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2014.09.25 (Thu)

君しか見えない

「君しか見えない」

終始イチャイチャです(笑)
陛下目線で短文です。

ではどうぞ。


【More・・・】



心から安らげる場所があることを、これほど幸せと感じることはない。






「陛下…陛下……」

「…………」

「陛下…」

「…ん……夕…鈴」

「すみません、陛下。場所を移動なさってください」

ぼんやり目を開けた先に、夕鈴の顔が映る。

「………」

軽くしびれる腕を上げて、僕は少し汗の残る額に手を当てた。

夢…か。
どうやら眠っていたようだ。

後に残る気怠さで、長い刻眠りに落ちていたことを知る。


「ここでは体に毒ですよ」

やんわりと夕鈴が言い放った。

「……毒…?」

僕は覗き込む夕鈴の顔を見上げた。


「君が居て、どうして毒なんて…」

顔にかかる夕鈴の前髪を手で掴む。するりと滑らかに通る指先に、顔がほころんだ。


「陛下…寝ぼけて……」

「………」

これ幸いと寝ぼけたふりして、そのまま手を腰に伸ばした。華奢な腰は力を入れずとも簡単に引き寄せられた。

「きゃっ」

「ゆうりん---」

ぎゅーっと抱きしめる。
徐々に戻ってきた感覚で、ここが硬い長椅子の上だと窺い知る。

僕の身体を心配して声を掛けてくれたのか…と、嬉しくなった。

髪に指先を絡めて夕鈴の表情を確認すると、赤い顔で困惑していた。


「………」

そんなに困った顔をされると、余計意地悪したくなる。
僕は逃げ出さないように顔を固定すると、額をコツン…とぶつけた。

「!?」

夕鈴は目をぐるぐる回している。
相変わらず初々しい仕草に、笑みがこぼれた。


「陛下…」

「ん……」

「もう寝ぼけてないですね、お離しください」

「寝ぼけてるよー」

「……嘘」

「細かいことは気にしない」

「気にします」

「君の夢を見ていたんだよー。続きを見させてくれてもいいでしょう」

「わ、私の夢…ですか」

夕鈴が慌てて声を上げた。

「そう…」

僕はにこりと微笑む。

「だから続き…見させてよ」

ね、夕鈴…耳元で囁くと、赤面顔が写る。
可愛い兎の出現に、わくわく胸が踊った。

次はどんな面白い顔を見せてくれるのか…これだから彼女は、目が離せない。

そんな気持ちが伝わったのか…夕鈴はすぐに怪訝な表情に切り替えると、僕を軽く睨む。


「続きは場所を移動なさってください。ここでは風邪を惹かれますよ」

ぷいっと顔をそむける夕鈴。
囲いから抜け出そうと身体を器用に縮めた。背中を向けたところで、すかさず背後から抱きしめる。

「へ、陛下!」

諌めるような怒声が響くが、気にせず拘束する。

「…つれないなぁ」

「もう!離してくださいよー」

「場所を移動したら、一緒に過ごしてくれる?」

「は?しませんよ…おひとりでお休みください」

「………」

僕は、夕鈴の返答にがっくり…肩を落とした。



















「だーから、寝ぼけてたんだよ、夕鈴」

「……分かりましたよ」

ちっとも分かっていない様子で、夕鈴はお茶を淹れ直した。


室内は芳しい香りで満ちている。

いい香りに、目の前には大好きな夕鈴…柔らかな日差しが差し込む午後の休息。
本来ならば、愛しい君と心地良い時間を過ごせるはずだが……笑顔を向けて欲しい人は、終始不機嫌を決め込んでいた。

原因は他ならぬ僕なので文句は言えまい。

先程から機嫌が治るように色々試みているが、いっこうに良くならずに困っていた。


「………」

お茶が注がれる様子をぼんやり眺めながら、ふと思いついたこと。


半分賭けだが…実践してみる価値はあるか。


僕は注ぎ足されたお茶には手を付けず、椅子を引いて立ち上がる。


「陛下?」

突然立ち上がる僕に、夕鈴が首を傾げる。


「どうなさいました…?」

「夕鈴…君が怒るのは仕方ないね。君の言うとおり、自室に戻ってひとりぼっちで休むよ」

ひとりぼっち、を強調してしょんぼり告げた。


「え!私…怒ってなんて…」

夕鈴もつられるように立ち上がる。


「いいよ、君の気持ちは分かったから…」

はぁ…ため息交じりに答えると、夕鈴は目に見えて狼狽した。

僕はチャンスとばかりに、耳も尻尾もたたんで、夕鈴の不得手とする寂しい子犬の表情を浮かべる。


「あぁ…君が夢に出てきて油断したのかなぁ、もっと続きを見たくて本音が出ちゃった」

「え?」

「君を困らせてごめんね」

僕は心から反省したように、しゅんと目を伏せた。


「わ、私怒ってませんし、困ってもいませんよ」

慌てて駆け寄ってくる夕鈴。
優美な妃演技を忘れバタバタと靴を鳴らす慌てぶりに、笑ってしまいそうになるが、ぐっと堪えた。


「そんな…こと、ないですから」

「でも…僕と一緒に過ごすの嫌がってた」

「い、嫌がってたわけでは…私が居ては休憩にならないかと。そ、それにその、ちょっと…」

「……ちょっと?」

何だ。

夕鈴の言葉を聞き漏らすまいと、彼女に向き合う。
動揺している時は、嬉しい本音が聞き出しやすい。彼女とのやり取りで僕が一番に学習したことだ。

僕の視線に、夕鈴はみるみる顔を朱色に染めた。


「………」

夕鈴が照れている。

こんなレアな表情が見れるなんて、この時点で賭けに勝ったも同然だ。


「夕鈴…どうしたの?」

続きを聞きたくて促す。


「いえ…ちょっと」

「うん?」

「……は、恥ずかしくて」

赤い頬を隠して、夕鈴は呟く。


「………」

なんだこの顔、可愛過ぎる。

つられるように僕まで顔が熱くなったので、頭を振って平静を呼び起こした。


しばらくして、夕鈴に尋ねた。

「恥ずかしいの?」

「だ、だって…」

「何?」

「陛下…私のゆ、夢を見るとか言って……そんな…一緒に過ごすなんて、恥ずかしいじゃないですか!」

「………」

「なっ、何笑ってんですか!」

しまった。
思わず笑ってしまった。

ずっと耐えていたが、ついに我慢ならなくなった。


あーなんでこんなに可愛いのだろう。

自分で言って自分で照れる夕鈴。

犯罪的可愛さだ。

これで無自覚なんだから…ホント参るよ。


僕はほがらかに笑うと、目の前の可愛い生き物を再度抱きしめてしまった。













「君を抱いて眠ったら、君の夢見られるよね」

「………」

「楽しみだなぁ」

「い、嫌がらせですか……」

抱えた夕鈴から、か細い声が聞こえる。


「違うよ、君に嫌がらせしたことないよね」

「……こ、これは違うんですか?」

夕鈴ならば、非難する声でさえ可愛く響く。僕は満足気に微笑むと、夕鈴をじっと見つめた。

「もちろん違う」

「………」


ここは庭園の中心だ。

妃の部屋から移動して、今は花咲き乱れる庭園を歩いていた。腕の中には愛しい君。

結局なんだかんだと彼女を言いくるめて、一緒に過ごすことの承諾にこぎつけた僕。
さっそく休息場所を探すために、ここへ来ていた。もちろんたっぷり甘い夫婦姿を後宮中に見せつけることを忘れずに。


「四阿がいいかな。それとも僕の部屋に来る?」

ふるふる…と夕鈴は頭を振る。

青ざめたその顔に少なからずショックを感じるが、でもやっぱり触れたくて、近づきたくて…そばに居たくて。


「夕鈴…やっぱり、君がいいよ」

「ゆ、夢には登場しませんからね!」

赤い顔して、しつこくまだ叫んでる。
僕が言う夢の話を、どこまでも素直に信じている。


話の口実なのに…ね。


素直で心優しくて、人を信じることを疑わない君。

この僕にいろんな感情を教えてくれた君。

この世界が鮮やかに色づいていることを、気づかせてくれた君。


君が居なければ…得ることのない時間だ。




心から安らげる場所があることを、これほど幸せと感じることはない。


これからも、この先もずっと、君がそばに居てくれる限り。


ね、夕鈴。








二次小説第77弾完了
独裁者ワガママ黒陛下の登場。最後こそ爽やかな感じに終わってますが、黒い感情ただ漏れの陛下でした(笑)
たまにはこんな彼もいいかと。タイトルどおり、君しか見えていないので。
計算高い彼は書いてて楽しいです。天然お色気兎の前では形無しですが…ホントお似合いカップルだと思います
最後までお付き合い、ありがとうございました☆



10:59  |  日常編  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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