08月≪ 2017年09月 ≫10月

123456789101112131415161718192021222324252627282930

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告  |  EDIT  |  Top↑

2010.10.09 (Sat)

夢のつづき

「夢のつづき」

久しぶりの陛下目線。
短文なので読みやすいかと思います。

ではどうぞ。













誰かが呼んでいる、私を。

一生懸命に手を振り愛らしくこぼれる笑顔に、私の口元にも自然と笑みが浮かんだ。

木漏れ日を受けて、キラキラと輝く姿。

眩しくて、眩しくて。目を反らしたいけれど、どこかもったいなくて…気がつけばずっと見つめていた。
決して忘れることのないように、逃がすことのないように、彼女の姿をまぶたの裏側に焼き付けるように。


次第に濃くなる光の渦の中、私の目頭は急激に痛くなる。

ピリピリと伝う痛みに、私は耐え切れず、ついに目を閉じた。

それが全ての間違い。

もう一度目を開けた時には、そこにあるはずの暖かな光はなく、居るはずの愛しい人もなく、ほの暗い闇の中ひとり。


私はひとり立っていた。



そこで目覚めた。




軽く眩暈のする頭を振り、私は寝台から這いずり出た。
乱れる呼吸に心音が激しく打ち鳴っている。

額からこめかみを伝うひやりとした汗をぬぐいながら、私は深く息を吐いた。

身体中を巡る空気を全て外へ押し出すと、不思議と心が落ち着いた。

正常音を奏でる自らの鼓動にいくぶん安堵しつつ、私は頭を上げた。


目を開けるとほの暗い闇の中。

夢のつづきを見ているようだ。


冷たい床の上、手をつく。
足元に絡まる上衣を脱ぎさると、私は肩膝をついて立ち上がった。


格子窓からのぞく白い月は、微睡むように淡く揺れている。

まだ明け切らぬ星空に盛り立てられて、はっきりとそこに存在感を纏っている何か。その何かにずっと支配され、不安感を生み出す私の心。


「……」

久方ぶりに見る夢に、私の心はいつもよりも震えていた。

まだ即位したばかりの頃、何度となく見続けた夢。

東で内乱が起こったとき、南で亡命した民の噂を聞いたとき、西の人家が焼け落ちたとき、北の悪魔を葬ったとき。

その時々でいつも見ていた夢。


私は溜め息をついた。
夜中の冷気が吐く息を白く染める。その軌道を目で追う私の瞳に、広い寝室の一角が写る。

私は気配を絶ち、歩みを進める。

同じように眠りながらも、私とは違う幸せな夢を見続けているだろう愛しい人の元へ。



寝息を立てて眠る彼女は、暗闇の中でも白い輝きを放っていた。
両の手で白磁の肌に触れると、私は閉じられたまぶたの上、ひとつ口付けを落とす。滑らかに吸い込まれる肌に、私の暗い心がゆっくりと正常を取り戻した。


「……ん」

目元の感触がこそばゆかったのか、彼女は寝返りをうった。

途端に肩からこぼれる上衣。
私はひとつ苦笑すると、彼女の肩に元通り掛けなおした。


無心で眠るあどけない姿に、愛おしさが込み上げる。

そばに居れば居るほどに、手放せなくなってしまった彼女。
これほどに私の心を奪い乱すのは、後にも先にもきっと君だけ。


私は彼女に手を伸ばす。
指先で頬に触れ、上下する胸元に手を重ねた。

どうして彼女はこれほど、清らかで美しいのだろうか。

毎日一緒に過ごす日々を重ねても、彼女へ向かう気持ちは色褪せることのない。
むしろ溢れ出す思いに、歯止めがかけられず困っている。

彼女が奏でるこの木漏れ日のように暖かい空気、いっそ私の身に深く取り込んでしまえば、君という存在を手にすることが出来るのだろうか…。


格子窓から覗く月は、まだ淡く揺れていた。


私は目を閉じた。もう一度あの暖かな光に包まれたくて。

夢に登場する愛しい彼女の姿が脳裏に浮かぶ。
近づけばふいに離れるその体。手を伸ばすと困ったように肩をすぼめるその仕草。ふわふわと、つかめそうでつかめない彼女。

だが、それも夢の世界だけでのこと。

真の世界では、きっと、必ず手にしたい。



「夕鈴」

私は愛しい彼女の名を呼んだ、私の唯一の花嫁の名を、丁寧にゆっくりと。
呼び声に反応したのか、彼女の体がかすかに動いた。

寝返りかな…そう思う私の耳に彼女のかすれた声が届く。


「………そんなところで何してるの?」

「!?」

しまった、起こすつもりはなかったが起こしてしまったのか。
私は慌てて彼女と目線を合わせた。まつげの先が小さく揺れている。


「そこは寒いでしょう。いらっしゃい、青慎…」

青慎?

衣擦れの音が静かな部屋に響く。
彼女は片手を上げて、私を手招きしていた。着物の袂から折れそうなほど細い手首が見え隠れしている。


「どうした…の?青慎」

「……」

まさか。

私を弟と勘違いしているのか?

じゃなければ、彼女がこんな行為に及ぶとは考えられない。


寝ぼける彼女の姿に、笑いが込み上がる。
私は、盛大に噴出しそうな口元を堅く押さえつけた、笑い声を上げないように。

なぜかって、それは思いがけず舞い降りた機会を棒に振るようなこと、狼陛下と呼ばれる私がするわけがないから。


私は、静かに頷くと手招きする彼女の細い手首を掴んだ。

そのまま彼女の導きで寝台に潜り込む。

寝台に横たわる私の髪を優しく撫でる彼女。まるで、幼い子供をあやすかのような柔らかな仕草に、私の心は徐々に満たされていく。

彼女のそば近く漂うこのぬくもりに触れるだけで、こんなにも安心してしまうのはなぜだろうか。


気が付くと、私を纏っていた暗闇は暖かな光に変わっていた。

木漏れ日のように暖かく、どこまでも清らかな光に。














迎えた翌朝。
ふとんから顔を出し視線を送る彼女の顔は、真っ赤だった。


「な、なななななんで……」

「あ、夕鈴、おはよう」

私は起き上がって彼女にあいさつした。ごく普通に、まるで当たり前にそこに居たかのように。


「な、なんで陛下がここにいるんですか!」

「なんでって…」

私は首を傾げる。彼女の質問に対して、さも不思議そうに。


「夕鈴、覚えてないの?昨夜のこと…」

私は困惑顔を浮かべて、焦る彼女をまじまじと見つめた。
実際まったく困ってないけれど、予想外の反応を示してくれる彼女の表情をいつまでも見ていたいから、わざと困ったふりをした。


「昨夜って…な、何があったんですか?」

「夕鈴…覚えてないんだ?」

肩を落とす私の姿に、慌てて彼女が寝台の上、身を乗り出す。


「何も覚えてません…私、一体なにを…」

しましたか…心配そうに尋ねる彼女に、私は柔らかく微笑んだ。


「僕が寒いからって、一緒に寝ようって言ってくれたんだ」

「え、えぇーーー!そんな…」

その反応は予想どおりだけど、ちょっと傷つく。
まぁ、君の初々しいところも含め、すべてが愛おしくて堪らないから仕方ないな。

私はほっと息を吐く。


「ありがとう、夕鈴」

私は彼女の肩にそっと上衣を掛けた。彼女が与えてくれたぬくもり、少しでも返せるだろうか。


「夢のつづき、君と一緒に見れた」

動揺しっぱなしの彼女。どうやら私の言葉は届いていないようだ。

少し寂しいけど、今はそれ以上に幸せだからいいかな。


格子窓から覗いているのは、今は太陽だ。


「今日の朝食、何だろうね」

「そ、そんなことより…陛下!」

急に真剣な眼差しを寄越す彼女に、私は驚いて見つめ返した。

やっぱり、怒ってるかな?


「なに?」

「私、その……寝言、言ってませんでしたか?っというか、寝相大丈夫でしたか?」

まるで熟れた果実のように、赤ら顔の彼女が尋ねる。


そんな真面目な顔で、何を言い出すかと思えば…。


「………ぷ」

私は耐えきれずに笑った、腹を抱えて。
昨夜から抑えていた笑いが波のように押し寄せる。

夕鈴、やっぱり君は面白すぎるよ。


「笑い事じゃありません!」

「ご、ごめ……」

でも、面白い。

「陛下!」


「大丈夫。実に心地よかったよ」

口元に笑みを浮かべ、私は甘く微笑んだ。





面白くて、可愛らしい夕鈴。

もどかしいような、じれったいような…それでいていつまでも見守り続けたいような気持ちになるのは、きっと彼女があまりにも純粋で無垢だから。

淡い輝きを放つ原石の心。美しく磨いて彩るのは、この先もずっと私であり続けたい。









二次小説25弾完

サブタイトルは「寝ぼける夕鈴」です。
夕鈴が寝ぼけてるのをいいことに、ちゃっかり一緒に寝てる陛下(笑)ズルいですね。

弟、名前だけ登場です!
氾紅珠も青慎も、名前だけ登場の人多いですね。今後必ず登場させたいと思います。

本編でも弟への愛情ぶりが描かれていましたが、いつかその愛情が陛下に向かうことを祈っています


00:44  |  陛下片思い編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://mike3aoi.blog134.fc2.com/tb.php/40-f6f47789
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | HOME | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。