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2015.12.10 (Thu)

冬紅葉

冬紅葉

陛下目線の短文。冬ですね。

ではどうぞ。


【More・・・】


「イチョウか…」
頭の上にはらりと落ちてきた黄色い葉に、私は目を細めた。
広葉樹が葉を落とし、草が枯れると冬が来る。
色づいた葉が散り始めると、風景は一気にもの悲しいものになった。

「秋も終わりですね」
隣から声が聞こえた。まるで色を持ったように、鮮明に私の耳に届く。
夕鈴の声は色付きだ。黄色、赤、白、緑。声を通していろんな色が見える。

「冬が来るとまた、雪が降りますね」
嬉しそうに話す姿に、つられて破顔する。
その横顔をずっと見ていたいと思わせてしまうのは、後にも先にも彼女だけだ。

「陛下?」
視線に気づいた夕鈴がこちらを向いた。
大きな瞳が不思議そうに、私を覗き込んでいる。

「君は…」
続きが浮かばず声を閉ざすと、夕鈴が苦い顔をした。
「また意地悪ですか?」
「違うよ」
私は慌てて答えた。せっかく直った機嫌を、また損ねたくはない。
昨日、ささいなことで言い合いになって、やっと今日になって口を聞いてくれた彼女だ。

「君と迎える冬も何度目かな…と思っただけだよ」
咄嗟に取り繕ったが、夕鈴はすんなり納得したようで、元通り顔を緩めてくれた。
ほっと安堵する。

それにしても…。
「またって何。僕そんなに君に意地悪してないよね…」
ははは…笑い話のつもりで言ったが、予想した反応は返って来なかった。

「いっつも意地悪じゃないですか…」
小さな声を漏らしてぷいっとそっぽをむく。
その仕草が超絶にかわいいと思ってしまうのだから、どうしようもない。

僕の中で日ごと大きくなっていく夕鈴の存在。
それはすでに、自分で制御できないところまできていた。

最初の印象は気の毒な町娘。
いつか外の世界へと帰ってしまう一時の存在。
僕にとってなんでもない、長い人生の中で振り返って思い出すことなどない人間のはずだった。

二度目の印象は面白い女の子。
落ち込んでいたと思えばすぐにはしゃぐ。悲しんでいたと思えばすぐに喜ぶ。怒っていたと思えばすぐに笑う。
いつも元気で一生懸命。ときに空回りしては気を落としている。だけど滅入ることなく前向き。向上心は高く勇気いっぱい。

三度目の印象は可愛くて愛しい僕の妃。
気づけばいつも独りだった僕の傍らに居る。
花のように笑うとそこだけ空気が変わる。色彩のない風景が色を持つ。音のない世界が声を出す。

四度目の印象はかけがえのない存在。
くるくると変わるその表情をいつまでも見ていたいと願う。そばにいて、笑いあって、いつも何度でも、逢いたいと願う。
君を憂いるすべてのものをなぎ払い、君を悩ます要因を取り払いたいと思う。
君が笑顔を向けるのは僕ただひとり、君の心を占めるのは僕ただひとり…そんな風に思ってしまう。

五度目の印象は――――――。


そこまで考えてはっと気づいた。
夕鈴がこちらをじっと見つめていたから。

急に黙り込む私に不思議を感じたのだろう、こんな風に彼女に見つめられるのも悪くはない。

「陛下、もしかしてお疲れですか?」
「いいや、そんなことないよ」
夕鈴の気持ちが気遣いに転じたので、私は頭を左右に振った。

「君と居るのに、疲れるわけがない」
軽く笑うと、またそんなこと言って…と赤い顔が膨れた。

くすりと笑っていたら、目の前にまた黄色く染まった葉が落ちて来たので、手に取った。
そのまま彼女の髪に挿す。
「?」
「秋も終わりだ。こうやって来年もそのまた来年も、君と一緒に季節を迎えたいね」
「はい!」
「……」
またこうやって絵空事をうそぶく。
終わりが来ることを知っていても、お互いに知らないふりをして。

「昨日はごめんね。機嫌は直ったみたいで良かった」
もう二度と、彼女に無視される苦痛を味わいたくなくて、丁寧に謝った。

夕鈴は難しい。怒りの着火点がまだよく分かっていないためだ。よく分かっていないくせに、自粛することをやめない。

「陛下が意地悪を言わなければ、私の機嫌はずっと良いですよ」
「そうか。でもね…」
私はすっと手を伸ばすと、夕鈴の髪を一房すくい上げた。いつものように唇に当てる。変わらない感触に、私の心はまた嬉しくなる。

「好きな子はいじめたいものだよ」
「……っ」
狼の視線で捕縛すると、夕鈴は途端に身を固くした。
まだ私に慣れていない証拠だ。ウサギが全身の毛を逆立てて、私を警戒している。
こういう反応を見てほくそ笑んでいるのだから、自分でも本当にたちが悪いと思う。

「な~んてね」
「…っ、もう!」
夕鈴はほっと息を吐いたしばらく後、口をとがらせて怒った。
ぺろりと舌を出して謝ったが、怒った彼女は立ち上がった。私の前に仁王立ちし、精一杯睨みつけている。

その顔は逆効果だよ…と心の中で呟いて、私は彼女の手を握りしめた。

「ごめんね、ゆうりん」
夕鈴が最も不得手な子犬で謝ると、気持ちが傾いたようだ。表情がふいに緩んだすきを狙い、ぐいっと手を引っ張った。
バランスを崩した彼女をすぐに抱きしめ、そのまま高く抱え上げる。

「!?」
「そんなに怒らないでよ」
「ちょっ。陛下!やっぱり楽しんでますよね!?」
なにやら叫んでいたが、気にせずそのまま歩き出した。

君の言うとおり、楽しくって可愛くって愛らしくて仕方ない。

風が吹いて、木々が大きく揺れる。夕鈴の髪の上でも、黄色が賑やかに揺れていた。
私たちを後押しするように、色とりどりの葉が舞い上がっては落ちる。



「お、降ろしてくださいよ」
夕鈴はばたばたと抵抗をしていたが、人が集まる王宮に出ると、周囲を気にして大人しくなった。
頬を袂で隠して、初々しく照れる妃像を見事に演じている。澄ました横顔にちょっかいをかけてやりたくなったが、ぐっと我慢した。
これ以上は嫌われてしまう。怒られても良いが嫌われるのは良くない。

「あ、あとで覚えておいてくださいよ!」
こそこそ耳元で呟く彼女。

「ふ…」
どんな仕返しがくるのやら…。愚かにも楽しみだと感じる私は、本当にどうしようもない。

心底、妃に夢中なのだ。

妃に溺れ国政を傾ける君主を嫌と言うほど見てきたというのに。二の舞を演じる私は、やはり愚かだ。血は争えない…とたぬき大臣たちに文句を言われてもやむを得ない。

彼女と居るときだけ、こんなにも心が満たされる。
全身に血が通う。たくさんの感情が生まれる。
まるで忘れていた感覚を、ひとつひとつ繋ぎ合わせるかのように。
ゆっくりと、ゆっくりと。

私は王ではなく、黎翔というひとりの人間になる。




いつか終わりを迎える。遠くない未来だ。

この瞬間は、そばに居る彼女を感じたい。

今この時を、一緒に過ごすこの時を、いつまでも心に留めておくために…。








二次小説第85弾
最近めっきり寒くなってきましたね。陛下の夕鈴を思う気持ちが強いですね。ミケの大好きな展開です(*^^*)
後半はただ痴話喧嘩してただけでしたね。あー甘い甘い、ごちそうさまです。好きな子はいじめたいって…子供かっ!(笑)
13巻の感想をアップしようかと思ったら、先に短編を書きたくなってしまいました。
最後までお付き合いありがとうございました(*^^*)




12:29  |  陛下片思い編  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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