滑稽に見えただろうが、構う余裕はない。

これ以上、恥は晒したくない一心で、会話を続けた。


「そうですか。えっと。陛下は好きな人と喧嘩したとき、どう仲直りをしますか?」

「………」

あぁ、そうか。この質問だった。
続きを促したのを後悔しつつ、僕は深呼吸した。

身体に溜まった空気をすべて追い出し、新鮮な空気を取り込むと、少し平静になった。


「悪いと感じた方が、素直に謝ればいいんだけど…」

僕は夕鈴を見つめる。



今のは完璧僕が悪い…か。



「ごめんね」

「?何がでしょうか…?」

「君を泣かせたこと」

「あ、あれは…すみません。まだ、狼陛下に慣れなくて」

「いや、君が謝らないで」

ますます惨めになるから。


「でも…せっかく演技してくださってるのに」

「演技じゃない」

「え?」

「いや…狼は演技だけど、その…、演技じゃなくて…」

「?」


悪いと感じた方が素直に謝れば良い。
自分で言ったじゃないか。

いつも純粋無垢な彼女の前では、自分も素直になりたい。


意を決して顔を上げる。


「君に好きな人が居るかと思って…勘違いしてた」

「………」

「ごめんね、夕鈴。君が言う好きな人に…」

嫉妬してた…とまでは言えなかった。

心拍数が上がる。
こんなの僕らしくないと思う。


でも。


手放したくないんだ、夕鈴を。

暖かさが、優しさが何であるかを知らなかったあの頃に戻るには、君を知り過ぎた。


「陛下…私の好きな人だと思ったのでしょうか?」

改めて言葉にされると気恥ずかしい。
僕は目を逸らして頷いた。


「……っ」

夕鈴は笑っている。

当然だ、僕も笑い飛ばしたい。
数刻前からやり直せたら、どれほど救われるだろうか…。


「素直に謝ればいいんです…よね?」

「え?」

僕は笑顔を向ける夕鈴を見つめ返す。


「勘違いさせちゃって…ごめんなさい」

「………」

可愛い顔してこんなこと言う君は、反則だ。

いつか君に、本当に好きな人ができたら…と思うと、耐えられる自信はない。

だってそのときは、今よりきっと。


「手放せないんだろうなぁ」

「え?」

「ううん」

なんでもないよ…夕鈴の手を握る。

そのままゆっくりと引っ張り、壁際から離れる。彼女をこんな冷たい壁に追い詰めたことを、心から恥じながら…。


「仲直りしよっか」

「はい!」



花が咲く。


狼陛下の後宮で、とびきり眩しい笑顔の花が。




いつまでもここに、あり続けることを願って。











二次小説第76弾完
今回は、なかなかお気に入りの作品に仕上がりました。
ミケは断然陛下片思い派なんですよねー。陛下がワタワタうろたえる姿、大好物です!原作では夕鈴がパニックを起こしている姿が印象的ですが…。いつも冷静沈着な狼が、夕鈴の前でだけ慌てる姿にかな〜り萌えます(笑)
気に入っていただけたら嬉しいです(*^^*)ありがとうございました。



21:50  |  陛下片思い編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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