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2011.01.17 (Mon)

こんな雪の降る日に

「こんな雪の降る日に」

各地で大雪が降る今日のような日にぴったりかも。
夕鈴目線で短文です。

ではどうぞ。














初めてその光景を見たとき、言葉も出ないほどに驚いた。
全面真っ白の銀世界。太陽は覗いていないのにやたらと眩しくて、直視できずに夕鈴は目を閉じた。


「なんて美しい…」

惚れ惚れと感嘆の声を漏らす夕鈴に、陛下がそっと上衣を肩にかけた。


「よく積もったな」

見上げた陛下の表情もどことなく嬉しそうで、夕鈴はふっと息を吐いた。白く濁る視界の先には見慣れた中庭はなくて、ふわふわの白い雪に覆われて凹凸の無くなった世界が広がっていた。


「雪かきをさせないとね」

「はい。でも、ちょっともったいないですね」

夕鈴は肩を落としてしょんぼり呟く。陛下はそんな夕鈴の肩を抱いて、確かに…と返事した。

「じゃあ遊ぶ?」

「?」

陛下の子どものような顔に、夕鈴の瞳が輝く。


「遊ぶって…」

夕鈴の知る大雪が積もった日の朝の遊びといえばもちろん…夕鈴は不敵に微笑みをたたえる陛下のそばで、うずうずと高鳴る鼓動の音色に耳を傾けていた。



















「夕鈴。ねぇ、ねぇ、これどう?」

「わー陛下!雪だるまですね。すごく上手」

夕鈴は体半分を雪に埋めながら、陛下の力作を見上げた。嬉しそうなその顔は赤く高揚していて、特に鼻先はより赤く染まっていた。
陛下は夢中に遊ぶ夕鈴の腕を支えながら、雪の中から救出する。


「そんなに雪の中に埋まっていたら、風邪ひいちゃうよ」

「大丈夫ですよ!それにこんな日だったら風邪をひいても構いません」

そう言いながら、新雪に足を踏み出している。ぎゅっぎゅっと雪の音が広い中庭に響いた。


「夕鈴、それはダメ。君が風邪ひいちゃったら僕が悲しい」

「陛下が悲しむことないですよ」

笑いながら振り返って、夕鈴ははっとする。
今日は朝から子犬な彼が、一段と肩を落として悲しんでいたからだ。陛下は子犬と子猫と子ぎつねとを足し合わせても足りないほど…この世のすべての小さいものよりも、一層小さく身を縮めて夕鈴のそばに立っていた。
途端に夕鈴は陛下に駆け寄り、彼をなだめる。この顔は夕鈴の最も苦手とする顔だ。


「陛下。そんなに悲しい顔しないでください。大丈夫ですよ。風邪をひくようなバカな真似はしませんから」

「本当に?」

「はい」

「じゃあ雪に埋まるのは禁止。もう少しこちらへおいで」

陛下は夕鈴の手を取り、あまり雪の積もっていない場所へと誘導する。
少し残念そうに表情を曇らす夕鈴に、陛下は笑顔を向けた。


「夕鈴。今度は君が何か作ってよ」

「はい!じゃあ陛下に負けないぐらい大きな雪だるまを…ではなくて」

陛下の表情を確認しながら、夕鈴は熟考する。少ない雪で作れるもの…作れるもの。


「雪うさぎは?」

「あ!いいですね。じゃあさっそく」

夕鈴は腰をかがめて雪を集める。陛下も一緒に雪を集めた。
そうして出来上がった雪うさぎ。陛下は、出来上がった雪うさぎを見て、可愛いね…と呟いた。


「夕鈴とそっくりだ」

「え?そうでしょうか?」

じっくり眺めたが、似ているとは思われない。それでも満足そうに微笑む傍らの陛下を見ていると、夕鈴は温かい気持ちになれた。
外は寒いが心は温かい。陛下のそばに居るだけで、不思議と温かく柔らかな気持ちになれる。なぜなのだろうか…夕鈴がこの理由に気づくのは、まだまだ先。

しばらく黙していた夕鈴の手を、陛下がそっと掴んだ。


「夕鈴、手がとっても冷たい」

「私、もともと冷たいんですよ」

「心が温かい証拠だね」

陛下ははぁっと息を吹きかける。暖かく白い空気が指先から痺れを解き放ってくれた。
目の前が真っ白に染まる。一面の白。まるで色を失ったかのような世界。
手の平が、指先がじわじわと温かみを取り戻す。


「陛下、ありがとうござ…」

白い空気が解けたときに初めて見た陛下の表情は、ぬくもりに満ち溢れていた。吸い込まれそうな柔らかな瞳に、夕鈴は目線を反らせない。あまりにもじっくりと見つめてくる陛下の様子に、夕鈴の顔が熱く火照るのを感じた。


「夕鈴、赤い顔してる。とっても寒いんだね」

「……はい…そうです」

嘘をついた。なぜだかは分からないけど、私の顔が赤い理由を悟られたくなかったからか。


やっと腕を解いた陛下は、それでももう片方の手は離さずに、ふたりが散々遊んだ中庭へと視線を移した。
夕鈴もつられて陛下の視線を追う。


「夕鈴が作った雪うさぎ、やっぱり可愛いね」

「ありがとうございます」

ふふふ…と笑いながら夕鈴が答えた。丸い丸い雪うさぎ。不器用な夕鈴が作ったため、少し離れたところから見ると、大きな団子か何かに見える。


「おいしそうだなぁ…」

ふいに陛下が呟いた言葉に、夕鈴は大きく吹き出す。ちょうど私もそう思っていた。


「丸い団子のように見えませんか?」

「うん、そうだね。やっぱり夕鈴に似てる」

「え?」

私が団子に似てるってこと?
失礼しちゃうわ…反論するために口を尖らせて陛下を見上げると、陛下もこちらを見ていた。口角を上げて細めた目をこちらに向けている。なんとなく嫌な予感。


「私の妃は、おいしそうだからな」

「!?」

急に獣の気配を漂わせた陛下が、愉快気に呟いた。
夕鈴は、ぞくり…と背筋を強張らせつつ後ずさる。

まるで狩られる直前のうさぎのように恐々と見上げる夕鈴に対して、陛下が苦笑を浮かべた。


「なっ何がおかしいんですか!」

「やっぱり夕鈴に似てる。ふわふわで可愛くて、それにおいしそうだもの」

白い雪を溶かすほど赤い顔で、金魚のように口をぱくぱく声にならない声を発している夕鈴の傍らで、お腹を抱えて陛下が笑う。


「夕鈴、面白い…」

「失礼です!私は団子じゃありません」

「ちが…そうじゃなくて……」

陛下の途切れ途切れに発した言葉は、夕鈴の怒鳴り声にかき消されてしまった。


「どーせ私は団子に似てますよ」

「違うよ、夕鈴。僕は君が雪うさぎに似てるって言ったんだ」

「どっちも同じです!」

「団子と雪うさぎ…全然似てないよ」

「おいしそうって言ったでしょう!」

「それは…」

陛下は口ごもる。
なんと表現して良いか分からずに沈黙する陛下の横を、さっと夕鈴が駆けた。


「夕鈴!?どこ行くの」

「陛下なんて知りません!」


雪の音が中庭に鳴り響く。
ぎゅっぎゅっという音に混じって、陛下が妃を呼ぶ声がいつまでも響いていた。












二次小説第40弾完
はぁ…もう40話目ですか。早いものです。
大雪に喜ぶ子どもっぽい可愛らしいふたりを書いてみました
陛下の最後の方の発言は、可愛らしさの欠片もありませんでしたが。おいしそうって…素直すぎです!

今朝ミケの住む町では雪が積もっていました。今年の冬は本当に寒いですね。
雑誌の次号発売を待ち続けて、この寒さをしのいでおります(笑)次号は、雪が溶けるほどに甘い展開を期待します☆


13:58  |  真冬編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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