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2010.07.28 (Wed)

笑顔の先にⅡ

Ⅰのつづきです。






「お妃さま」

「なあに?」

私は、語る夕鈴の背後から姿を出した。

夕鈴の視線を受けて顔の緩んだ官吏を睨みつける。途端に官吏の顔が強張った。
まるで蛇に睨まれた蛙状態。

本能的に後退りする様子に、私は薄ら笑いを浮かべた。



「?」

夕鈴は、一瞬で変貌した雰囲気と、一斉にかしずく官吏たちに戸惑いながら振り返った。


「陛下!」

突然現れた私に慌てて礼を取る姿も、可愛らしくて溜まらない。


「夕鈴…」

私は後方にいた官吏たちに鋭い視線を投げた。官吏たちはこれ以上ないほど体を小さくしてうずくまっていた。


「ここで何をしている?」

私は夕鈴の肩を抱き引き寄せた。いつもそうするように。


私の妃である事実を、十分に見せつけておかねばならぬ。そうそう気さくに話し掛けて良い相手ではないこと、分からせねば。

私は全身から怒りを染み出す。対照的に、夕鈴を抱く腕には最上級のいたわりを含んで。

ピリピリとした空気が冷気となって官吏たちを包むと、かしずく彼らはいっそう身を縮めた。



「申し訳ありません…お仕事の邪魔をいたしましたか?」

私の行為に身を堅くした夕鈴が、腕の中で小さく尋ねた。

「君の声が邪魔になることはない」

私はそっと笑いかけた。夕鈴がほっと息を吐く姿に愛しさが込み上げる。

「私に逢いに来たのか?」

私の一挙に素直に反応を示す夕鈴の頬に手をあてがう。夕鈴の頬は、表面の赤さ以上に熱かった。

久しぶりの感触に眉が緩む。


私は、夕鈴の見えない所で手を上げ官吏たちを下がらせた。


夕鈴の可愛らしい姿を、誰にも見せたくはない。


「陛下…」

夕鈴は急に退く官吏たちに疑問の目を向けながら私の名を呼んだ。


「突然すみません、私…陛下をお茶にお誘いしたくて…」

「うん」

私は瞬時に子犬の表情に切り替えると、夕鈴に笑顔を向けた。衣越しに、強張った体から力が抜けていくのを感じた。

まだ狼陛下に慣れないか…



「あの…そろそろお離しください」

あいかわらずつれない夕鈴のおかげで、意地悪心に火がついた。


「赤い顔をして、私を誘っているのか?」

夕鈴の長い髪に指を絡ませ私は尋ねた。

「は!?何を…」

必死に逃れようともがく夕鈴の肩をきつく抱いた。

「夕鈴、みんな見てるよ」

私の言葉にはっとしたように、じたばたするのをやめる夕鈴。根が真面目なところも、やはり気に入っている。


「誰も見ていないのでは?」

小さく呟いた夕鈴は、こそこそと辺りを見渡した。

「ここは政務室に近いから。今は誰もいなくてもいつ誰が来るか分からないからね、さっきの官吏達みたいに」

「さっきの方たちはもう下がりましたけど…」


人気の無くなった中庭には、私と夕鈴以外は誰も見当たらない。わざわざ妃との逢瀬を邪魔して、狼陛下の怒りを買う愚か者はいないだろう。
官吏たちと談笑していた場所を目で追う夕鈴に少しの苛立ちを感じた私は、夕鈴の頬を自らに向けさせた。


「ずいぶんと楽しそうに話してたよね?」

じと…私は戸惑う夕鈴を見つめた。その視線に数々の意味を込めて。


「えっと?そんなことないですけど…楽しいというかボロを出さないか心配で気が気じゃなかったです」

私の腕の中、視線を落として囁く夕鈴。

私の嫉妬は空回り。どうやら彼女は、嫉妬する猶予も与えてくれないらしい。私の気持ちを手っ取り早く伝える進路は閉ざされたようだ。

しかしこんなことでいちいちショックを受けている私ではない。

簡単に手に入りそうで手に入らない彼女に向かう気持ちが止められないことに、むしろ心地よさを感じているから。



ふわり

私は、夕鈴を抱き上げた。


「きゃっ」

突然のことに夕鈴は驚きの声を上げる。

「陛下…何を」

「このまま後宮まで戻ろう」

「ご、ご冗談を、心臓が持ちません!」

「一歩ずつ慣れなきゃね」

私はしたり顔で微笑む。断れないことを知っていて、彼女に無理強いするのだから、どこまで酷い男なのだろうと自分でも思うが仕方がない。気持ちが空回りした分、仮でも私の妃であるという境遇は多いに利用させてもらわねば。



「夕鈴、さっきの官吏たちともう話さないでね」

たとえ仕事でも、それが君に与えられた任務でも、その柔らかな微笑みを私以外の男に見せないで欲しい。


「え?何でですか?私やっぱりまずいことを…」

「なんとなく嫌だから」

「は?なぜ?」

その理由を私に聞くのか…鈍感すぎるにもほどがあるよ、夕鈴。君ららしいけど。


「さーなんでだろうね?」


君がその理由を知るのはもう少し先になるのか。それともずーっと先になるのか。
どんな時間を過ごしても、君と共有する毎日が私にとって幸せな毎日であることは間違いない。


君が隣で笑ってくれる日がいつまでも続くことを願いながら、私は甘く微笑んだ。







二次小説第5弾完了です

昔のブログより連れて来たので…ちょっと恥ずかしいです。

ミケの中の陛下はとっても嫉妬深いイメージ、しかも独占欲強そう。やっぱり狼陛下だから(笑)



22:47  |  陛下片思い編  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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