FC2ブログ

11月≪ 2018年12月 ≫01月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031

2015.01.07 (Wed)

僕らの軌跡

僕らの軌跡

陛下目線短文。
日本の童話が出てきますが、気にせず読んでいただけると幸いです☆

ではどうぞ。


【More・・・】

「陛下、私のことを漢字一文字で表すと、どんな漢字ですか?」

「……急にどうしたの?」

「ふふ…心理占いです」

首を傾げる僕に、夕鈴は楽しそうに笑いかけた。

「占い…」

「どんな漢字かで、心理描写が読めるんですって」

「ふうん」

書巻を広げながらうきうき話す夕鈴に、僕は笑みを漏らした。こういうネタは世の女子の興味を引く最たるもの、夕鈴も例外ではないようだ。

昼餉を一緒に取って食後の休憩がてら、のんびりおしゃべりしていた時だ。急に書巻を広げてソワソワしだした彼女に、僕はまた何か面白いことが始まるのかとドキドキしていたが、まさか占いとはね…。

「下町で流行ってるんですって、友達がこの巻物、貸してくれました」

「へぇ」

知らなかった。
国を治めていても民が今一番興味を持っているものなど、知りたい情報というのはなかなか届かないものだ。
夕鈴の方が詳しいくらいだなぁ…などと皮肉を言うつもりはないが、やはりここは窮屈な場所だ。

辺境で好き勝手やっていた時代が懐かしい。

最近、昔を懐かしむ余裕もないほど政務漬けの毎日だ。
夕鈴と過ごす間だけ、こんな風に思い出すのは、彼女がここで唯一安心できる存在だからか。

ふと、いつものように夕鈴の長い髪に手を伸ばす。
夕鈴は突然伸びてきた手に驚き身をすくめたが、すぐに笑顔を浮かべた。

「どうなさいましたか?」

「ううん、夕鈴の髪はすべすべだね」

答えながら考え込む。


漢字一文字…か。


夕鈴は。

可愛い、明るい、面白い、優しい。
どの字をとってもしっくりくる。

快活、活発、活動的…「活」

情愛、親愛、可愛い、愛らしい、…「愛」

しばらく頭の中をめまぐるしく駆け回る漢字と格闘したが、なかなかこれ、というものがなかった。


「うーん」

「そんなに難しく考えなくてもよいですよ、ぱっと思い付いた漢字で」

「思い付いた漢字が多くて、それに…」

「それに?」

「あぁ、いや」

先ほど心理描写がどうとか。
彼女にいらぬ疑惑を持たせたくないし、回答は慎重にならざるおえない。
昔であればこんな些細なことを気にかけなどしなかったのに…。
夕鈴に嫌われたくない、避けられなくない、そう気持ちが強くなればなるほど…心に怯えが生じていく。

この僕が…こんな小さな少女ひとりに怯えているなんて。

ありえない状況に内心驚く傍らで、精一杯楽しんでいる僕も居て…。

これが、幸せというものだろうか。

他の者にとっては些細なことでも、こんなにも愛おしさを感じる。夕鈴の持つ力はすごいな。


「陛下?何を笑っているのでしょう…」

「え?なんでもないよ」

しまった。顔がめいいっぱい緩んでいたようだ、声を上げてはいないが笑っているのがバレてしまった。

僕は顔を引き締めながら夕鈴と向き合い、腕の中の巻物に視線を移した。


「ねぇ…それ見せて」

巻物に手を伸ばすが、するりとかわされてしまった。
珍しく軽業を披露する彼女。僕は恨めしそうに、巻物を睨みつけてしまった。

「睨んでもダメです!結果を先に知ってしまうのはよくないですよ」

「…気になっちゃって、ちょっとだけ見せて欲しいなぁ」

「ダメです。占いになりませんよ」

「………」

なるほど、これで分かった。

夕鈴は、占いを心底信じている。

軽はずみに答えなかった自分を心の内で褒めた。


「いや〜、一文字では表せないなぁ」

降参のポーズで夕鈴の反応を見る。

夕鈴は、僕の言葉にむっと頬を膨らまし、じゃあいいです…とそっぽを向いた。

あーまたそんな可愛く拗ねて…。
これでは構わずにはいられない。

夕鈴の膨れっ面を見て、僕は嘆息した。

時々、夕鈴は悪女なんじゃないかと思う。無意識に僕の心を悩ませ、気をひかせ、最後には操ってしまうのだから。

悪い兎だと思いつつ、それでも向かう気持ちが止まらない。

これぞ、天然のなせる技か…。

それとも、もうずっと前から、彼女に首ったけなのかもね。


夕鈴の拗ねた横顔をじっくり眺めながら、また漢字を思い浮かべる。

夕鈴は……。


「白、かな…」

「え?」

「夕鈴は何も染まらない白、純白なイメージだから」

「白…」

「僕が好きな色」

「白がですか?初めて…お伺いしました」

「うん、ずっと君に抱いていた色かもね」

昔に記憶を辿る。出逢った頃の彼女の姿を思い浮かべる。

夕鈴はあの頃から、純粋で真っ白だった。
例えるなら一晩かけて新雪が降り積もった庭園を見たときのような、降りやまぬ雨の後、水滴をいっぱいに含んだ新緑の眩むような青さを見たときのような、あの澄みきった美しい風景。

「白…雪の色ですね」

「うん…白兎みたいだね」

「それは、最後には毛をむしり取られるのでしょうか?」

「はは、そうかな」

稲葉の白兎の話だ。
子供の頃よく聞いた童話に、夕鈴はくすりと笑う。


「陛下ってば、意地悪ですね」

「いや、君が稲葉の白兎とかじゃないよ…」

誤解されたくないし、しっかり説明が必要だな。
これ以上拗ねる前に、僕は声を上げる。

「フワフワで、モコモコで、ぴょこぴょこしてて…とにかく可愛い」

「!?フワフワもこもこ、ぴょこぴょこ?それは…本物の白兎のことでは?」

「ううん、夕鈴のこと。本物よりも可愛いけどね」

僕がそう告げると、途端に可愛く赤面した夕鈴が頬を押さえた。

「私は…兎じゃありません」

「うん、兎より可愛いよ」

「冗談は…結構ですから」

赤い顔をそむけて、夕鈴は手の中の巻物を広げた。占い結果の確認だ。思ったよりも早い展開に、緊張が走る。


「えーっと、白をイメージされたあなたは…」

夕鈴が読み上げる。

「白は、清潔さ、崇高さ、純粋さを表し、生まれ変わる浄化を意味する」

「わー夕鈴にピッタリだね」

手を叩いて喜ぶと、夕鈴は照れたように微笑んだ。

「雪原のような真っ白な心を持ち癒しと和みを与える…これ、大げさですね」

夕鈴が怪訝に顔を歪めたので、僕は慌てて否定する。どこまでも…純粋無垢な彼女にピッタリじゃないか。僕がそう言うと、まるで信じない表情で、続きを読み上げた。

「何も染まらない白、それは同時にどの色にも混ざり合う可能性を秘めている。相性の良い色は紺…」

そこまで言った後、夕鈴は顔を上げて僕をじっと見つめた。

「?」

「陛下と相性いいみたいです」

僕の衣装を見て、夕鈴は答えた。僕は好んで濃紺の衣装を着ているので、僕を表す色と言えばそうかもしれない。

「そうだね」

なんだか嬉しい。相性が良いと、よそから言われると、思いが強固になる。
夕鈴と僕は相性が良いんだ。願わくは誰も介入できないほど、相性の良さをたっぷりと見せつけたいものだ。

なんだか、良い結果じゃないか。僕は満足気に微笑むと、夕鈴の横に立ち巻物を覗き込んだ。


「信用に足る結果だね」

にこにこと笑いかけると、複雑そうに見返す夕鈴。

「陛下…近いですよ」

「いいじゃない、相性良いいんだし。僕としてはより仲良くなりたいなぁ」

そう答えると、夕鈴はさらに赤く頬を染めた。白兎もとい赤兎の出現だ。可愛い姿に破顔すると、隙をついて抱きしめた。

「夕鈴ー」

なんて可愛らしい生き物。もう誰の目にも触れさせたくはない。
僕は夕鈴の腰に腕を回して、兎が逃げ出さないように強固な囲いを作る。
いつも、高い壁を作っては逃げ出され、また追いかけ…その繰り返しだったから、今度はうんと丈夫に作らないと。

「へ、陛下待って待って。続きがあります」

バタバタと慌てて僕を押し返しながら、夕鈴が言う。

「続き?」

不満気に声を漏らすと、仕方なしに腕を緩めた。夕鈴が巻物を広げた。

書巻を覗き込む夕鈴の表情がピタッと固まった。顔から赤みはとっくに消えて、一点を集中して見つめている。

「……」

なぜか沈黙が流れた。

「え?」

なんだ…?心をかすめる不安。夕鈴がこういう顔する時って、良くない展開の表れ。この良い雰囲気を継続させたい僕としては、気が気でなかった。

「ど、どうかした?」

「……」

「夕鈴?」

ぱっと顔を上げた夕鈴が僕を見た。しばらくじっと見てから、また顔を伏せる。

「な、なんでもないです…」

絶対ウソだ。なんでもない顔じゃないよ。でも追及したところで、頑固者の夕鈴が口を割るわけはないし。おそらく否絶対に、占い結果のせいに違いない。…となると。

「夕鈴…それ見せて」

「ヤ、です」

夕鈴は頑なに拒否すると、書巻で顔を隠した。奇想天外な行動に、また首を傾げる僕。

よ、読めないよ、夕鈴…。

夕鈴は難しい。ずっと前から感じていたことだけど、その認識は今も変わらない。

「な、なんて書いてあったの??」

「なにも…私、これで失礼します」

「えぇ!急にどこ行くの?」

「バイトの時間です」

「待って」

僕は逃げ出そうとする彼女の手首を捕まえ、顔を覗き込んだ。

「バイト?君のバイトは臨時花嫁でしょ。僕のそばに居て僕に笑いかけるのが仕事だ」

「そちらではなく…掃除婦の方です、手をお離しください」

「いやだ」

夕鈴の言い草に途端に不機嫌になる僕。手首を離すことはない。是が非でも顔を見せない彼女に、苛立ちは頂点を迎えていた。

「顔を見せよ」

僕と夕鈴を隔てる巻物が腹立たしい。極限まで顔を近づけて、夕鈴を覗き込んだ。つんと紙独特の香りが鼻に付く。

「夕鈴…」

「そ、そんなに近づかないで」

「……」

なぜ分かる。気配か。彼女相手に気配を消すわけにはいかないし、僕は巻物を夕鈴の顔から剥がしにかかった。

「や、やめてやめてー」

「ダメだ。顔を見せるまで許さない」

「ぎゃー」

ぎゃーって。叫び声に内心笑いながらも、巻物に力を込める。夕鈴と僕では力の差は歴然なため、すぐに顔はお披露目になった。

「あー…」

涙でぐしゃぐしゃ。顔は赤いし、なんだか熱もありそう。

僕は夕鈴の涙を指先で優しく拭う。

「ひ、酷いです…ヤダって言った…のにっ…」

「ゴメンね。泣いてる君を放っておけないよ」

そんな態度で僕のそばから逃げ出す君を見逃して、良かった試しが無い。絶対に逃すものか。

夕鈴は何がそんなに悲しいのか、涙をいっぱいに溜めて肩を震わしている。

「夕鈴…君に泣かれると僕はどうしてよいか分からなくなる。お願いだから理由を教えて」

夕鈴はしばらくの沈黙の後、巻物をそろりと差し出した。僕はほっと受け取ると、中をあらためる。

えっと。目で追う気持ちが急くが、慎重に文字を読む。相性の良い色は紺。ここまでは知ってる。続きだ。

あなたを白に例えた相手が異性の場合、相手は自分の色に染めたいと思っている可能性が高い。
…え……可能性が高い?はぁ!!?

あなたが好意を寄せる相手ならば満身で進むが吉。そうでなければ距離を置くのが良い。
!?なんだこれは…。

とんだ占い結果だ。どんな表情を浮かべれば良いか分からず、僕は目を細めたまま固まった。なるほど、夕鈴の気持ちが今なら分かる。これでは顔を見るのがはばかれる。隠すはずだ。

だが…先ほどの涙を溜めた赤い顔を思い出す。ちょっとでも好意があるから、ああいう顔になったのではないか。

「夕鈴…」

顔を間近で合わす。
自分色に染めたいなんて、気持ち悪い男だと思われてないことを信じて。

「占い、だからね」

「分かってます」

「あ、当たる時と当たらない時が…」

「分かってますよ、陛下」

夕鈴は先ほどよりも焦点が定まった目で僕を見据えた。

「変に動揺してすみませんでした」

「ううん」

半ば当たっているせいか…動揺の理由を聞けない僕。夕鈴は夕鈴のまま、純粋無垢な彼女で居て欲しいと思う反面、境目が分からないほど僕と混ざり合って欲しいと思う気持ちもあって…そこまで考えてため息を吐いた。先走り過ぎた。こんな馬鹿な気持ちは早々に蓋をするべきだ。

「距離…置かないでね。寂しいから」

警戒を解きたい一心で、子犬の表情ではにかんだ。

「置きませんよ。好意…ありますから」

「……」

そんなセリフ、そんな赤い顔で言わないで欲しい。勘違いと分かってても突っ走りそう。
僕は頬をかきながら、照れ笑いを浮かべる。やっと通常に戻った雰囲気を壊さないよう、さらりと軽くお礼を述べた。

「好意があるなら進むが吉だって」

「う、占いは信じていません」

「そうかぁ、残念だなぁ」

「……」

強張りが無くなった身体を引き寄せる。ふわりと漂う香りは、夕鈴が放つ優しい香りだ。
別の香りも嗅いでみたいが…まだ早いか。彼女の花の心を失わず気持ちを奪うにはまだ早い。

今は、この関係を壊さないように、大事にしよう。


「ねぇ夕鈴…顔見せて」

「ヤ…です」

赤く染まった愛らしい顔がぷいとそっぽを向いて、僕はいつものように笑った。






二次小説第79弾完了
わーたくさん書いたな、我ながら(*^^*)次80弾記念です!中途半端(笑)
最近の原作の熱々ぶりに、ミケの小説もヒートアップ気味ですが、今回は抑えました。
大好物の陛下片思い、ちょっと夕鈴にも気持ちの自覚が芽生え始めた頃をイメージしました。
楽しんでいただけたら嬉しいです☆

01:09  |  陛下片思い編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://mike3aoi.blog134.fc2.com/tb.php/133-a942711c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | HOME |