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2011.03.19 (Sat)

幸せの定義

幸せの定義

夕鈴目線で長め。
甘々夫婦ライフ継続中です☆

ではどうぞ。













彼方から漂う新緑の香り。
鼻孔にふいに覆う香りに夕鈴ははたと足を止めた。途端に吹きすさぶ風が夕鈴の着物の袂を翻す。


「……」

王宮庭園に設けられた四阿の中。仲睦まじい様子のふたりを囲むのは妃付の侍女たち。

柔らかい風が頬を撫でて、こそばくて目を閉じた。目を開けたとき、真っ先に瞳に映ったのはどこまでも優しく笑う陛下の顔。途端に跳ねる心臓に動揺した夕鈴は、慌てて視線を反らした。


「妃よ…そんなに顔を背けるな」

「あっすみません」

頬に触れられる感触に、夕鈴は弾かれたように目線を合わせた。

まるで本物の恋人にでも笑いかけるかのような優しい瞳に、夕鈴の鼓動は増すばかり。心の動揺を悟られないように、夕鈴は真っ直ぐ陛下と向き合った。本物の妃のように。


「君に顔を背けられると傷ついてしまう。いつまでもその愛らしい顔を私だけに見せて欲しい」

「……」

さすがにオーバーすぎる。震える鼓動が体中を巡り、頭がぼうっとしてきた。
それでも大勢の侍女に見られている今では、尻尾を巻いて逃げ出すわけにはいかない。


「私は…いつでも陛下を見ています」

夕鈴は真っ赤な顔で答えた。その様子に陛下がクスリと笑ったような気がした…侍女に気づかれないように。


「そうか」

陛下は実に満足気に微笑みをたたえると、夕鈴の肩を抱いた。


「これほど愛らしい妃は他には居ないな…」

「そ、そんな」

「夕鈴、君がそばに居るだけで私の心は癒やされる。これからもずっとそばに…」

陛下はそう言い放つと夕鈴に顔を近付ける。
夕鈴はなんとか退かないようにして、ぎゅっと目を閉じた。閉じる前に、風になびく自らの長い髪が視界に入ったが、その先にある陛下の顔はほとんど見ることは出来なかった。


「夕鈴…」

耳元に感じる声音に心が締め付けられた。
陛下の気配が一歩一歩と近付くたびに、肌が刺激を感じたかのようにピリピリと痛む。

刺激が頂点に達したときに、生暖かい感触が頬に触れた。
いつかも感じた同じ感触。頬へ落とされた口づけはどこまでも柔らかくて、優しくて…暖かい。

意を決して目を開けた夕鈴が見たのは、陛下の澄んだ瞳だった。
吸い込まれそうに深く黒い瞳。このままきっと体ごと心ごと陛下に取り込まれてしまうのではないか…そう思う夕鈴に陛下がふっと笑いかける。


「いつまでもそう堅くなるな…いい加減傷付いてしまう」

「……」

堅くなるなというのが無理だ。


「君を後宮に迎えてもう随分経つというのに、君はいまだに初々しいまま。それが心地よい反面少し物足りない…」

陛下は浅く息を吐くと、夕鈴の手に指を絡めた。
いつもより過度な必要以上の演技。夕鈴は震える鼓動に耐えて必死で演じきろうと意志を起こした。

恥ずかしさに耐えるのよ、夕鈴!


「だが…それが君の魅力か…」

陛下はひとりでに納得すると夕鈴の手の甲に口付けた。


「!?」

一度目は予想出来たが…二度目はさすがに動揺した。夕鈴は火照る体とくらみそうな頭に気合いを入れて、狼陛下の甘い演技に耐える。


「陛下…もう」

多数の視線がいたたまれない。そろそろ限界だ。


「陛下」

上目遣いで懇願の視線を向けたが、陛下はなぜか無言で眺めているだけだった。探るような視線を受け止めている余裕もなく、夕鈴は陛下の腕を堅く掴んで引っ張る。


「陛下…部屋に」

「あぁ、続きは部屋だ」




















居間にはすっかり演技を解いたリラックスモードの子犬陛下が、ぶつぶつとわがままを漏らしていた。


「夕鈴、もう少し耐えてくれないと」

「限界です」

夕鈴は肩をがっくり落とすと、陛下へお茶を差し出した。
椅子に腰掛けるとき、不満気に顔を曇らす陛下の表情が目に入ったがきっぱりと無視する。


「まぁ…最初の頃に比べたら随分と妃らしいけどね。でも、やっぱり物足りないなぁ」

う~ん、物足りないなぁ…天を仰いで、陛下が呟く。


「私は…もうお腹いっぱいですよ」

夕鈴の言い草に陛下が声を上げて笑った。


「笑い事じゃないですよ…さっきの演技は本当に大げさです!」

夕鈴は声を荒げて抗議する。
狼陛下の花嫁になってから幾度となく訴えて来た抗議。無駄だと分かっていながらも、口酸っぱく言い続けないと…これからも糖度は増すばかりだ。

夕鈴は目の前で無垢に笑う陛下を眺めた。
さっきまでの陛下と別人の彼を見て、はぁ…と深くため息をついた。


「夕鈴…疲れちゃった?」

「いえ。ただ気が張るというか…」

夕鈴の発言に陛下が口をつぐむ。


「すみません。これも仕事なんですが…」

どうしても仕事と演技を線引き出来ない。
最近は特にそう…陛下の笑顔を見ていると、心がぎゅっと締め付けられて演技どころではなくなってしまう。


「大丈夫。君は君らしく居ればいいよ」

「でも…」

「君らしい君が好きなんだから」

「……」

“好き”
そんな簡単に言われてしまうと返す言葉を失ってしまう。夕鈴は袂にしまいこんでいた扇を取り出すと、顔を覆った。夕鈴が扇を取り出したのをきっかけに、陛下が話題を変える。


「ところで夕鈴、明日の会議のことなんだけど…」

「はい」

明日は、古参の大臣も含め現役の大臣すべてが集まる全体会議の日。寵妃である夕鈴もある目的のため会議へ出席することになっていた。


「明日は…すべて李順の采配に任せておけばいいから。夕鈴も、あまり気負いしないようにね」

「大丈夫です。必ずや完璧な寵妃を演じきりますから」

「その調子」

拳を握りしめて意気込む夕鈴の姿に、陛下が子犬の笑顔で笑った。















頭が重い…それに、首も肩も全身が重くて堪らない。軽くしびれる体に耐えて、夕鈴は引きつるような笑顔を浮かべた。


「夕鈴殿!?なんですかその顔は!妃たるものもっと上品な笑顔を見せなさい」

李順の叱責が室内に響き、夕鈴は肩をすくめた。


「でも…この衣装本当に重くて」

「当たり前です。総額いくらだと思っているんですか?今日の日のために妃の装飾品の中から選りすぐりのものをお選びしたんですよ」

「はぁ…」

声高らかに発言する李順を尻目に、夕鈴はずっしりと重い衣装に耐えきれず、長椅子に腰を下ろした。
途端に頭の髪飾りが豪華な音色を奏でた。


「夕鈴殿!座るときに“よいしょ”とか言わない!」

「……はい」

まるで空気のように小さく囁いただけなのに…どうして聞こえてしまうのか。鬼の耳は地獄耳、本当によく聞こえるわ。夕鈴は背筋を正して李順に向き合う。


「李順さん。今日の首尾なんですが…」

「シナリオは完璧です。それにしても、あなたも飾ればそれなりに見目麗しくなるんですね…」

「……」

どういう意味だ、こら!夕鈴は叫び出したい気持ちにかられたが、鬼上司の失言をぐっとこらえる。
今日は失敗は許されない。大臣がすべて集まる大会議だ。こんな前段階で感情を高ぶらせていては、先が思いやられる。
夕鈴は浅く深呼吸を繰り返すと、李順に向き直る。


「着物の裾を踏んづけて転ばないように…」

「それは大丈夫ですよ」

「怪しいものですね。頭を下げたときに髪飾りが落ちるような失敗をしないでくださいよ」

「……大丈夫です!」

夕鈴は陰険めがねの執拗な攻撃に耐えつつ、今日のシナリオを復唱した。


「まず陛下が入室…会議が佳境に入ったときに妃が入室。それから…」

「入室のタイミングは私が言います。くれぐれもよろしくお願いしますよ」

「分かってますよ」

夕鈴はやれやれと肩を落とした。それほど私は頼りにならないのか…失礼しちゃうわ。
これも日頃の行いというものかしら…?いやいやそんなはずないわ。夕鈴は自らの考えを首を振って否定した。















華美に飾り立てられた広間には、大勢の人々が鎮座していた。
広間に足を踏み入れたときに、一斉に注がれる視線と人々の囁き声が耳をついて、夕鈴ははたと立ち止まる。
夕鈴は萎縮する背筋をきちんと伸ばすと、前を見据えた。そして、作り笑顔を絶やさず歩む。陛下の元へと。


「お待たせをして申し訳ありません」

浅く会釈して(頭の髪飾りが落ちないように)、夕鈴は微笑む。陛下は無言で手を差し出すと、夕鈴の手を引いた。


「待ち焦がれていた」

狼の甘い笑顔に腰を抜かしそうになるが、ここはぐっと我慢。夕鈴は上品な仕草で陛下の隣に腰掛けた。陛下の合図で宴が再開すると、人々の視線が夕鈴から離れほっと息をついた。


「綺麗だ。髪も衣装もよく似合っているな」

不敵な笑みをたたえて狼が囁く。


「あ…ありがとうございます」

夕鈴は顔を隠しながら小さく頷いた。


「本当は独占したかったが…残念だ」

「!?」

またそんなこと言って動揺させようとするんだから…意地悪な狼を睨んでやりたいが、今は無理。悔しさで顔を崩さないように、夕鈴は笑った。


「私以外の人の目に触れさすなど…もったいない」

「そのような…」

もーいい加減にして!
顔が火照るのを感じて、夕鈴は陛下に気づかれないように深呼吸した。新鮮な空気を体内に取り込んだら、少しは気分がましになることを願って。
落ち着け、落ち着け。あれは演技、演技、演技…。ぶつぶつとおまじないのように心の中で繰り返し唱えていたため、陛下の呼びかけに気づくことはなかった。


「夕鈴」

「はっはい!」

しまった。夕鈴は心配そうに覗き込む陛下を見つめる。


「一体何に気を取られていたのか…私の妃は」

長い髪にするりと指をからめて、陛下が微笑む。妙に艶っぽい微笑みに、夕鈴の鼓動はいつもより跳ねた。
震える胸に手を当てて、夕鈴は愛想笑いでごまかす。


「私は君から目が反らせないというのに…」

「……っつ」

「その柔らかな視線も、細く絡みつくような髪も、初々しい愛らしい仕草もすべて、私だけのもの。誰の目にも触れさせたくないものだ」

陛下はまるで独り言のように呟くと、傍らで仏頂面を浮かべる側近にちらりと視線を送った。その視線には、早く宴を終えろといわんばかりの意味合いが込められているようで、夕鈴は目をみはる。
こんな大勢の重鎮の中で、そんなあからさまな態度をとってもいいのだろうか。
心配して見つめた側近は、案の定渋顔でめがねの奥から陛下を睨み付けていた。

陛下はふんっと鼻を鳴らすと、諦めた様子で夕鈴に向き直る。


「早くふたりきりになりたいものだ」

「……」

大勢の目にさらされている場面で、この狼の演技は最上級に発揮される。そのことを知っていた夕鈴であったが、予想以上の甘さにドキドキが止まらない。
夕鈴はなんとか必死に耐えつつ、刻が過ぎるのをひたすらに待った。















「ごくろ~さま。夕鈴」

妃の部屋へ入室して、侍女を下げて開口一番。すっかりと狼の鎧を脱ぎ去った陛下が、にこにこと微笑を浮かべる。夕鈴は、達人なみの切り替えの早さにぽかんと口を開けた。


「これで僕たち夫婦仲の良さは広く国中に知れ渡るね」

にこにこにこ…すこぶる機嫌良く陛下が言う。夕鈴は、その笑顔にがっくりと肩を落として脱力した。それでも目的が達成されたことに、ほっと胸を撫で下ろすと、満足気な陛下と対峙した。


「良かったですね」

「あれ?疲れてるの?」

「少し…宴は気が張るので疲れちゃいます」

夕鈴はお茶を差し出しながら、浅く息を吐いた。


「あの…私着替えて参ります。この格好ではくつろげませんし」

「えーーーダメだよ絶対。良く似合ってるもの」

「はぁ…でも、借り物ですし、汚すともったいない」

「脱ぐ方がもったいないよ。もう少し着て居てよ、僕、じっくり見てないし」

陛下は言った矢先からじっくり夕鈴を観察し出した。纏わり付くような視線に、夕鈴の顔が朱く染まる。


「そんなに見ないでくださいよ」

「そんなに見てないから見てるんだよ。夕鈴…本当に似合ってるもの」

「……っ」

なんていたたまれない視線。夕鈴は執拗な視線を気にせず、自分の湯飲みにお茶をつぎ足した。
平常心、平常心。この方はおそらく、いや絶対に楽しんでるはず。

夕鈴は慣れた様子で軽く無視する。


「ふうん。少しは慣れたんだ」

「はい?どういう意味ですか?」

「ううん、なんでも」

この確信犯め…夕鈴は慌てて取り繕う陛下を軽く睨んだ。


「今度は…君から私に触れて欲しいものだ」

「!?」

狼の手が伸びて来て、夕鈴は慌てて身をひいた。それでも迫り来る手。夕鈴は陛下の手を叩いて振り落とす。
バチン…手を叩く音が小さく響いたと同時に、陛下が顔をしかめた。


「痛いよ、夕鈴」

「知りません!」

「ゆ~りん…」

しゅんと耳を落として落ち込む陛下。タイミングよく出して来た子犬陛下に、夕鈴の心はすぐに傾く。
そんな…なんでそんなに悲しそうなのよ…。つくづくこの表情に弱い夕鈴は、我慢出来ずに手を差し伸べた。


「そ、そんな顔なさらないでください。手を叩いてすみませんでした」

「ううん。全然怒ってないよ」

陛下はにっこり微笑むと、夕鈴の差しのばされた手を優しくとった。


「我が妃は優しい。それに…甘いな」

甘い?夕鈴が疑問の声を出す前に、陛下の唇が手の甲にかすめるように触れた。あまりの早技ぶりに、夕鈴は手を引くことも出来なかった。

後に残ったのは軽い軽い痺れ。行き場の失ったそれは、ふわふわと漂った後夕鈴の肌に浸透した。
火が灯ったように熱く火照る手。自分のものではない感覚に、夕鈴は身震いする。


「やはり…想像を絶する甘さだ」

にやり…手の甲に余韻を残し、陛下が口端を上げて笑う。


「くせになりそうだ。今度はその愛らしい唇に口づけても構わないか?」

「!?」

狼陛下の意地悪顔が瞳に映る。


「……な…ななな」

夕鈴の真っ赤な顔がさらに赤く染まる。
ぎゅっと音がしそうなくらい固く握りしめた拳。夕鈴の拳が小刻みに震え出して、陛下はしまった…と息を飲んだ。


「人前でもないのに、演技しないでって…あれほど……」

「お、落ち着いて夕鈴…」

怒りのオーラを放つ夕鈴をなだめようと慌てて口を開いたが、時すでに遅し。


「バカ!!!」

バチン!…二度目に手を叩いた音は、居間全体にとどまらず、広く回廊の端まで響いた。








後日。

狼陛下の右手にはくっきりと小さな手の平の痕が、しばらく残っていた。










二次小説第48弾完了です
バカップルです、すみません。
今回はセクハラ陛下満載でしたね(笑)夕鈴の数多い反撃にもかかわらず、狼の攻めは超激しいですね~。でも、夕鈴の前でこんなに狼と子犬を頻繁に切り替えていたら、いつかバレますよね(笑)バレた後に家出されて、迎えに行って、謝って許してもらって、また同じくセクハラで怒らせて…なんだかそんな繰り返しのような気がします(汗)
甘~いふたりは書いていて楽しいです。人前での仲良し演技は、ミケの趣味で最近多くなっています☆でも、読者の方も大好きだと信じて、今後もぜひ書き続けたいです
最後までお付き合いありがとうございました♪

00:55  |  日常編  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

引っ越しして、まだネットがつながってないので、仕事中に会社のパソコンで見ました!
仕事中にも関わらずニヤニヤしながら何回も読み返しました!やっぱりあま~い陛下は最高ですね♪!!!
あち |  2011.03.19(土) 21:27 | URL | 【編集】

●コメントありがとうございます!

あちさま。こんにちは。遅くまでお仕事お疲れ様です!セクハラ陛下気に入っていただけたみたいで嬉しいです☆ミケもあまりの甘さにドキドキでした~(笑)ネットが繋がるまで会社でコソッと覗いてくださいませ♪
ミケ |  2011.03.20(日) 09:19 | URL | 【編集】

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