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2010.09.07 (Tue)

愛し君へ

「愛し君へ」

片思い突っ走りの陛下目線で、短文です。


ではどうぞ。













「夕鈴」

僕は妃の名を呼び、みずみずしく濡れた花を手折って彼女に渡した。

受け取った夕鈴は、咲き乱れる花よりも美しく、柔らかく、暖かい微笑みを顔いっぱいに浮かべて僕を見つめる。


雨が上がったばかりの後宮の中庭。
政務の合間の休憩時間に、この季節多様な草花を愛でることが出来るこの中庭にふたり降り立って過ごしていた。


この王宮で夕鈴に出遭い、夕鈴を知り、夕鈴と過ごす時間を重ねるうちに、心から手放したくないと感じた彼女。

夕鈴のこぼれるような花の笑顔を見るたび思う。

この幸せな時間はいつまで続くのだろうかと。

あと何度、夕鈴の真っ直ぐな素直な心に触れることが許されるのだろうかと。



「雨上がりのお庭が一番綺麗ですね」

「うん」

僕は中庭を見渡す夕鈴の横顔を見つめた。
その視線を辿るかのように、ゆっくりと夕鈴の背後へと移動する。

もっと近づいたら、夕鈴の気持ちをすべて知ることが出来るだろうか。

今はただ、夕鈴と同じ目線で、同じように考え、同じように感じたい…そう願っていると知ったら、君は笑うだろうか。


「陛下?」

背後に立つ僕に、不思議そうに視線を送る夕鈴。

その上目遣いの君ごと、固く抱きしめたいと思わせてしまうのは、僕の腕の中閉じ込めてしまいたいと思わせてしまうのは、きっと君のせいだよ。

僕はクスリ…と笑った。


「なんですか?」

「いや、中庭に立つ君は本当に綺麗だな…と思って」

こんなこと言ったら、また君は赤い顔をして怒るんだろうな。
しかし…本心だから仕方がない。

案の定、頬を染めた夕鈴が口を尖らせて怒鳴る。


「やめてください!」

「はは」

僕は笑った。

僕の笑い声を聞きつけたのだろうか、中庭へ駆け寄る誰かの気配に気づき、僕は眉をしかめた。


僕は夕鈴の肩を抱き、大きな木立に隠れるようにして身を潜めた。


「陛下?」

急に肩を抱き寄せられたからか、夕鈴が戸惑うように声を掛ける。

今度は耳まで真っ赤に染めて身を堅くする夕鈴に、僕のからっぽの心がゆっくりと満たされていく。


「夕鈴。中庭の奥にもっと綺麗な花が咲いているかも」

「え、そうなんですか?」

興味津々顔で夕鈴が尋ねる。


「うん。だからこっちから周って行こう」

僕は夕鈴の手を握り閉めると駆け出した。
慌てて僕に続く彼女。


さっきの気配の元はおそらく李順。

休憩時間の終わりを告げに来たか、もしくは火急の案件を持って来たか、いずれにしても夕鈴との時間を邪魔するなんて無粋な真似はさせない。


「へ、陛下、早いですよ」

僕の速さに着いて来れない夕鈴の声を聞き、僕は彼女を抱き上げた。


「きゃっ」

「仕方ないから、抱いて行くよ」

「な…なんでそんなに急いで…」

スピードを上げた僕たちに、突風が吹きぬける。

夕鈴の質問は突風に飲み込まれ、僕の耳には届かない。


夕鈴を抱き上げながら、僕は広い中庭を駆ける。

雨露に覆われた芝生が、纏わり付くように着物の裾を濡らしたが僕は気にならなかった。


ただ、夕鈴との時間を誰にも邪魔されたくない一心で、僕は駆けた。













「一体、なんなんですか?」

息を整える暇もなく、夕鈴の怒声が響く。


「急に抱き上げて走るなんて…しかも」

周囲をきょろきょろと見渡す夕鈴。どうやら夕鈴の御眼鏡にかなう綺麗な花は無いようだ。


「どこに綺麗な花があるんですか?」

「あれ?おかしいなぁ…」

僕はころころと笑いながら、地面に腰掛けた。

全速力とはほど遠いし、たいした距離を走っていないが、それでも多少疲れた。


「あ~つっかれた」

「疲れるでしょう。なんで急に走るんですか?」

まったく、意味が分からない…ぶつぶつ文句を言う夕鈴の顔を超絶可愛いと思ってしまうなんて、やっぱり僕は重症かもしれない。


「ごめんね、なんだか邪魔されそうだったから」

「邪魔?誰か居たんですか?」

「たぶん李順」


「……じゃあ、おサボりですか?国王陛下」

「う~ん、そうなるかな」

僕の返答に夕鈴が笑った。

やっと機嫌を直してくれた彼女にほっと胸を撫で下ろす。たまにはうるさい側近も役に立つ。


「じゃあ、綺麗な花も作り話ですね」

「いや…」

しまった、ここのくだりの言い訳は考えていなかった。

ただ夕鈴と一緒に居たいがために、口から付いて出た言葉だったように思う。


「えっと、ごめんね」

僕は素直に謝ることにした。子犬たっぷりの表情で謝る僕に、夕鈴は笑顔を浮かべる。


「もういいですよ。それに…こんな綺麗な景色を見せてもらえたんですから…私は満足です」

夕鈴の言葉に僕ははっと顔を上げる。

見ると夕焼けに染まる茜色の空が、雨露に濡れた中庭をきらめかせていた。


キラキラと光る水滴と、朱色に発色するその景色に、しばらく言葉を失う。


嬉しそうにほころぶ夕鈴の横に立ち、まるで取り憑かれたかのように景色に見入る。



「綺麗ですね…」

そう呟く夕鈴の笑顔は、そこにある景色よりももっと美しく輝いていたから、僕の心は熱くなった。




夕鈴。

あと何度、僕は君の心に触れることが出来るのだろうか。

あと何度、僕は君の笑顔を見ることが出来るのだろうか。


期間限定の関係だと知っていながらも、願わずにはいられない。


僕の愛しい花嫁。どうかこの先も永久に共に。








二次小説第19弾完了です

片思い陛下の暴走です(笑)大好きです!本当に!
長文にしたらドロドロしそうだったので、短くまとめました

気配だけ登場☆李順さん。いつも陛下に振り回されているので可哀想ですね…(汗)






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