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2010.08.08 (Sun)

雪降る頃に

「雪降る頃に」



記念すべき狼陛下の花嫁10話目です

夕鈴目線。少し長いですがお付き合いください。


ではどうぞ。










「今朝は冷えますね…」

暖炉に火を灯しながら、妃付きの女官が呟いた。

起きたばかりの眠い目をこすりながら窓枠から外を見ると、季節外れの粉雪が舞っていた。
先週からぐっと下がった気温は今日になっても留まることなく、この比較的温暖な白陽国にも雪をもたらしたようだ。


「まぁ…初雪ですわね」

寝台のそばに侍る女官のひとりが嬉しそうに言った。


「初雪…」

「外にお出になりますか?」

「えぇ…」

夜着の上にもう1枚羽織を纏って、夕鈴は外へ出る。
屋外へ身をさらした妃を守るようにして、女官たちが夕鈴の後方に控えていた。


「綺麗…」

「お寒くありせんか?」

大丈夫よ…言いかけた夕鈴を後ろから誰かが抱きしめた。
突然のことに驚きながらも、なんとなく予想は出来て、私は妃の笑顔を崩さずに振り返る。


「おはよう、夕鈴」

やはり、そこには狼陛下がいた。顔いっぱいに妃限定の甘い笑顔を浮かべて。


朝っぱらからこの人の演技は、刺激が強すぎて困ってしまう。


私は平静を保ちつつ挨拶した。激しく波打つ早鐘をなんとか聞かせないように。


私は内心のため息を悟られないように、さりげなく陛下の腕を解いた。
だが、すぐに体と体を合わせる形で腰を引き寄せられる。あまりにも自然な動きすぎて、私には手も足も出ない。当然抗う術もなく、落ち着いた先は狼陛下の逞しい腕の中だった。


う…一斉に注がれる女官たちの視線が気恥ずかしくて、私は陛下の腕の中小さくうつむいた。


「妃よ…顔が赤い。風邪をひいたのではあるまいな?」

陛下は私の頬に触れながら尋ねた。

私の顔が赤い理由など分かっているくせに、こういうところ陛下はズルいと思う。わざと質問しているのだから、本当にたちが悪い。


「大丈夫です、その…少し寒くて」

その腕を解いてくれたら顔の赤みも引きます!と声を大にして叫びたかったが、もちろんそんなことは出来ず、私は微妙な笑顔で受け答えした。


「初雪だからな…」

陛下は目配せして女官を下げると、舞い散る雪を見上げた。その視線を辿るように私も目を向ける。

空から幾度となく降る雪の輝きに目を奪われたようだ。
しばらくふたりは無言のまま、きらきらと輝く景色を眺めていた。


「今朝は随分と早いのですね?」

「昨夜は政務が忙しく君の部屋に来れなかったからね」

にこにこと子犬の表情に戻った陛下が答える。
切り替えの早さに目が回りそうだ。


「早起きしたおかげで、君と一緒に初雪が見れた」

なんでそんなに嬉しそうなんだろう…


一晩妃に会えなくて、それで早朝に雪が降っているにもかかわらず押しかける陛下…
はたから見たら私はとんでもなく愛された妃だ。

もちろん本物の妃であればだが。


狼陛下の唯一の寵妃という肩書きに、私は冷ややかな溜め息を漏らす。


「夕鈴、なんで溜め息なの?」

「いえ、いろいろと見習う点が多いなと」

「………今のは頬を赤らめる場面じゃないかな」

訝しい顔を浮かべた陛下が言い放った。どうやら私の予想外の反応に納得していないようだ。
その表情はなんだか拗ねているように見えて、私はクスリ…と笑う。


「今のは笑うところじゃないよ」

「陛下、冗談はやめてくださいよ」

含み笑いが抑えきれずに、私は声を上げて笑った。


「僕、冗談なんて言ってないよ」

まったく、相変わらずだね…陛下は小声で囁くと私の手を握り締めた。


「な、なんですか?」

体どころか手まで自由の効かなくなった自らに焦りながら、私は上擦った声を出した。


「だって夕鈴、ちっとも分かってないから、僕は愛しい妃に逢いたくて、早起きしたんだよ」

愛しい妃…聞き慣れているようで、正直まだ聞き慣れない…

私は今度こそ陛下の望みどおりに赤面すると、その真っ直ぐな視線から目を反らした。


「え、演技は結構です、そろそろ…お離しください」

私は、まだまだ未熟な自らに反省しつつ、陛下の胸を力強く押し返した。

とにかく…この不利な状況を解くことが先決。狼の腕の中では、自分のペースを作れない。


「夕鈴、寒いんでしょ?」

今は熱すぎて困ってる…なんてとても言えない。


「このまま僕の腕の中にいたほうが温かいよ」

耳元で囁かれて私は鳥肌を立てた。
こんな恋人まがいのセリフ、たとえ演技でも流せない。上手い冗談だと開き直れるほど、私には恋愛経験がない。

私は、全身を覆う鳥肌を抑えることに必死で、反撃の言葉さえ出なかった。


「それに…こうしていると妃演技する必要なく仲良し夫婦を見せつけられるしね」

一石二鳥だね…と子犬陛下がふわりと笑う。


見せ付ける相手がいないのに何が一石二鳥なんだろう、あれこれ御託を並べるのはこの人の得意技だ。


心の中で呟いた数々の悪態の言葉も陛下の笑顔の前では役立たず、無意味に口を閉じたり開けたりする様子に陛下がふきだした。


「夕鈴…面白い」

「な!何が面白いんですか」

陛下の一言にかっと頭に血が登る。


「だって…そんな赤い顔して、目をぐるぐる回して…小動物みたいだ」

私の顔を眺めてまた笑う。

小動物だと?
今度ばかりは怒りが収まらない。


「人の顔見て笑うなんて失礼です!」

私は思いっきり力を込めて陛下を突き飛ばした。ようやく解放された自らの体にほっと息を吐くと、白く空気が濁った。

怒りというのも、ときに便利になる。狼の囲いから逃れる馬鹿力を与えてくれるのだから。


「からかうなんて最低よ」

私はぼうぜんと立つ陛下に向かってビシッと指さした。


決まった…懲りない人には厳しい一言が効果的。私は、今までの経験上心得ていた。

このまま踵を返し、さっさと妃の部屋に戻ろうとしたその時、がっくりと頭を垂れて落ち込む陛下の表情が目に飛び込んだ。

途端に私の足は止まる。


本当に本当に悲しそうで寂しそうな様子の陛下。

あぁ…しまった。この顔を見てしまったら最後、見捨てるなんてこと私には出来ない。
子犬の陛下にとことん弱いのだから。


「僕、夕鈴に嫌われるようなことしたのかな?」

しゅん…本格的に落ち込む陛下。
耳とかしっぽとか見えて来た。幻想が見え出したら末期かもしれない。


「嫌ってるんじゃなくて、怒ってるんですよ」

「ごめん、夕鈴。僕謝るよ。だから…」

そんなうるうるした瞳で見つめないで欲しい。涙は女の武器なんだから乱用禁止よ。


でも、どんなに並べても私には到底言えない。

真っ直ぐでお人よし、情にほだされやすく、面倒見はとても良い、17年間形成してきた性格は今更変わることはないのだから。


「もー……怒ってないですよ」

「ほんと?」

こくりと頷いた私を見て、陛下の顔がぱぁっと輝く。さっきまでの暗く寂しい顔は見る影もなく、しっぽを振って近づいて来る様子に、私は深く深く嘆息した。


結局最後は許してしまう。情けないけど、これが私の性格。性格はなかなか変えられない。


「じゃあ仲直りだね」

腕を伸ばし私を抱きしめる陛下。



この人、全然懲りてないわ。


いつもいつも…この人に囁く言葉に、見せる態度に振り回されるばかり。



「ズルい人…」


夕鈴がそっと呟いた言葉は、粉雪と共に空気に溶けて消えていった。








二次小説第10弾完了

記念すべきアップということで、ラブラブ度をかなり高めにしたかったのですが、
ミケの力不足で中途半端になってしまいました。反省。



01:14  |  真冬編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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