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2010.07.25 (Sun)

狼と眠り姫Ⅰ

「狼と眠り姫」



陛下目線でちょい甘め。
長いのでⅠとⅡに分けました。休憩しながらお読みください。


ではどうぞ。






「お妃様がお倒れに…」

僕はひやりと体が凍りつくのを感じた。

そして一瞬心臓が止まるような感覚に襲われた。

僕の唯一の妃の変事を大急ぎで報告に来た侍女たちの言葉を聞き終わらぬうちに、一目散に駆けていた。夕鈴のもとへ。




妃の部屋の御簾を上げた時には、早鐘を打った心音が体に染み渡っていた。体内の血が逆流したかのように激しく脈打っている。

「夕鈴!!!」

寝台を取り囲む侍医や侍女には目もくれず、夕鈴へと手を伸ばす。

僕の唯一の妃は、寝台の中央で目を閉じていた。穏やかな息遣いと胸が上下している様を見ていささか安心した僕は、夕鈴の頬に手のひらをあてた。肌の温かみが直に伝わりほっと息をつく。

「どうした!?」

この様は一体何だというのだ…


「眠り薬です」

「眠り薬、だと?」

聞きなれない単語に、自然に眉根がつり上がる。その表情に怯えたように侍医が頭を下げた。


「申し訳ありません、目を離したすきにお妃様が眠り薬を飲まれて…」

侍医は震える指先で傍らにあった空の薬ビンを取り出して、僕に見せるとまた平服した。
さっきまで液体で満たされていただろう小瓶はカラカラと乾いた音を奏でて床に落ちる。

「妃が自ら飲んだというのか?」

驚きの声を隠せない。
夕鈴が?侍医の指示もなしに勝手に薬を飲んだとは思えない。

僕の視線にますます体を小さく縮こませて、侍医はぽつりと言葉を吐いた。

「目の届くところに置いておいた私が悪いのです」

侍医の話によるとこうだ。昨日の昼頃から頭痛がすると訴えていた夕鈴に薬を処方した。そのとき、誤ってそば近くに置いていた眠り薬を夕鈴が飲んでしまったという。

「……妃は目覚めるんだな?」

「はい、飲んだ量が多いためしばらくは眠ったままですが…」

「いつ目覚める?」

「明日の朝には…おそらく」

侍医は所在なげに床に転がった空瓶を見つめた。


「申し訳ありませぬ。私の不注意で…お妃様に」

「もう良い」

僕は、なおも続けようとする侍医の言葉を一蹴した。

目覚めるなら良い。倒れたと聞いて心配したが、無事でよかった。


僕は無心に眠り続ける夕鈴の顔を眺めた。あどけない寝顔にいいしれぬ不安がよぎり胸が痛くなる。

僕は小さくため息をついて、寝台の横に並ぶ椅子に腰かけた。まるで浮力を失った風船のように、体中に沈むような重さを感じた。

「今後このようなことがないよう厳重に注意せよ、よいな」

「はは…」

狼のすごみに気圧された侍医や侍女たちが拝礼した。

下がるように…と呟いた僕の言葉に従い、従順な臣下たちは夕鈴の部屋を後にした。




僕は足元に転がる眠り薬の空瓶を手に取る。

まったく…毒薬ならばどうするんだ。無造作に夕鈴のそばに置くなどけしからん。
飲む量を間違えれば意識を永久に失わせるほど危険な薬なのだ。

僕は、僕が大切に思う存在が、危うい存在なのだと知る。これで2回目だ。
1回目は、夕鈴が窓の手すりから落ちそうになったとき。故意により壊れた手すりだったが、もし落ちていたら…と考えると不安で堪らなかった。


僕は、かりそめの妃の顔を見つめる。

白くつややかな肌と、桜色に染まる唇。僕が心から手放したくないと思ったのは夕鈴が初めてだ。
だから不安になる。臨時花嫁という不安定な関係にどうしようもなく不安になる。

いっそ本当の妃にしてしまえば、こんな不安を感じることもないのだが…。


何度も頭の中で巡らせていた思考はまだ彼女には伝えていない。

伝えた時が、この関係の終焉だと知っていたから。





Ⅱへつづく
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