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2016.07.11 (Mon)

うるわしきひと

うるわしきひと

新婚のふたり。
また陛下に振り回されている夕鈴目線です。

ではどうぞ。


【More・・・】

永久に永遠に

本物の妃になって欲しいと言われたときに、彼から言われた言葉。

ずっと一緒だと、まるで誓いの言葉のようで、感極まって涙が出たのを覚えている。

隣に立つことを許されたこと、心を開いてくれたこと、手を伸ばしてくれたこと、いろんな喜びがどっと押し寄せ、照れくさそうに笑う陛下の顔は、溢れる涙のせいで霞んで見えた。


あの日より

妃として、妻として、初心者ながら、懸命に日々を過ごしている。


元々は庶民出身なので、妃仕事も仕草も立ち居振る舞いも、常に注意されてばかりだが、私は努力することを諦めない。
少なからずそのたくましい根性のおかげで、今の私と陛下の関係があると自負している。

臣下たちとの優美な会話も、お客様のもてなしも、歯の浮くような陛下との甘いやりとりも、すべてどんとこい。
正式に後宮入りした後、意気込み新たに、というか今よりも気合いを込めて、妃になると陛下に宣言した。

困難なときも、病めるときも、健やかなるときも。

共に生き、共に支え、共に心を尽くすことを。


あなたに誓った。


だから私は負けない。この苦境を。



「……ぐぐ」

私は力の限り、目の前で迫る狼の顔を押し続けた。

「ご…政務に……っ、お戻りくださいっ」

「まだ休憩中だ」

もう一方の手はすでに彼の手中にあり、身体も力強い腕に拘束されているため、身動き出来る唯一の場所だ。負けるものかと、必死で押し返す。

「陛下…」

ぐいぐいぐいと押し返すが、なおも狼の顔が近づいてくる。長いまつげが落とす陰影が妙に色っぽくて、私は息を飲んだ。
この端正な顔立ちは、どんなに見続けても、見慣れることはない。

「何をいやがる?」

「いやがってはおりませんよっ」

「ではなぜ拒む?」

「む………」

状況的に拒んでないとは言えないが、決して拒絶しているわけではないのだ。何をどう言おうとも、彼に伝わるとは思えないが。

「夕鈴」

「は、はい」

「手をのけて」

「……っ」

手をのけた後のことを思うと、身震いした。
その甘さたっぷりの展開を想像し、私は顔から火を出した。

「夕鈴、その顔は逆効果だ。私を誘うな」

「さ、誘ってませんーー」

半泣きで叫ぶと、やっと手が緩んだ。安堵したのもつかの間、嫌な予感が脳裏をよぎる。
案の定、私の不得手な可愛い顔が現れた。

「僕のこと、嫌いなの?」

子犬の彼が、心底寂しそうに首を傾げた。ぶんぶんぶん、顔を左右に振る。

「じゃあ、どう思ってるの?」

「どう…」

何を言わせたいのか、意地悪な瞳を前にして、気づかない私ではない。でも、恥ずかしさが勝ってしまい、どうにも声が出せず、金魚のようにぱくぱく口を前後する。

「夕鈴。答えよ」

子犬は効果が無いと判断したのか…、すぐに姿変わりした陛下は、すっと目を細めた。
漆黒の瞳が私を捕らえる。紅蓮を宿す刹那の視線に、包まれ、焦がされ、溶かされていく。

「夕鈴、君を愛している。君の私への思いを、答えよ」

「……あ」

「ん?」

「……あい…」

「……」

「あ、あいして…います」

ぱぁっと輝く顔。まるで別人のように光を映す表情に、私はほっと息を吐く。

「僕もだ、夕鈴」

一瞬の私の隙をぬって、唇に触れる吐息。慣れない温度と柔らかさに、目の前がちかちかとくらんだ。

「夕鈴」

「…っんん」

「夕鈴、大好き」

「……っ」

息が苦しい。彼の思いの深さに、どこまでも沈んで、溺れていきそう。

「夕鈴…」

「は……ぁ」

彼が言わんとすること、瞳が語っている。
私は、観念して強ばった身体から力を抜いた。

「私も…ですよ」

「うん!」

昔の私であれば、少し前に気絶していた。我ながら成長したものだ…と全身で愛を紡ぐ彼を前に、遠い目をした。














「また、負けました…」

「それは負けたとは言いません」

私の呟きに、容赦なくメガネ上司が言いのけた。
私たちの目の前には、たくさんの書物と文献。硯と羊皮紙。これから、妃修行という名の勉強会が始まる。

かりそめの妃と本物の妃。

立場の大きな違いを身をもって実感したとき、私は不安になった。その隙間を埋めるために、まずは知識を得ようと考えたのだ。
自ら望んで具現化したこの勉強会は、最近に入って習慣化していた。
元々勉強は好きなので、たとえ鬼教師であったも苦にはならないが、頭を大きく占める憂い事があっては、すすむ勉学も一向にはかどらない。

だから、相談しようと話し出したのだ。

「私、妃なのに、陛下に調子を狂わせられてばかりで…。なんか、二人きりでいるときの甘さが、もうすごくて」

「のろけるのはやめなさい」

「のろけていません!」

私は真剣なのだ。真剣に悩んでいるのに、この悩みは、なぜか誰にも理解されない。

「何が不満なんでしょう?新婚ならではで、実に結構」

「いやいや、度が過ぎているのはどうかと。ご政務に支障が出るのは、李順さんも嫌でしょう」

同意を求めて問い返したが、良い回答は返ってこなかった。

「ご政務は心配ありませんよ、いつも以上に精力的にこなされておいでです」

「そうなのですか!?」

だとしたら底知れぬ体力だ。私は最近の陛下を思い浮かべると、がくっと肩を落とした。

休憩の合間は常に後宮に居て、政務の直前まで離してくれない。時間が出来たと言っては外へと遊びに連れ出す。朝も昼も夜も…一人になる間もなく、彼と顔を合わせている。

「休憩だと言っては、後宮に来られていますよ。多くないですか?」

「まあ休憩は増えましたが、あなたと逢った後は、すこぶるお元気なので、特に問題ありません」

「……私、妃になってからは、もっときちんとしたいと思っていたのですが」

「……?」

「ホント、陛下の気合いっていうか、圧が凄くて…。どうもこうも、言わされてしまって」

「言わされる?何をです?」

「いろいろと!恥ずかしいことをです。私は、もっとこう、毅然な淑女になりたいのに…」

「あなたに毅然さは求めておりませんが」

「そんなこと言わないでくださいよ!私の理想なんです。クールビューティな感じ?ですかね。どんなときも焦らず、動揺などしない、

いつでも陛下を影から支えるスペシャリスト的な?」

「意味が分かりませんが…」

「縁の下の力持ちって言うじゃないですか?」

「あなたは十分力持ちですよ」

李順のため息が、妃の部屋に響く。私は聞いていないフリをして、話を続ける。

「なのに…。私はいつも陛下に負けて、赤面もののセリフを強要されて、それだけじゃなくて」

言いかけて、顔が真っ赤に染まる。想像するだけでもうダメ。まだこの状況に慣れていない証拠だ。
これだからのろけていると思われても仕方ないのだ…と李順の小言が飛んできた。

「要するに、陛下のペースに巻き込まれているとおっしゃりたい?」

「そう!その通りです」

その通り、さすが陛下の側近だ。私の言いたいことを一言で解決してくれる、今日ほど優秀だと感じたことはない。

「やはり、のろけではないですか」

「……な」

なぜ分からないのか。


すっかり諦めた私は、ため息と共に天を仰いだ。
















「ゆ~りん」

後ろから抱きつく夫。
そして、その様子を微笑ましそうに見守る侍女たち。
おなじみの光景だ。

「おかえりなさいませ、陛下」

私は背筋を正して、緩んだ顔の陛下を見上げた。
ちょっと前まで、顔なじみの侍女の前や李順の前でさえ、このように緩んだ姿を見せることは無かったというのに。
随分と解きほぐされた態度に、私はくすりと笑みを浮かべた。

「何笑っている?」

顔を寄せて、彼が尋ねる。いちいち近くて、またどぎまぎした。

「いいえ、今日もおつかれさまでした」

にっこり、完璧スマイルで答える。

「お食事はお済みですか?お茶はいかがですか?もうお休みになられますか?」

早く侍女たちを下げて欲しい一心で、私は早口で質問攻めをする。
陛下は一瞬黙った後、にっと微笑んで、私の髪に口づけを落とした。

「愛い妃よ。君はいつでも可愛い」

「……っ。左様ですか」

陛下は私の頭をゆっくり撫でた。あまりに嬉しそうで、照れくさくなる。

「今夜はゆっくり話したいな」

「それでは、お茶を用意しましょう」

陛下に着席を促した私は、侍女たちにお茶をお願いする。お茶を運び終わったら退席するよう言い残し、陛下の元へと戻った。





「さっきは…何を笑っていたの?」

席に戻るや否や、すぐに尋ねられる。よほど気になっていたらしい。

「いえ…。最近の陛下は、人前で良く子犬になるなぁ…っと思いまして」

「そうかな?」

「はい。昔は、私の前以外では頑なに隠しておいででしたが、最近では…狼の姿を見る機会も稀になったというか…子犬の姿を多く見せておられます」

名残惜しいわけではないが、なんとなく昔のことが懐かしく思い出されて、私は目を細める。
まるで切っ先がとがった鋭い刃のように、触れては傷を負ってしまう腫れ物のように、彼と他人との間には高くて厳しい壁があったと思う。

他者を寄せ付けない孤高の王、存在は気高く崇高で、決して狭まることのない溝が、どこまでも続いていた。
あの頃を思うと苦くもあり、切なくもある。
だが、それもすべて含めて今の彼があるのだとすると、必要なことであったに違いない。今はそう思える。


「そうだったかな?」

「はい。それがなんだか不思議で、つい笑ってしまいました」

「ふうん」

にやり、陛下が嬉しそうに笑う。

「?」

「それって……夕鈴、嫉妬だね」

「………は?」

「大丈夫だよ」

「……え、えっと、はい?」

何が?

「僕が子犬になるのは、君の前だけだから」

「あの…お話が見えません」

「皆まで言わずとも分かってるよ。夕鈴が嫉妬してくれるなんて、幸せだなぁ」

愉快気な声が、私の耳に届く。

「はい??いや、違いますよ。私以外にも心を開いてくれたんじゃないかと思って…」

嬉しくて…という言葉は、陛下に打ち消されて言えなかった。

「それはないよ」

「……」

そうなのか…、勘違いだと分かり、小さなショックを受ける。少なからず人を信じようする兆候が見られたのではないかと期待したが、杞憂であったのか。

「君しか見えていないから」

「あ…そうですか」

さらりと…さらりとこういうことを言う。私の動揺などおかまいなしに。

「だから不安に思うことは無いよ。そんな…怒りで笑ってしまうなんて…」

「や、だから違いますよ」

普通、怒っている人は笑わない。そう言うと、鼻で笑われた。

「だから。怒りを通り越して、笑っちゃったんだよね?」

「はい?」

ありえない。

「なんですか、それ。そうじゃないですよ、私は怒ってなどいません」

つい笑ってしまったのは、微笑ましかったからだ…そう付け加えたが、陛下の考えは変わらない。

「照れなくてもいいのに」

手を握り締める彼。やだ、全然…通じていない。

「夕鈴、心配いらないよ。僕は、君だけだから」

「……」

“君だけ”。

それを言うなら、私だって、“あなただけ”だ。ついつい、しんみりと流されそうになるが、そうじゃない。
これじゃあ、また負けてしまう。李順の言葉を借りるなら、彼のペースに巻き込まれ、術中にはまって抜け出せない。
流され、深みに落ちて、真髄まで溶かされる。


なんて危険なんだろう。


「君だけ、愛してるよ」

陛下がささやく。びっくりするほど優しい声音に、私の胸は高く鼓動を刻む。

「夕鈴、君は?」

またこの問いかけだ。
また、言わされてしまう。

意地悪な狼の眼が、私を捕らえようと手ぐすね引いて待っているのが見える。


「夕鈴、答えよ。君は私をどう思う?」

「……」



永久に永遠に

私は努力することを諦めない。
苦境も、乗り越えると。


あなたに誓った。



「私は負けません!」

「え?」

「私は負けません、どんな困難があっても、負けないんです!」

「困難?夕鈴、そんなに気持ちを言うことが困難なの?」

「恥ずかしいんですよ」

「……なぜ?」

なぜかと聞くあたり、陛下らしい。

陛下にはときどき、常人の考えの及ばないところがある。

「普通恥ずかしいものです。とにかく、私は恥ずかしいんですよ、好き…とか愛してるとか。でも、あなたが聞きたいって言うから、私、いつも恥ずかしさと戦っているんです」

「そうなんだ…ごめんね、気づかなくて」

「嫌です、許しません」

「……え」

「私は、いつもあなたに負けて、言っているんです。いえ、言わされているんです。本当の気持ちなのに」

「夕鈴?」

「だから、あなたに強要される前に、負ける前に、言うんです!」

「……」

私は大きく息を吸って、ひときわ大きく吐いた。
陛下が驚いて私を見ている、何が始まるのかと目を大きく見開いて。

「私は、あなたが大好きです、心から。もうあなたが居ないと、心が途切れてしまいそうで。あなたと通じ合えた時に、これほど幸せだと感じたことは無かった」

いつも隔てた先に居るあなたの、近くに行けたことが嬉しくて。境界線を越えた喜びで、身が震えた。

「あなたが好きで、本当に好きで、だから…」

「……」

「ちゃんと“好き”だから。気持ちを確認するようなこと、言わないでください。いつもいつもだと、恥ずかしいんですから!」

「ゆうりん…」

陛下が立ち上がる。私のそばに寄ると、手を引いて抱き上げた。
広くて温かい胸に顔を埋めると、ゆっくりと落ち着いてくる。


「僕もちゃんと好き」

「……」

「ごめんね、夕鈴」

「いえ…もういいですよ」

許さないなんて言った直後から後悔している。こんなに温かい視線で見つめてくる彼を、傷つけたいわけではないのだ。

「私も、ごめんなさい」

「君の気持ちは分かっている。僕の気持ちも伝わっている。ただ…物足りないんだ。ずっと伝えたくて我慢できない」

「……」

「君は恥ずかしがって、なかなか答えてくれないけど、僕は毎日伝えたい。いつも君に伝えたい。ホント、僕ばっかり好き過ぎて、ズルいよ…」

「陛下…」

「ズルい」

ぎゅっと、彼の腕が私を抱きしめる。
熱い思いが身体を通して、心を包み込む。


「夕鈴、好きだよ」

「……」

「大好き」

「……」


陛下だってズルい。

こんなふうに、さらっていくのだから。


視界がぼやける。
いつの間にか涙が覆っていた。

悲しくて流していた涙。

今は嬉しくて流す喜びの涙。



「私だって大好き。ずっとずっと大好きですよ」



霞む視界の先が、光と共に晴れていく。


私の大好きな人は、とびきりの笑顔で笑っていた。








二次小説第90弾完
甘い、甘いよ。あまりにも甘過ぎて、途中、机をバンバン叩き何度も筆を止めましたが、なんとか完了です(笑)
夫婦後のふたりです。陛下がバカになっていますが、新婚なのでお許しください。原作の甘々感を全面的に出してみました!
お気に入りの箇所は最後の方。“好き”を伝えたくて我慢できない、あたりです。夕鈴、愛されてますね~。
結婚したら主導権は妻が握るかと思いきや、相変わらず陛下に振り回されっぱなしの夕鈴。特にラブの面で。告白を強要する陛下のドSっぷりが楽しくて仕方ないミケです。そろそろ大人なカップルを見たいところですが、もう少し先のお楽しみですね☆
こちらは陛下目線のバージョンも書きたいなぁ…と思ってます


17:51  |  未来(夫婦)編  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

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