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2010.10.27 (Wed)

刹那の恋

「刹那の恋」

陛下目線。
お決まりな展開ですが、笑って読んでください。
長いですが、中途半端になりそうだったので分けていません。

ではどうぞ。
















祝いの言葉と賛辞がつぎつぎと飛び交う大広間。
今宵、ここ白陽国王宮の一角にある大広間では珍しく宴が執り行われていた。

玉座に腰掛けた僕は、居並ぶ高級官吏と大臣たちの面々に溜め息を吐きつつ、手にした杯をぐいと飲み干した。

久方ぶりの王主催の祝宴。
参列した者の話の種は尽きることなく延々と語っていたようだが、そろそろ宴も終わるだろう。

僕は空になった酒杯を卓に置くと、隣に鎮座していた夕鈴に視線を送った。

夕鈴は慣れない雰囲気に戸惑いながらも談笑の輪に自然と溶け込んでいた。

最初宴へ出席させると聞いたときはいい顔しなかったが…この様子ならば心配なさそうだ。

少し頬を高揚させて臣下と楽しくおしゃべりする夕鈴を見て、僕はほっと息をついた。


「陛下…おかわりなさいますか?」

どうやら僕の視線に気づいたようだ。

夕鈴はそっと口を開くと僕を見つめた。

「いいや、今宵はよく飲んだ」

僕は妃にだけ魅せる甘い表情で気遣いの上手い夕鈴に笑いかけた。

「君こそいいのか?まだ料理はたんまり残っているぞ」

「私は…もうお腹いっぱいですよ」

控えめに答える夕鈴の姿に私は笑みを浮かべる。

時々、まだ妃演技に慣れずに戸惑う愛らしいその姿に、いつも心奪われてしまう。

妃仕事をがんばる夕鈴をそばに居ていつまでも見守りたいと思う反面、もっともっと困らせてしまいたい、僕に助けを求めて欲しいと思ってしまう。

自らの矛盾した考えに嫌気が刺すが、なかなか直りそうないので仕方ないかな。

僕は夕鈴の肩を抱いた。

公の場でのみ許される行為に物足りなさを感じるが、この関係性を打破しないことにはいつまでも変わらない。

だが、僕はまだその手段を講じる術を模索中だ。

こればかりは僕の気持ちだけでなく彼女の気持ちも必要だから。

だからまだ…しばらくは仮の妃でも良いので僕のそばで愛らしく初々しい姿を見せて欲しい。


「お妃さま。これは我が家で作りました銘酒でございます。どうぞご賞味くださいませ」

臣下のひとりが拝礼しつつ、僕たちの前に進み出た。

手を伸ばそうか迷っている様子の夕鈴が、僕へちらりと視線を向けた。


「では、妃の前に私がいただこう」

臣下を信用していないわけではないが、用心に越したことはない。毒に慣れたこの体、多少抵抗力があることは自負していた。

僕は臣下からの杯を受け取ると一口飲んだ。甘い香りが口内に広がる。


「いかがでございましょう。果実の汁をふんだんに使って作った銘酒にございますので女性に好まれております。お妃さまもどうぞ」

「夕鈴。酒は大丈夫なのか?」

僕は尋ねてふと思う。そういえば彼女が酒を飲んだ姿を見たことはないと。夕鈴のことだから、酔っ払って暴れまくったら…それこそ僕の期待通りだけど、そんなことを期待していると知ったら激怒するだろうな。

僕は心の中で笑いながら、隣の夕鈴を眺めた。


「まったく平気ですよ。飲んでもなんともありません」

「ふうん」

なんだ、つまらない。僕は少々肩を落として、自らの杯を夕鈴へと渡した。

いただきます…小さく呟いて夕鈴は器に口をつけた。


「とっても美味しいです。ありがとう」

夕鈴は上品な笑顔で臣下に会釈した。
お妃演技も随分と板についてきたね…僕はこそっと耳打ちすると、顔を赤らめる夕鈴に笑いかけた。












宴が終わり、今夜の寝室である妃の部屋に戻ったときはすでに深夜だった。
いつもの眠る刻よりもずっと遅い夜に自然と欠伸が出る。

口数の少なくなった隣の夕鈴を見ると、少し充血した瞳をこすっていた。


「夕鈴、ご苦労様。今日は遅くまで大変だったね」

僕はいつもの定位置である長椅子に手をつきながら言う。

受けた夕鈴は赤い瞳で僕を見て一言、熱い…と答えた。

熱い?


「このお部屋暑くないですか?」

「そう?」

夕鈴の言葉で初めて僕は外気を肌で図る。夕鈴に言われるまで気にもとめないほど、僕にはどこまでも適温だった。


「熱い…」

夕鈴はもう一度呟くと羽織を一枚脱いだ。

窓でも開けようかな…なんて考えていた矢先、腰紐を解こうとする夕鈴の姿が目に飛び込んで来て、僕は思わず目を疑う。


「夕鈴…」

まさか夜着まで脱ごうというのか?

僕に呼ばれて振り返った夕鈴の瞳を覗き込むと、至って正常だった。
いつもと変わらぬ表情でこちらを眺めている。

それでも紐を解こうとする手を止めない夕鈴を僕は慌てて制した。


「ちょっと、何してるの?」

もしかして…寝る前から寝ぼけているのか。まさかね。

僕は笑い飛ばして、夕鈴が解きかけた腰紐に手を伸ばして堅く締め直した。

宴の華やかな余韻が夕鈴を酔わせたのかもしれない…。
我に返った夕鈴はきっと赤い顔で僕に謝罪するに違いない。

僕は期待を込めて視線を送ったが、予想に反して夕鈴の顔は真っ白であった。

あれ?


「……」

夕鈴は真っ直ぐ僕を見つめていた。

あまりに綺麗な瞳で見つめて来るので不覚にも僕はドキッとした。

彼女が魅せる天然の色香、慣れたと思っていたがそう簡単にはいかないようだ。


「夕鈴?」

「陛下、もう寝ましょう」

夕鈴は腰に置かれた僕の手を取った。

そういえば…僕の手はまだ夕鈴の腰紐に添えられていた。

もう少し触れていたかったが仕方ない、僕はいつも通りの展開に心の中嘆きつつ夕鈴から離れようとした。

だがすぐに、また僕は目を疑う。

見ると夕鈴の手は僕の手を握り締めたまま離そうとはしなかった。


「……」

いつもと違い大胆な行為に及ぶ夕鈴。思わず不規則に刻む鼓動に僕は勘違いしそうになる。


「夕鈴…どうしたの?」

夕鈴はゆっくりとまばたきをひとつすると、握り締められたままの手ごと僕を引っ張った。

一体、どこへ連れて行こうというのか。

向かう先は長椅子ではなく、間違いなく妃の寝台。

急に迎えた展開に僕の思考は戸惑う。

寝台の前まで来ると、夕鈴はなんの躊躇もなくするりとふとんに潜り込んだ。

魅力的な衣擦れの音が耳に流れ、僕は思わず手を伸ばしそうになるが必死に自制心を呼び起こす。


落ち着け。勘違いしてはいけない。


「寝ないんですか?」

ごく普通に尋ねる夕鈴。

「僕、青慎じゃないよ?」

また…弟と勘違いしているのでは?僕は疑いを込めて聞き返す。

前回の事件は、少なからず僕にはショックだった。

弟と間違える夕鈴の寝姿が脳裏に浮かび、僕は眉をしかめた。


「何おっしゃってるんですか…?陛下」

夕鈴が笑う。

陛下。
間違いなくそう呼んだ。

僕はほっと胸を撫で下ろすと同時に、夕鈴の澄んだ瞳を覗き込む。

見定めを間違っては痛い目に遭うのは必然。

僕は必死に夕鈴の言葉を読み取ろうと頭をフル回転させた。


「陛下…」

夕鈴の白く細い手が伸ばされる。

目の前にあるしっとりとした白い手に、僕の思考は中断。他でもない、僕に伸ばされた夕鈴の手を見たら、突っ立ったままでは居られなかった。

気づくと、寝台の上、夕鈴の体を抱き締めていた。

夕鈴は僕の行為に全く抵抗しなかった。

おかしい…と思いつつも、腕の中に大人しく佇む柔らかい体が手放せない。予想以上に甘美な夕鈴の体を前にして、僕の頭は正常な判断が出来ず濁っていた。

定まらない意識のまま、夕鈴の行為の意味を熟考する。

夕食に何か混ぜものでも入っていたのかもしれない。僕も同じものを食べたからそれは有り得ない。じゃあ毒でも盛られたか…いや、それこそ有り得ない。
宴の間、夕鈴から片時も目を離すことはなかったから。

じゃあ…。

僕は夕鈴を見つめた。

少し赤い目…まるで本物の兎のようだと思った。

僕はくすりと笑うと、夕鈴のまぶたに遠慮がちに口付ける。夕鈴は嫌がることなく、こそばそうに身を縮めただけ。


「……」

起きている夕鈴に口付けたのは初めてかもしれない。

いつも眠っている君にだけ近付くことが許されていたから。

僕は夕鈴の名を呼ぶと、長い髪を一房取り、薄い唇に当てた。

何度となく繰り返した行為だが、今夜が一番甘い。想像を絶する甘さだ。

頭がくらくらしてきた。部屋中の熱という熱が僕の体に舞い降りてきたようだ。

真っ直ぐ向けられた夕鈴の視線が余計に僕の心を掻き立てる。


「夕鈴…」

僕は夕鈴の体に体重をかけて、覆い被さるように横たえた。


少し早い。
でも夕鈴が望むなら…僕は止まらない。

僕はもうずっと以前から、頑なに君だけを求め、君だけを望んでいる。


「夕鈴…君が好きだ」

ずっと言いたかった言葉。伝えたかった思い。

本当に僕は…君を愛している。

君も同じ気持ちなの?


「熱いです…陛下」

「僕も熱い」

君のせいだ。
だけど…なんて心地よい熱さ。

寝返りを打とうとしている夕鈴の肩に手を置いて、僕は彼女と間合いを詰めた。
近付くごとに、夕鈴の清らかな香りに満たされていく。

ゆっくりと…合わせたいのは唇と唇。

重ねた唇の後に、その滑らかな肌を余すことなく手に入れたい。

誰が何と言おうと、僕の妃は夕鈴…君だけ。




「眠い…」

夕鈴の声が小さく響く。

「?」


もうまもなく、唇が合わせられる直前に夕鈴の肩ががくりと落ちた。

まるで沈むように見事に落ちていく夕鈴。

僕が慌てて声を掛けたときには、すでに深い眠りの世界に旅立っていた。



「……」

沈黙が流れる。

僕はしばらく放心状態のまま、規則正しく上下する夕鈴の胸と浅い息遣いに耳を傾けていた。













僕は朝から不機嫌だった。
結局昨夜は一睡もしていない。高まりきった熱の中、夕鈴のそばで呑気に眠れるほど僕は大人でなかった。

僕は政務机に突っ伏した状態で、目の前に置かれた空の酒器に忌々しく視線を送る。
これは、昨夜の夕鈴の行為の原因。正常な頭で導き出した答。

僕は溜め息をついて、酒器を指先ではじく。
途端に倒れた酒器が音を立てて政務机を転がった。

その音に混じって、政務室の扉を開ける重たい響きが聞こえた。

次に誰かの気配。

気配の元を知ると、僕は慌てて顔を上げた。

昨夜の夕鈴の行為は、たとえ酔いがもたらした幻だとしても、僕にとって衝撃の出来事。
現れた夕鈴に自然と鼓動が波打つ。


夕鈴はその細い腕に抱えきれないほどの書巻を持って入室していた。

政務室へ来るのがいつもより遅かったのは、書庫へ寄っていたからか…目の前にうずたかく積まれた書巻に、夕鈴は僕に気づかないようだった。

僕は気配を完全に断って、夕鈴の背後より近付いた。


「おはよう、夕鈴」

「陛下!」

夕鈴は驚いて声を上げると、慌てて書巻を抱え直した。

「びっくりした。いらっしゃるなら声を掛けてくださいよ」

口を尖らせて抗議する夕鈴にじとり…と訝し気に視線を送る。


「何か…?」

僕は夕鈴の質問には答えずに、書巻の束を受け取ると小机に並べた。


「昨夜は眠れた?」

「はい。ぐっすり…」

夕鈴の笑顔が浮かぶ。僕は愛らしい顔を複雑に見つめていた。


「夕鈴。あのさ…」

僕は確認する、昨日の事実を。


「昨夜のこと覚えてる?」

「宴ですか?」

「宴の後のこと」

僕の問い掛けに夕鈴の身が固まる。

え?もしかして覚えてくれてるかも。

僕は期待を込めて夕鈴に詰め寄った。


「君の部屋でのこと。もちろん…覚えてるよね?」

僕は忘れていない。
君の肌、君の瞳、君の髪、君の唇。


「それが…」

夕鈴が眉間にしわを寄せる。途端に心配顔で僕を見つめてきた。


「私…宴の途中から、全く記憶がなくて」

記憶がない。
夕鈴の言葉に僕の期待は音を立てて崩れた。

あぁ、やっぱり。

僕は政務机の上に転がる酒器を眺めた。


「夕鈴ってお酒飲んでもなんともないって言ってたよね?」

「はい。言いましたよ」

「なんともないことなかったよ」

「えぇ!そうなんですか?私、何か…」

ご迷惑をかけましたか…夕鈴が小さく呟く。

見つめた瞳は昨夜のように赤くはなかった。

酔いが醒めた兎は、いつもの兎に戻っていた。

お酒を飲むと記憶を無くすから、お酒を飲んでもなんともないなんて…無意識でもずるい言い訳だ。
記憶が無くなる原因がお酒にあるってこと、少しは自覚して欲しい。


「お酒飲むの禁止ね」

「ど、どうして?私やっぱり何か失礼なことをしたんですか?」

失礼と言えば失礼だけど、良い夢を見たと思えば気にならないかな。いや、やっぱり気にするか。


「とにかく禁止」

僕は戸惑う夕鈴の腰を引き寄せた。


「ちょっ…」

夕鈴の頬が赤く染まる。

戻ってきたいつもの夕鈴の姿に、僕はほっと息を吐いた。

やっぱりいつもの君じゃないと。


「惜しいことしたね、夕鈴」

「?」

「僕の一世一代の告白も…」

記憶にないか…僕は苦笑した。

昨夜の余韻、どうやら思った以上に引きずりそうだ。

夕鈴はぽかんと口を開けて、疑問の表情を向けている。


「君は見ていて飽きないね」

「私は見世物じゃないですよ!」

赤ら顔の夕鈴が答える。


「当たり前だ」

僕はそっと頬に触れる。

途端ビクッと肩をすぼめる夕鈴を、僕は口端に笑みを浮かべて眺めた。




「君は私の妃だ」











二次小説第28弾完了です

酔っ払い夕鈴登場。
無意識夕鈴の天然お色気は陛下には酷ですね。また可哀相な展開ですが、ミケの小説ではこれが続きますまぁ間接キスしちゃってるのでこれで我慢してください。

起きている夕鈴に口づけたのは初めてではなく2回目です!陛下、動揺しすぎてカウントを誤っています(笑)

前回の「愛するふたり」の離宮ネタ。24日発売の雑誌最新号のストーリーも離宮ネタでびっくりしました!本編の離宮は人がたくさんいましたが。
こんな偶然あるんですね…ミケにとっては嬉しい偶然ですわ☆


09:00  |  陛下片思い編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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