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2010.09.10 (Fri)

秘密の花園Ⅱ

Ⅰのつづきです。








ふと横を見れば、相変わらず頬杖をついて、私を観察する陛下の顔。

どうやら何か言うまで、観察をやめてくれないようだ。懲りない狼に先に折れるのはもちろん兎の方。

夕鈴は深く嘆息すると、陛下の視線を真正面から受けた。


「陛下、この際なので申し上げますけど…」

「何?」

「私は…あまりこういうのに慣れていないんです。触れられると心臓が止まりそうになるんです。人前ではともかく、二人きりのときは控えてください」

夕鈴の言葉に陛下は絶句する。
その張り詰めたような雰囲気は、夕鈴に明らかに何かまずいことを言ったのだと悟らせるには十分だった。


「すみません、私、何か…」

変なこと言いました?…夕鈴は尋ねる。
尋ねて不安になった。こんな陛下は初めて見るから。


「いや…何も…」

口元を押さえて陛下が言う。言葉足らずに口ごもるその様子は、夕鈴をますます不安にさせた。


「あの…陛下?私、何かおかしなことしましたか?」

夕鈴は再度尋ねる。
今更だけど、口の聞き方が失礼すぎたのだろうか。

本当に今更だけど。


「いや…大丈夫、夕鈴は悪くない」

「はぁ…」

夕鈴に変わり、今度は陛下が動揺していた。
大きく息を吸ったり吐いたりする姿はまるで、空気を求めて水面に顔を出す金魚のようで、夕鈴はおかしくて心の中で笑った。

初めて見る陛下の表情を見逃すまいと、夕鈴は身を乗り出して覗き込んだ。
途端、陛下が視線を避ける。まるで、見られては困るとでも言いたげに。


「陛下?」

夕鈴は身をかがめた。
いつも冷静沈着な陛下が困っている仕草が物珍しく、大きな瞳でまじまじと覗き込む。


「夕鈴…」

「はい」

「そんなに見るな」

陛下は顔を上げる。顔を上げた陛下はいつも通りの表情だった。

さっきまで見せていた動揺顔をすっかり隠してしまった陛下に、夕鈴は訝し気な視線を送る。


あぁ…残念。
夕鈴はそっと息を吐く。

もう少しあの珍しい表情を眺めていたかったのに。


「ちょっと様子が変だったので見てしまいましたが…」

もう元通りですね…夕鈴は物足りなさそうに呟いた。


「君のせいだよ」

「?私…何かしました?さっきも質問しましたが」

「君は…いや」

だからなんで言葉を濁すのよ。


「陛下…なんかまたからかってます?」

新手の意地悪かもしれない…夕鈴は尋ねながら嫌悪感まるだしの顔で陛下を見つめた。


「違うよ、僕は別にからかってない」

怪しい。焦り答える様子もますます怪しいわ。


「じゃあ何です?教えてください」

「え~っと、夕鈴、怒らないで聞いてくれる?」

何か私が怒るようなことを言うつもりの陛下に、夕鈴は深く考え込んだ。
思い当たる節がないのだから、考えても無駄なのだが。


「さっきの言葉だけど。ほら、慣れてないって言ってた」

「まったく慣れていませんよ。私は陛下とは違うんです。それ以上触れられると…」

心臓が破裂しそう…呟いて夕鈴は何かおかしい事に気づいた。


もしかして私は変なこと言ってる?

だって、私が話し出してすぐまた陛下が変な顔をするんだから、そう思っても不思議じゃない。


「それだよ」

陛下は短く溜め息をつくと、片手で顔を覆った。


「?」

「そんな可愛いこと言われたら…僕の心臓の方が破裂しそう…」

「え?」

陛下の言葉の意味を理解しようとしばし黙る夕鈴の手首を、ふいに力強く掴まれた。
バランスを崩した夕鈴は、そのまま陛下のひざの上倒れ込む。


「きゃっ!」

陛下のひざの上、そのまま押さえつけられて為す術もなく固まる夕鈴に、悠然と見下ろす陛下の顔はにやっと笑っていた。


「な、何するんですか!?」

「君はもう少し警戒すべきだね。さっきのような事、僕以外の男に言っちゃダメだよ」

「は?」

「じゃないと…食べられちゃうよ」

そう言った陛下は覆い被さるように夕鈴を抱きしめる。


「ちょっと!陛下…」

首筋をなぞる感触に、夕鈴は鳥肌を立てる。

どこ触ってんのよ!

耳元で感じる息遣い。肌に触れる陛下の体温。次第に夕鈴の体がゆっくりと力を無くす。

この状況に激しい危機感を感じる一方で、ぬるま湯の中にいるような心地良さを感じるのは一体なぜだろうか。


強張った体から力が抜けると、夕鈴はだらりと手を降ろした。

ただ…勢いを無くした獲物に、狼が舌なめずりして襲いかかる様を眺めているだけ。


「……」

「夕鈴」

へいか…心の中で呼んだ名前は、ゆっくりと空気に溶け込んでゆく。
後に残ったのは柔らかく漂う静寂だけ。


「夕鈴…」

「……」

「夕鈴、眠っちゃダメだよ」

「!?」

陛下の声で意識がはっきりとする。
起き上がった夕鈴を、陛下は苦笑しながら見つめていた。


「王様のひざの上で寝ようなんて…やっぱり夕鈴は面白いね」

にっこり、子犬陛下が笑う。


「誰のせいで…」

わなわなと震える肩、今にも涙がこぼれそうな瞳、陛下の目に映る夕鈴はかなり激怒していた。

怒声が響く一歩手前で、陛下は手を夕鈴の両耳にあてがった。

大きな手のひらで耳をふさがれると、外の雑音から一切遮られる。



「君があんまり可愛いことを言うから、言葉を失ってしまった…」

「?」

陛下の言葉はもちろん夕鈴には聞こえない。
遠慮がちに動く陛下の唇を読めるはずもなく、夕鈴はこの不可解な行動に謎の目を向けるだけであった。


「そんなこと言っちゃいけない。だって君のささいな隠し事ひとつ知りたいと思ってしまうほど、僕は君に溺れてるんだから…」

「何ですか?聞こえないですよ…」

夕鈴が言う。


「君の様子がちょっとおかしいだけで、気が激しく動転してしまい何も手につかなくなるんだから…」

「……陛下?」

離してください…陛下の手の甲に指先で触れる。
指同士が触れ合うと、まるで電流が血液中に流れたかのように、熱く体がしびれた。


「聞こえなくていいよ。今はね」

陛下は口元に微笑を浮かべると、手のひらを解いた。


「何ですか?急に…」

こういうことはしないでって言ったばかりなのに。

おかげで怒る機会を失ってしまった。

夕鈴は訝し気に陛下を見つめた。
その視線にちょっと肩をすぼめて答える子犬陛下に、夕鈴の臨戦態勢は簡単に崩される。


「さっき何て言ったんですか?」

「秘密」


人差し指をあてて、陛下が笑う。


「な…」

何ですか!夕鈴の憤慨を聞き終わらぬうちに、お仕事お仕事!っと鼻歌交じりに陛下が立ち上がる。


まだ話は終わっていない。勝手に話を終わらせようとする陛下に、夕鈴は進路を阻むように立ち塞がる。


「何て言ったか教えてください」

「僕の隠し事だよ」

「何ですか…それ」


「夕鈴の隠し事、教えてくれるまで僕も教えない」


人差し指を口に押し立て、子供のようにあどけない笑顔で呟く陛下。

夕鈴は、その笑顔にただ肩を落とすしかなかった。




やっぱりこの人は隠し事が上手ね。









「狼陛下の花嫁」二次小説第20弾完了
おめでとう、20話♪ここまで書けて嬉しいです。
これもひとえに皆様の暖かい拍手のおかげ。

今回のテーマはスイート&キュート☆ミケは可愛い夕鈴が大好きです

お付き合いありがとうございました。






01:12  |  陛下片思い編  |  TB(0)  |  CM(3)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

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 |  2010.12.26(日) 09:54 |  | 【編集】

いけーーーーっ!!
とかって陛下を応援してしまいました。
>やっぱりこの人は隠し事が上手ね。
って、いやいや、隠させてるのはあなたよ夕鈴!
いや~、この振り回されっぷり!!もーたまんないです!!
耳が弱い夕鈴って・・・もーおいしすぎる・・・。
ごちそうさまでした♪
深見 |  2011.08.19(金) 23:06 | URL | 【編集】

●コメントありがとうございます!

こんばんは、深見さま。
いや~応援ありがとうございます!ミケもいつも心の中で、陛下にエールを送ってますよ。

耳を塞いで告白するシーンが大好きです☆
絶対このシチュエーション使いたい!と思って盛り込んだのがこの作品ですね…。いろいろ盛りだくさんになちゃいましたが、要するに陛下は夕鈴に溺れてちゃってます!ってことが伝えたかったんです(笑)

ミケ |  2011.08.20(土) 00:04 | URL | 【編集】

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