ミント日和 【狼陛下の花嫁二次小説】
白泉社、可歌まと先生のコミックの二次創作小説を書いてます。 月刊LaLaにて連載中の「狼陛下の花嫁」が中心となっています。
2010.08.04 (Wed)
優しい嘘
「優しい嘘」
「星の夜にはあふれる嘘を」初二次小説です
可歌先生の作品の中でも、本当に大好きで、思わず書いてしまいました。
短編で、ルグオーツ目線。
ではどうぞ。
***************
初めて逢った君は、はかなくて繊細だった。
間違って触れてしまったら、濃い闇の中簡単に溶けて壊れてしまいそうなほど。
人々のざわめきと騒がしい音楽が鳴り響く中、君はひとりバルコニーに立ち尽くしていたね。
その横顔があまりにも僕の心を捕らえて離さないから。こんな気持ちは初めてだから。
本当に戸惑ってしまって視線を伏せた瞬間に、君を見失った。
まるで羽根をはやした妖精のように、一瞬で消えてしまったんだ。
二度目に逢った君は、父親思いの優しくて強い女性だった。
冗談と嘘で塗り固めた僕の前でも、決して意志を曲げようとはしない芯の強さは、正直うらやましかったよ。
僕の中で生まれた感情が知りたくて、僕は何度も君の元へ足を運んだ。
君に逢うたび君が見せる、優しく笑う顔や、恥ずかしそうにうつむく表情や、戸惑うように伸ばされた手。
僕が見る君は、本当にキラキラと輝いていたから、あの夜の星空よりも美しく瞬いていたから、僕はドキドキを抑えるのに必死だった。
君の笑顔を見るたび思う。
君はあのとき涙を流してはいなかっただろうか。
君はあのとき傷ついてはいなかっただろうか。
君の受けた悲しみや苦しみ、どうしても取り除きたくてついた嘘。
君の本当の笑顔が見たくて、話した冗談。
本当はあのとき言いたかったんだ。あの星の降る夜に、君が心の底から笑えるような冗談を。
ティルナ、僕はずっと気づかないふりをしていた。
僕の中で生まれたこの気持ち。君へ向かうどこまでも真っ直ぐな気持ち。
だってこの歳で一目惚れなんて…恥ずかしいだろ。
でも、君に逢うたび確信に変わっていったから、もう気づかないふりは出来なかった。
あの夜のことは忘れない。
君という、かけがえのない存在に出会えた奇跡。
神様なんて信じてないけど、どうしても誰かに感謝せずにはいられない。
いっそのこと…女性を見る目がなくて、ついでに言うとスカーフの趣味がかなり悪い元婚約者殿に感謝したらいいのかな…なんてね。
***************
僕は文字を書く手を止め、筆を置いた。
揺れる船室で書き始めた手紙は、すでに長文になっていた。
「ちょっと長すぎたかな…」
伝えたいことがたくさんありすぎて、彼女への手紙はいつも長くなる。
彼女に初めて逢った頃より約半年。この船旅もそろそろ終わる。
今度こそ、去り際に言った求婚の返事をもらいに行こう。
伯母からは、毎日のように結婚の報告はまだか…とせがまれている。結婚するのは僕たちであって、伯母ではないのに。それだけ彼女が気に入ったってことかな。
僕は窓から海を眺めた。穏やかに順調に航海は進んでいる。
君に逢える日も間近。
君に逢ったらなんて言おう。
やっぱりベタに『逢いたかったよ』かな。いやいや…ここは、『逢いたかったよ、僕の妖精』かな。
やっぱり、真っ先に君の笑い声が聞きたいからね。
僕の冗談に、歯の浮くような甘いセリフに、木漏れ日のように笑ってくれることを信じて。
***************
ティルナ、連れて行きたいデートコースをたくさん見つけたんだ。
今度帰ったときは、無理にでも付き合ってもらうよ。君と行きたいところが多すぎて、本当に困ってしまう。
旅の想い出もたくさん用意した。
君に逢うのがとても楽しみだ。
そのときはどうか笑顔で迎えて欲しい。
僕の大切な人、ティルナ
ルグオーツより
***************
「星の夜にはあふれる嘘を」第1弾完了です
狼陛下の単行本2巻に収録されています。
ティルナの悲しみを取り除くためにわざとついた嘘に、最後は泣かされてしまいました。
こんな嘘なら、ミケはいつでも大歓迎です(笑)
最後までお付き合いいただけたことに感謝
気が向いたらまた書きたいです。
「星の夜にはあふれる嘘を」初二次小説です

可歌先生の作品の中でも、本当に大好きで、思わず書いてしまいました。
短編で、ルグオーツ目線。
ではどうぞ。
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初めて逢った君は、はかなくて繊細だった。
間違って触れてしまったら、濃い闇の中簡単に溶けて壊れてしまいそうなほど。
人々のざわめきと騒がしい音楽が鳴り響く中、君はひとりバルコニーに立ち尽くしていたね。
その横顔があまりにも僕の心を捕らえて離さないから。こんな気持ちは初めてだから。
本当に戸惑ってしまって視線を伏せた瞬間に、君を見失った。
まるで羽根をはやした妖精のように、一瞬で消えてしまったんだ。
二度目に逢った君は、父親思いの優しくて強い女性だった。
冗談と嘘で塗り固めた僕の前でも、決して意志を曲げようとはしない芯の強さは、正直うらやましかったよ。
僕の中で生まれた感情が知りたくて、僕は何度も君の元へ足を運んだ。
君に逢うたび君が見せる、優しく笑う顔や、恥ずかしそうにうつむく表情や、戸惑うように伸ばされた手。
僕が見る君は、本当にキラキラと輝いていたから、あの夜の星空よりも美しく瞬いていたから、僕はドキドキを抑えるのに必死だった。
君の笑顔を見るたび思う。
君はあのとき涙を流してはいなかっただろうか。
君はあのとき傷ついてはいなかっただろうか。
君の受けた悲しみや苦しみ、どうしても取り除きたくてついた嘘。
君の本当の笑顔が見たくて、話した冗談。
本当はあのとき言いたかったんだ。あの星の降る夜に、君が心の底から笑えるような冗談を。
ティルナ、僕はずっと気づかないふりをしていた。
僕の中で生まれたこの気持ち。君へ向かうどこまでも真っ直ぐな気持ち。
だってこの歳で一目惚れなんて…恥ずかしいだろ。
でも、君に逢うたび確信に変わっていったから、もう気づかないふりは出来なかった。
あの夜のことは忘れない。
君という、かけがえのない存在に出会えた奇跡。
神様なんて信じてないけど、どうしても誰かに感謝せずにはいられない。
いっそのこと…女性を見る目がなくて、ついでに言うとスカーフの趣味がかなり悪い元婚約者殿に感謝したらいいのかな…なんてね。
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僕は文字を書く手を止め、筆を置いた。
揺れる船室で書き始めた手紙は、すでに長文になっていた。
「ちょっと長すぎたかな…」
伝えたいことがたくさんありすぎて、彼女への手紙はいつも長くなる。
彼女に初めて逢った頃より約半年。この船旅もそろそろ終わる。
今度こそ、去り際に言った求婚の返事をもらいに行こう。
伯母からは、毎日のように結婚の報告はまだか…とせがまれている。結婚するのは僕たちであって、伯母ではないのに。それだけ彼女が気に入ったってことかな。
僕は窓から海を眺めた。穏やかに順調に航海は進んでいる。
君に逢える日も間近。
君に逢ったらなんて言おう。
やっぱりベタに『逢いたかったよ』かな。いやいや…ここは、『逢いたかったよ、僕の妖精』かな。
やっぱり、真っ先に君の笑い声が聞きたいからね。
僕の冗談に、歯の浮くような甘いセリフに、木漏れ日のように笑ってくれることを信じて。
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ティルナ、連れて行きたいデートコースをたくさん見つけたんだ。
今度帰ったときは、無理にでも付き合ってもらうよ。君と行きたいところが多すぎて、本当に困ってしまう。
旅の想い出もたくさん用意した。
君に逢うのがとても楽しみだ。
そのときはどうか笑顔で迎えて欲しい。
僕の大切な人、ティルナ
ルグオーツより
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「星の夜にはあふれる嘘を」第1弾完了です

狼陛下の単行本2巻に収録されています。
ティルナの悲しみを取り除くためにわざとついた嘘に、最後は泣かされてしまいました。
こんな嘘なら、ミケはいつでも大歓迎です(笑)
最後までお付き合いいただけたことに感謝

気が向いたらまた書きたいです。
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